1200 ⇒ 1800ドル
2018年には、1オンス(16分の1ポンド、16 ドラムまたは28.349グラム)1200ドル台だった金が、現在は1800ドルまで上昇しています。ドル、円、ユーロなど主要通貨の信頼が不安されている中で、金に注目が集まっています。株式投資はその資金がビジネスに使われ、果実を生んで配当金という形で投資家に還元されます。
金は投資でなく投機?
一方で、金は果実を生まないので、ビジネスの役には立たず、投資ではなく、投機であるという見方もあります。
投機でなく避難?
しかし、主要通貨の各国中央銀行が通貨の量を大幅に増やし、金余りが加速する中では、自分の資金の一部を金に避難することも検討する必要があるかもしれません。例えて言うならば、株投資は海に出ていく漁船として引き続き資産運用の主役では有りますが、シケが続くときは、すべての漁船を海に出て行かせるのではなく、一部は安全な港に係留させておくという考えです。
銀行資産、変動国債、金の中で安全資産は?
安全な資産としては、銀行預金、個人向け変動国債も有りますが、お金がジャブジャブに余っている状態では、いつインフレになるか分かりませんから、銀行預金で安心できるというわけにはいきません。個人向け変動国債は、インフレの3分の2をカバーできるので、ある程度安全な資産です。ただし、残りの3分の1はカバーできませんから、個人向け変動国債も一つの選択肢であるように、リスクはあるものの、金投資も一つの選択肢かも知れません。しかし、金投資は株式投資に比べ、規模がはるかに小さく、また個人投資家も十分な知識を持っていません。そのため、金投資の専門家も、投資資金全額のうち10%以下に抑えた方が良いと考える人もいます。
10%の意味は分散?
10%しか投資しないのであれば、大した意味がないかも知れませんが、株式も幅広く分散投資している中で、その投資の一部として、金にも投資するという考え方も良いかも知れません。例えば、私はオーストラリアのETFに1.5%、新興国のETFに5%を投資していますが、これも分散投資の中の一部です。この程度の分散投資を積極的に肯定するつもりもありませんが、否定してしまうつもりもありません。あくまで、分散投資の中の一部という位置づけです。
金の投資は、日本の商品を買う方法と、アメリカの商品を買う方法がありますが、今日は、日本での金投資を東証マネ部の記事をもとに勉強しましょう。
プール4杯分
英語の「Gold」がサンスクリット語の「輝く」を語源としています。人類が掘り出して精製した金の総量(地上在庫)は2019年末時点で約19万トン。この量は長さ50mのオリンピックプールの約4杯分です。
最初の金貨は紀元前のトルコ
紀元前687年には現在トルコに位置するリュディアで初めての金の貨幣(エレクトラム貨)が鋳造され、大いに流通していました。
19世紀に確立した金本位制において、金は各国政府または中央銀行が発行する兌換紙幣の価値の源泉として保有されました。1978年に金本位制が廃止されたのちも、各国政府・中央銀行は準備資産として金の保有を続けています。
金価格の変動要因としては、以下のものがあげられます。
- 需要と供給のバランス
- 米ドルの価値
- 各国の経済動向
- 各国の金利の状況
- 原油等の資源価格
- 地政学リスク
- 多量に保有する政府・年金基金等の参入
世界における確認可能な金現物への投資(金地金、金貨、金ETF設定のための貯蔵)は、2018年は982トン、金額に換算すると400億ドル(約4兆4千億円)。
個人投資家が金に投資できる主なものとしては、①金貨・金地金、②純金積立、③投資信託、④金ETF、⑤金先物・CFDの5つです。それぞれの特徴やリスク等を以下のとおりです。
金投資方法の特徴とリスク
投資方法 | 販売会社 | 金現物の保有 | 盗難リスク | 業者の破綻リスク |
金貨・金地金 | 宝飾店、地金商、金属メーカーなど | 可能 | あり | 保管方法によってあり |
純金積立 | 地金商、金属メーカー、証券会社、商品先物業者など | 可能 | なし | 保管方法によってあり |
投資信託 | 証券会社、銀行 | 不可 | なし | なし |
金ETF | 証券会社 | 一部可能 | なし | なし |
金先物・CFD | 証券会社、商品先物業者 | 不可 | なし | なし |
① 金貨・金地金
●メリット: 金の現物を手元で保有できる
●デメリット: 盗難リスクあり、保管コストが掛かる、手数料が高め(少量だと特に割高)、売却益が一定額を超えると確定申告が必要
・金貨
最も手軽に金を所有する方法は金貨の購入だろう。宝飾店やデパートなどで購入できる。有名なものでは、オーストラリア・パース造幣局発行の「カンガルー金貨」、オーストリア造幣局発行の「ウィーン金貨ハーモニー」、カナダ王室造幣局発行の「メイプルリーフ金貨」などがある。
購入は1/10トロイオンス(約2万円)、1/4トロイオンス(約4.5万円)、1/2トロイオンス(約9.5万円)、1トロイオンス(約19万円)が一般的(1トロイオンス=約31.1035g、2020年6月末日現在)。
金貨は美しいデザインのものが多く、持っているだけで金投資の実感を味わうことができる。
・金地金
金地金は「インゴット」や「バー」ともいい、平らな板状の形をしている。
一般的に「金の延べ棒」と呼ばれるものがこれにあたる。表面には通常、金塊番号、販売元の商標、重量、素材、品位(ほとんどが純度99.99%(フォアナイン)の純金)、精錬分析者マークなどが記載される。
金地金は地金商や金属メーカー、商社などで購入が可能だ。購入できる地金のサイズは販売業者によって異なるが、最低は1gからで5g、10g、20g、50g、100g、200g、300g、500g、1kgなどとなっている。
1gあたりの手数料・税込の販売価格は約6500 円(2020年6月末日現在)。なお金地金の購入には消費税がかかるが、売却時には逆に消費税額を受け取ることができる。
金貨・金地金への投資では手元に金の現物を保有できるのがメリットだが、一方で大きなデメリットは盗難リスクだ。耐火金庫(小型金庫で3~10万円程度)を購入して自宅に保管したとしても、盗難リスク自体はなくならない。銀行などの貸金庫(年間手数料2~5万円程度)や、販売業者の保護預り(年間の保管手数料等で無料~3000円程度、金額は重量等によって異なる)を利用するのも手だが、追加のコストが発生する。
税金については、一般的な会社員などのケースでは、積み立てた純金を売却した場合の所得(譲渡益)は譲渡所得として課税され、その他の所得と合わせて所得税の総合課税対象となる。年末調整をしている会社員であっても、給与・退職所得以外の所得が一定額を超えると確定申告が必要となるので注意しよう。
<明日に続く>