資産運用業高度化プログレス まとめ

5日間にわたって、資産運用業高度化プログレスを確認しましたが、役所風の書き方で理解しにくいところも多かったと思います。会社の仕事では、「要は何なんだ」とか「A41枚にまとめる」ということを要求されます。そこで、ポイントをいくつかのソースから引用したいと思います。

1.日経新聞:少額投信の乱立、金融庁「非効率」 進まぬ併合、統治も不足

日本のファンドは高コスト、運用成績劣る

日本の資産運用業の改革が遅れている。新型コロナウイルス禍で従来型の対面営業などの商慣行も転機を迎える。金融庁は小規模なファンドが乱立する高コストで非効率な国内市場の課題を指摘する報告書を公表した。米国に比べ総じて運用成績も劣る。投資信託の併合など商品力を高める抜本的な取り組みも求められる。

世界はパッシブ運用、ETF

世界では手数料が低い指数連動型のパッシブ運用や上場投資信託(ETF)に資金が流入している。手数料収入の減った資産運用会社は規模を追求して統合に動く。2月には米大手のフランクリン・リソーシズが同業のレッグ・メイソンを買収した。運用資産は約1.5兆ドル(約160兆円)にのぼる。

20位以内に日本は0社

金融庁によると、資産残高の上位は米欧勢が占め、日本は20位以内に1社もない。国内勢は市場平均を上回る成果を目指すアクティブ型も、株価指数などに連動するパッシブ型もいずれも運用成績が振るわない。運用効率を示すシャープレシオと呼ぶ指標の過去5年の平均値は米国に劣る。

日本は小規模投信乱立

運用成績は規模が大きいほど優れる傾向が明らかだ。日本は小規模な投信が乱立し、1本あたり平均残高は米国の1割に満たない。新規ファンドの設定本数も多い。金融庁幹部は「日本は販売会社の力が強く、新規商品を相次ぎ投入してきた」と指摘する。販売手数料を狙った短期売買が横行し、少額投信が大量に生まれてきた経緯がある。

採算割多い

国内のファンド約5500本のうち8割は運営コストを賄いきれていない。特に10億円未満のファンドはすべて採算割れに陥っている。商品数が多いと様々なコストがかさむ問題がある。

投信の併合

今回の報告書は投信の併合や持続可能な商品づくりを求めている。投信の併合は2007年の信託法改正で可能になっている。実際には手続きの負担などから進んでこなかった。ようやくこの5月、野村アセットマネジメントが実施したのが公募投信では初めてだ。

金融庁が個別投信調査

金融庁は個別投信の運用成績の調査範囲も拡大する方針だ。運用会社ごとに全ファンドを平均した成績に加え、個別ファンドで国内株式、新興国債券といった分野別の成績を客観的に比べられるようにする。

私募投信や一任運用も調査

機関投資家を対象にした私募投信や一任運用の状況も調べる。海外勢が日本市場に参入しやすい環境も整える。海外の資産運用業者の登録手続きを円滑にするため、参入障壁を洗い出す。

カバナンスも課題

資産運用会社の企業統治(ガバナンス)改革も課題だ。米国はファンドや運用会社の取締役会に過半数の独立取締役を求めている。英国も運用会社に取締役会で2人かつ25%以上の独立取締役の設置を要請している。

金融庁は顧客利益重視

日本は親会社出身の人材が経営陣の多くを占めるケースが目立つ。金融庁は「運用ビジネスの経験や理解が必ずしも十分でない」と問題視し、顧客利益を重視した体制の構築を促す。

2.産経新聞:コロナ渦で「指数連動」投資が人気 運用益や手数料に魅力

パッシブ運用が人気

日経平均株価などの指数に連動させる「パッシブ運用」に人気が集まっている。低廉なコストや相対的に高い運用成績が魅力だ。新型コロナウイルスの感染拡大で不透明感の強い現在の局面においては、リスクの下限を市場平均程度に抑えたこの手法にはなおのこと注目が集まる。ただ、パッシブ運用への偏重は市場をゆがませ、価格調整機能を阻害する恐れがある。

パッシブ運用は4倍以上に増加

金融庁が6月発表した「資産運用業高度化プログレスリポート2020」によると、公募型の株式投信の残高は、日銀保有分を除くパッシブ運用分で2019年時点で約27兆円と11年(6兆円)の4倍以上に増加した。一方、指標以上のリターンを狙うアクティブ運用分も19年には約50兆円とし、11年(40兆円)時点から増加はしているが伸び率の鈍さは明らかだ。

累積リターンはパッシブ型22.6%、アクティブ型は9.7%

パッシブ運用の最大の魅力はパフォーマンスの高さだ。リポートによると、国内で組成された公募投信の昨年末時点からの過去5年平均の累積リターンは、パッシブ型の投信が22.6%だったのに対してアクティブ型は9.7%に過ぎない。先進国株、新興国株など全分野の株式投信でパッシブ運用に軍配が上がる。

パッシブは低コスト

銘柄選定が必要なアクティブ運用と比べてコストが安く、購入・保有にかかる手数料も手ごろな点も理由の一つだ。値動きもシンプルで、少額投資非課税制度(NISA)などを利用した気軽な投資先としても選ばれやすい。日本銀行のETF(上場投資信託)の大量購入の恩恵を余すことなく享受できるのも、パッシブ運用の有利な点だ。

アクティブ投信は手数料目当て

リポートではアクティブ投信について、同一金融グループ内での専売商品が多いことや、手数料目当ての新規組成への傾倒がみられるとし、結果として運用効率の悪い小型投信が乱立したと指摘。「平均的なパフォーマンスをみると、コストに見合うだけの水準を確保できていないと考えられ、顧客支持が十分に得られていない」とした。

高い利益を出すアクティブも高リターンを継続するのは困難

もちろんアクティブ型の中には、パッシブ型より高い利益を叩き出すものも少なくない。ただ、ファンドマネージャーらの人件費や銘柄の入れ替えといったコストを差し引いた上でなお市場平均を超えるリターンを継続的に確保し続けることは難しい。

パッシブ運用ではガバナンスにマイナス

だが、パッシブ運用への偏重には市場をゆがめるリスクもある。パッシブ運用は指標組み入れ銘柄を無批判で購入するため、組み込まれているがために不必要に株価が維持される“ゾンビ銘柄”も出てくる。ガバナンスに問題がある企業でも、パッシブ運用の場合はその銘柄だけを売却することはできない。

成長余地の大きい銘柄に資金が行かない

逆に、指標に組み込まれていない成長余地の大きい銘柄には資金が行き渡らなくなる恐れもある。大げさに言えば「市場が本来持っている価格発見機能、すなわち“神の見えざる手”を阻害しかねない」(大手生保運用担当者)のだ。

パッシブ運用に資金が集まるのは必然

とはいえ、過去のパフォーマンスを踏まえると、パッシブ運用に資金が集まることは必然とも思える。今後もその優位は揺るがないのだろうか。大和総研政策調査部の鈴木裕(ゆたか)主任研究員は必ずしもそうではないとする。

パッシブ運用に資金が集中すれば、チャンスも増える

パッシブ運用では、どうしても指標から漏れた小型優良株に目が行きにくくなる。アクティブ運用がその間隙を縫うことができれば大きなリターンを得られる。「パッシブ運用に資金が集中すれば、それだけチャンスも増える」(鈴木氏)という。

アクティブ運用の絶好機かも?

鈴木氏によると、今後もパッシブ運用にお金が集まる傾向は続く可能性が高い。新型コロナの感染拡大で不透明な相場環境ではなおのことだ。「安く買って高く売る」のが投資の基本だが、パッシブ運用が隆盛な今こそ、アクティブ運用の絶好機かもしれない。(経済本部 林修太郎)

3.モーニングスター:国内公募投信のパフォーマンスを抜本的に向上するための方法、金融庁が運用業高度化レポートを発表

金融庁は6月19日、「資産運用業高度化プログレスレポート2020」を公表し、内外の運用会社のヒアリングの結果を踏まえ運用会社の運用力強化のための指針についてまとめた。関係機関をはじめ、広く一般からレポートに対する意見を求め、運用会社や運用商品に対する行政の指針を固める考えだ。レポートから読み取れるのは、「日本の投信の利用が進まないのは、日本の運用会社が巨大な販売力を持った販社の系列にあり、公平な競争が行われていないためだ。系列の大手運用会社はガバナンスの高度化を進めることが必要だ。独立系、および、外資系の参入を促して、より良い運用商品が市場に入ってきやすい環境を整える」という内容だ。国内の運用会社は、このレポートをどのように受け止めるだろうか?

日本籍公募投信のパフォーマンス

分類 5年シャープレシオ平均 5年累積リターン平均((%) エクスペンスレシオ平均(%) ファンド数 期初純資産額(億円)
全ファンド(パッシブ) 0.40 22.60 0.44 450 66,366
全ファンド(アクティブ) 0.20 9.70 1.49 3 555,260
国内株式(パッシブ) 0.50 40.00 0.49 131 20,670
国内株式(アクティブ) 0.40 30.90 1.57 526 60,686
先進国株式(パッシブ) 0.47 37.00 0.38 63 7,747
先進国株式(アクティブ) 0.23 12.00 1.79 415 76,969
新興国株式(パッシブ) 0.24 15.20 0.54 22 751
新興国株式(アクティブ) 0.20 12.80 1.96 220 24,766
グローバル株式(パッシブ) 0.44 32.60 0.26 2 47
グローバル株式(アクティブ) 0.17 8.20 1.78 34 12,014

5年シャープレシオ平均がパッシブ0.40に対しアクティブ0.20

レポートが指摘したのは、国内公募投信のアクティブファンドのパフォーマンスの悪さだ。国内公募投信全体の純資産残高は、パッシブ6.64兆円に対しアクティブは55.53兆円と、圧倒的にアクティブのシェアが高い。投信全体のパフォーマンスの印象はアクティブファンドの優劣を反映しやすいといえるが、5年シャープレシオ平均がパッシブ0.40に対しアクティブ0.20。5年累積リターン平均は、パッシブ22.60%に対しアクティブは9.70%と、アクティブの成績が目に見えて悪い。これは、米国のミューチュアルファンド(投信)のパフォーマンスが、5年シャープレシオ平均でパッシブ0.71に対しアクティブ0.67。5年累積リターン平均がパッシブ53.13%に対しアクティブが40.63%という実績と比較しても、日本の公募アクティブ投信のパフォーマンスの悪さが目立つ。

アクティブのパフォーマンスはパッシブに勝てない

米国においては、「アクティブのパフォーマンスはパッシブに勝てない」という実績によって、伝統的なアクティブ運用から資産が流出し、パッシブファンドやETFに大幅に資金が流入している。この結果、米国のミューチュアルファンドの残高では、アクティブファンドの残高とパッシブファンド(ETF含む)の残高が変わらない規模になってきている。そして、パッシブファンドではファンド規模が大きくなるとともに運用報酬の引下げが行われ、この流れでアクティブファンドの運用報酬も低下。結果的に経営が苦しくなった運用会社の大規模合併が繰り返されている。近年の合併は、18年10月のインベスコ(純資産残高9370億ドル)とオッペンハイマー(同2460億ドル)、20年2月のフランクリン・リソーシズ(同6490億ドル)とレッグメイソン(同7270億ドル)という、合併によって1兆ドル(107兆円)を超える資産規模の運用会社が生まれている。

米国で「残高が1兆ドル以下では生き残れない」

このような米国における変化と比較すると、日本の変化は穏やかに見える。日本においても、パッシブ運用への資金流入は続いているが、米国ほど極端ではない。また、運用会社の合従連衡は続いているが、基本的にはグループ内運用会社の統合であり、誕生した新会社の運用資産残高も50~70兆円の水準だ。米国で「残高が1兆ドル以下では生き残れない」という追い詰められたような合併が繰り広げられていることとは異なる。

ファンドの運用コストが運用成績を圧迫

このような国内の運用会社の抱える課題の原因の1つとしてレポートは、「国内大手資産運用会社は、販売会社の子会社として設立されたものが多く、グループ親会社や販売会社からの独立性が不十分である」との見方を紹介している。「運用会社に対する販売会社優位の構造ができあがり、顧客に中長期的に良好な運用成果が十分に提供されていないのではないか」と追及している。この販社優位の一つの表れとして例示されたのが、「専用ファンド(1社独占販売)」の弊害。親会社の販売を優位にするために、1社限定のファンドを数多く設定し、その結果としてファンドの規模が十分に大きくならず、ファンドの運用コストが運用成績を圧迫しているのではないかと指摘している。

三井住友DSアセットマネジメントが、代表取締役社長兼CEOを招聘

ただ、一部の金融グループにおいては、運用会社の独立性を強化し、長期の視点で経営に取り組んでいると事例を紹介。三井住友フィナンシャルグループの三井住友DSアセットマネジメントが、グループ外から代表取締役社長兼CEOを招聘したこと(現在の社長兼CEOである猿田隆氏は野村アセットマネジメント出身)。また、三菱UFJフィナンシャルグループは、三菱UFJ国際投信などの運用関連子会社を三菱UFJ信託銀行の完全子会社として、三菱UFJ信託銀行の独立性を重視。そして、日本生命グループでは生命保険会社として蓄積された運用ノウハウ等をニッセイアセットマネジメントで活用し、グループ一体で資産運用ビジネスを強化――などを取り上げている。さらに、日興アセットマネジメントが取締役10名のうち7名を独立社外取締役とし、その社外取締役のうち4名は長年運用ビジネスに従事している人材を選任していることも好事例にあげている。

対応の方向性

レポートが示している「対応の方向性」は、

(1)顧客利益を最優先するガバナンスの確立と機能発揮、

(2)資産運用ビジネスに知見のある経営陣による顧客利益最優先・長期視点での運用を重視した経営を行うための経営体制、

(3)目指す姿・強みの明確化と、その実現に向けた具体的な取り組みの推進、

(4)役職員の評価・報酬体系や商品組成、ファンドの運営管理等に係る業務運営体制の構築・改善

――としている。金融庁が目指すところは、

  • 「運用力の強化」
  • 「商品数をむやみに増やすことなく、中長期的に良好で持続可能な運用成果を挙げられる商品に注力」
  • 「不採算ファンドや中長期にパフォーマンスが悪化しているような少額投信について積極的に償還・併合を進めるなどファンド管理の徹底」

などといった姿だ。

このレポートの指摘は、正しく我が国の運用会社の状況を映しているといえるのだろうか。あるいは、より良い運用商品の誕生と成長を促すために、運用業界に何が必要であるのか。これらの議論を通じて、より良い運用環境が整えられることを期待したい。

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