高校向け 金融経済教育 7

<前回の続き>

学習指導要領の改訂で4月1日から高校で本格的な金融教育が始まりました。どのような内容なのかを金融庁の金融経済教育指導教材をもとに覗いてみましょう。

黒字はパワーポイントのスライド、紺色は発表者用のメモです。


高校生のための金融リテラシー講座

6.金融トラブル

【狙い】成年引き下げに伴い、18歳が金融トラブルの標的となりやすい。金融トラブルの例や対処法を学ぶ。

  • 第6章では、「金融トラブル」についてお話しします。
  • トラブルにあわないためには、どんな手口があるか知っておくのも重要ですので、最近増えている具体的な事例を紹介します。
  • 2022年4月から18歳で成人となります。成人になるとどうなるのかというと、保護者の同意なしに契約ができることになります。
  • 悪い人は成人になりたての人をターゲットにする傾向があり、今までは20歳の人だったのが、これからは18歳の人になりそうです。
  • なので、これから話す金融トラブルについても、自分の身を守るために真剣に聞いてみてください。

クイズ:金融トラブルの相談窓口は?
117番
171番
188番

正解は③.
①117番は、時報。
②171番は、災害伝言ダイヤル。
③188番は、消費者ホットライン。

6-1.金融トラブルの具体例①

マルチ商法(ネットワークビジネス

友達づきあいSNS

  • バイナリーオプションって知ってる?
    分析ツールが入ったUSB を買えば、簡単に、絶対儲かるよ!
  • お金がなくても、学生ローンで借りるといい。すぐに利益が出て返せるよ!
  • 誰かを紹介すると報酬がもらえるよ!
  • 1つ目は、「マルチ商法」です。ネットワークビジネスとも呼ばれます。商品やサービスを契約して、次は自分が買い手を勧誘して、販売組織を拡大させていく取引のことです。
  • 最近、大学生を中心に、バイナリーオプション取引などに関して、投資用のUSBメモリを高額で販売する詐欺的なトラブルが広がっています。
  • バイナリーオプション取引というのは、ある時点の価格が上がるか下がるかを予想して二者択一で選ぶという、非常にリスクの高い取引です。
  • 友人や先輩、SNSで知り合った人などから「この分析ツールを使えば簡単に儲かる」と言われて勧誘されるケースが多くなっており、中には借金をしてまで購入する学生もいます。
  • ただ、うまくいかないんですね。そうすると、「誰かを紹介すると報酬がもらえる」と言われて、被害者が加害者になり、トラブルが広がっていくケースも多くあります。

6-2.金融トラブルの具体例②

友達づきあいSNS

  • 暗号資産(仮想通貨)に投資すれば、月●万円くらいは稼げるよ!
  • 海外の不動産事業に投資すれば、1年後には●倍になるよ!

トラブル

多額の損失が発生した
業者と連絡がつかなくなった
お金が返ってこない
無登録業者に注意!

  • また、バイナリーオプション以外にも、暗号資産(仮想通貨)や海外事業者への投資などで「絶対に儲かる」といって勧誘されることがあります。
  • しかし実際には、多額の損失が発生した、業者と連絡がつかなくなった、投資したお金が返ってこない、といったトラブルが生じています。
  • こうしたトラブルの多くは、国に登録していない、無登録の業者との間で生じています。「金融庁」、「登録」で検索をして、登録がある業者かどうかを調べてみるといいでしょう。

6-3.金融トラブルの具体例③

SNSネット掲示板

お金を貸します!審査不要!
#個人間融資
#お金貸します
#ひととき融資

トラブル

ヤミ金融業者により、違法な高金利での貸付けが行われる
個人情報が悪用され、犯罪被害やトラブルに巻き込まれる

  • 最近は、個人間融資のトラブルも増えてきています。これは、SNSやインターネットの掲示板サイトを通じて、個人間でお金の貸し借りを行うものですが、個人を装ったヤミ金業者により違法な高金利での貸し付けが行われたり、個人情報が悪用されて犯罪被害やトラブルに巻き込まれることもあります。
  • SNSを通じたお金の貸し借りはトラブルが多いので、絶対にやめましょう。

6-4.金融トラブルの具体例④

多重債務

  • 複数の業者から返しきれない借金を背負ってしまうことがあります。
  • 軽い気持ちで高金利の借金をすると、借金はすぐに膨らみます。
  • 収入の範囲内で生活すること、高金利の借金をしないことが重要。
  • 多重債務に陥ってしまったら、多重債務相談窓口に相談

  • 最後に、「多重債務」です。「自分だけは大丈夫」と思っていても、軽い気持ちで高い金利の借金をすると、借金はすぐに膨らみ、借金を返すために別の業者からまた借金をしてしまうことがあります。収入の範囲内で生活すること、高い金利の借金をしないことが重要です。
  • 多重債務に陥る原因としては、生活苦や無計画な買い物、連帯保証人になることや、悪質金融業者の被害によるものなど、様々です。
  • 多重債務になってしまったら、一人で抱え込まず、専門の相談窓口にすぐに相談しましょう。悩んでいる間も、借金が膨らんでしまいます。

6-5.トラブルを避けるには

トラブルを避けるには、どうすればよいでしょうか?

鉄則は3つ!

(1)おいしい話には気をつける

「ローリスク・ハイリターン」はあり得ない=「おいしい話」は存在しない。

(2)向こうから近寄ってきてもはっきり断る

「今だけ」「あなただけ」には要注意。遠慮は無用。「いりません」とはっきり言いましょう。

(3)万が一トラブルに遭っても、決して諦めない

ひとりで悩まず、早めに適切な相手に相談することで道が開ける。

  • では、ここまでの事例を踏まて、トラブルを避けるにはどうすればよいか、少し考えてみてください。
  • 1つ目は、「おいしい話には気を付ける」。第4章で、リスクとリターンの関係について説明しましたが、高いリターンを追求すればリスクが高まります。逆に、リスクを低く抑えようとすると、リターンも低下します。「ローリスク・ハイリターン」、「安全で、確実に大儲けできる」といったことは絶対にない、と覚えておいてください。
  • 2つ目は、「向こうから近寄ってきてもはっきり断る」。トラブルの中には、「今だけ、あなただけ特別に」と勧誘されて、高額な商品やサービスの契約をしてしまうケースがあります。断ろうとしても、「今日中なら安く契約できる」などと言われ、断りにくい状況に追い込まれる場合もありますが、勇気を出して「いりません」とはっきり言いましょう。
  • 3つ目は、「万が一トラブルにあっても決して諦めない」。契約によっては、取り消しや解約ができる場合があります。契約した後でも、疑問に思ったり困ったりしたときは、ひとりで抱え込まず、早めに家族や公的な相談窓口などに連絡してください。

6-6.トラブルに遭ってしまったら

悪質な業者との契約の取り消し・無効

(1)未成年者による法律行為

→ 民法(親などの同意がない等の法律行為の取り消し)

(2)不当な契約条項、不当な勧誘による契約

→ 消費者契約法(条項無効、契約取り消し)

(3)訪問販売、訪問購入、電話勧誘、エステ、語学教室、マルチ商法、内職・モニター商法

→ 特定商取引法(クーリング・オフ制度による解約など)
→ 通信販売(ネット通販含む)はこの法律によるクーリング・オフの対象外!

但し、事業者は返品の条件等を表示する要。表示がない場合、8日間は返品が可能(送料は購入者負担)。

*いずれも期限・時効があるので、早めに相談窓口で対処法を相談しよう。

消費トラブル等に関する相談窓口

(1)まずは188番(いやや!)に電話

→ 消費者ホットラインが、消費生活センターの相談窓口を案内

(2)金融サービスについては、金融庁や業界団体等が相談窓口を設置

  • トラブルにあってしまった場合は、どうすればいいでしょうか。
  • 未成年者の場合、親権者の同意を得ないで行った契約は、取り消すことができますが、成年になると、自分ひとりで契約ができます。
  • その場合でも、悪質な業者との契約については、法律にもとづいて、取り消したり、無効にする、あるいはクーリングオフ制度が利用できる場合もあります。
  • トラブルにあったときは、ひとりで悩まず、消費者ホットライン 188(いやや!)に電話して相談してください。地方公共団体が設置している、身近な消費生活センターの相談窓口を案内してくれます。
  • また、金融サービスについては、金融庁や業界団体などでも相談窓口を設置しています。

まとめ(6章のポイント)

(1)金融トラブルの手口を知りましょう。

「絶対に儲かる」はありません。

(2)トラブルを避けるには、①おいしい話には気をつける、②向こうから近寄ってきてもはっきり断る、③万が一トラブルに遭っても、決して諦めないことが大切です。

(3)トラブルに遭ってしまったら、悪質な業者との契約の取り消し・無効を求めましょう。

(4)また、188番(消費者ホットライン)に電話して相談しましょう。

7 まとめ

(1)ニーズとウォンツに分けて、お金を賢く使いましょう。

(2)家計管理をしっかりと行い、貯蓄できる仕組みを作りましょう。

(3)自分が人生でやりたいことを考え、ライフプランを立てましょう。また、「教育」「住宅」「老後」という人生の3大費用を計画的に準備しましょう。

(4)ライフプランに合わせて、社会保険、資産形成、民間保険の利用を組み合わせましょう。

(5)金融商品の特徴を理解し、目的別に金融商品を活用し、将来に向けて準備をしましょう。

(6)投資とは自分の資金を経済活動に提供することで、利益の一部を受け取ることです。経済活動により、私たちの生活がより豊かで便利になります。

(7)お金を借りる際には、事前に返済のイメージを持ちましょう。 金利や借り過ぎには注意が必要です。

(8)金融トラブルの手口を知り、トラブルを避けましょう。トラブルに遭ってしまったら、188番に電話して相談しましょう。

(9)キャッシュレスの活用が進んでいるように、これからも新しい金融商品・サービスがでてきます。今後も必要な知識を身につけ、うまく活用しましょう。

(10)この講座をきっかけとして、みなさんが少しでも 「金融」に興味を持ってくれたら幸いです。

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