最近ゲームストップの株でヘッジファンドが大きな損失を被ったとのニュースが頻繁に流れます。この件について勉強しましょう。
ゲームストップ社
まずはウィキペディアからゲームストップ社の概要を見てみましょう。
「ゲームストップ社の歴史を起源までさかのぼると、1984年にJames McCurryおよびGary M. Kusinというハーバード・ビジネス・スクールの同級生2名によってテキサス州ダラスで設立されたBabbage’s(バベッジズ社)にたどりつく。第一号店はダラスのショッピングモールに出店された。Babbage’s社はまずは当時一番流行していたゲーム機であるAtari 2600を売ることに力を集中させ、1987年にはニンテンドーのゲームを売り始めた。 そして1988年には株式公開を成し遂げた。
2019年、オンラインゲームへの顧客流出や売上高の減少を受け、株価は年初から8月までに70%超の下落幅を示した。会社側は、対策として本社スタッフのポジション120人の削減を発表している
2021年1月、ゲームストップ株は仕手戦の舞台となった。構図としては、ヘッジファンドの空売りに対してRedditユーザーの個人投資家が買い向かう形で、年初の株価(約17ドル)から、1月29日には一時約468ドルと約27倍の急騰となり、ヘッジファンドが大量の損失を抱えて損切りを余儀なくされる結果となった。」
空売りで儲けるヘッジファンドへの反発
つまり、コンピュータゲームを販売していたけれでも、オンラインゲームにお客を奪われて衰退していたところに、ヘッジファンドがカラ売りを仕掛けた。しかし、経済格差に恨みを持つ個人投資家たちが、SNSを通じて情報を共有し、仕手戦に加わった結果、株価が高騰し、ヘッジファンドが大損をしたということのようです。
損をした個人投資家もいる
ただし、個人投資家の中には、株価が高騰して儲けた人がいる一方で、高い時に買って、その後の下落で損をした人もいるので、ヘッジファンドだけが損をしたのではないようです。
ゲームストップ社の最近6か月の株価チャートを見てみましょう。
2020年8月には4ドル台だった株価が、2021年1月末には347ドル台まで上昇し、2月には50ドル台まで下落しました。
SNSと経済格差が背景にある
今回の事件は、ヘッジファンドなどが仕掛けた仕手戦ではなく、あまり資産を持っていない個人投資家たちがしかけたので、単に規制を厳しくすればよいというものではないようです。
アメリカでは、上位1%の富裕層が、資産の99%を保有していると言われますが、今回の仕手戦を仕掛けたのは、資産家ではなく、経済的に中層、下層にいる人たちが、長年の恨みを晴らすべく、参加しているという面も見逃せません。
ロビンフッド
そして、今回の騒動で大きな役割を果たしているのがロビンフッドです。ウィキペディアで概要を見てみましょう。
「ロビンフッド( Robinhood Markets Inc.)は、アメリカ合衆国のフィンテック企業、および同社が提供する証券取引アプリの名称。証券取引手数料なしで売買を行える点が最大の特徴。
共同経営責任者のバイジュ・バットとウラジミール・テネフは、2011年に起きた「ウォール街を占拠せよ」運動に影響を受け、「収入に関わらず誰もが利用できる金融サービス」を目指し、スタンフォード大学の卒業後、取引アルゴリズムと投資銀行ソフトウェアのスタートアップ会社勤めを経て、2013年に設立された。
米国では、新型コロナウイルス感染症対策の給付金などの影響で、ミレニアル世代を中心に、ロビンフッドを介して株式投資を始める個人投資家が増加している。彼らはロビンフッダーと呼ばれ、個別銘柄の値動きに大きな影響を及ぼすこともある。」
ロビンフッドによる取引制限と緩和
ロビンフッドは、取引制限を厳しくしたり緩めたりしています。以下はロイターの記事です。
「米ゲームストップ2倍高、ロビンフッドの制限緩和で個人買い再び
29日序盤の米国株式市場で、ゲーム販売ゲームストップの株価が前日比で一時2倍超となった。オンライン証券のロビンフッドが取引制限を緩和したことで個人投資家の買いが再び活発化している。
前日にはロビンフッドやインタラクティブ・ブローカーズなどが同銘柄の取引を制限したことを背景に、ゲームストップ株は44%急落。ステレオ・ヘッドフォン製造のコスも同様に前日に大幅安となったが、29日には一時89%高となった。
ただ、両銘柄とも買い一巡後は伸び悩んでいる。
ロビンフッドはウェブサイトで、取引制限の一部を緩和すると発表。ただ、ゲームストップを含む13銘柄の端株の売買を認めておらず、個人投資家が取引するためにはまとまった資金が必要になる。
また、一つの口座で保有できる一銘柄当たりの株式数にも制限を設けており、既存ポジションの積み増しが抑制されている。
ゲームストップなどの株価急騰を巡り、空売りの買い戻しを余儀なくされたヘッジファンドなどが数十億ドルの損失を補填するためにアップルなどの優良銘柄を一部売却。これが市場全体を圧迫しており、S&P総合500種は29日序盤の取引で値下がりしている。」
ゲームストップの騒動は、私には関係ないように見えても、間接的に影響を受けているんですね。
イエレン財務長官の動き
イエレン米財務長官は、今回の騒動に関し以下のように述べています。ロイターの記事で見ましょう。
「イエレン米財務長官は4日、ゲームストップなど一部銘柄を巡る個人投資家の熱狂的な取引を巡り、当局は措置を講じる前に「深く理解する」必要があるとの認識を示した。
イエレン氏は4日、証券取引委員会(SEC)や米連邦準備理事会(FRB)、ニューヨーク連銀、商品先物取引委員会(CFTC)のトップらを招き、最近の一部株価の乱高下を巡り協議する。
ABCのテレビ番組で「金融市場が適切かつ効率的に機能し、投資家が守られていることを確実にする必要がある」と指摘。規制当局との会合では、最近の動向を受けて「一段の行動が必要かどうか討議する」とし、「われわれは無論、状況を注視しているが、行動を取る前に何が起きたのか深く理解する必要がある」と強調した。
規制当局がどのような措置を講じるかどうかは明確にしなかった。」