日本銀行の債務超過 下

<昨日の続き>

テレ東BIZ 経済記者インサイトスペシャル ニッポン経済への警告② 金利ある世界へ 日銀の財務は耐えられる!? 2023年12月27日

司会 佐藤真人

川村小百合(政府の財政制度分科会委員、日本総研主席研究員)

司会:中央銀行が債務超過になると、何が起きるか?

川村:すぐに何かが起こるというわけではないが、どこまで行ってもいいということではない。中央銀行の財務が悪化している、国の財政も悪化している、その国の通貨は大丈夫なの?日銀券をたくさん発行しているけど、大丈夫なの?国債をあんなに発行しているけど、日本はちゃんと借金を返す気があるの?こんな感じで世界中から見られると、日銀に対する信認は、円に対する信認でもあるけど、そこに悪影響が及ぶ可能性がある。

債務超過を解消する方向に向けた努力をちゃんとやっていれば、市場は納得してくれる。信認が崩れることはない。だから他の国は為替レートが崩れることがなくやっていけている。

司会:円に対する信頼、信認がなくなってしまったら、どんなことが起きるか?

川村:端的には為替市場に影響が出る。円安です。今回の円安も、信認が疑われ始めたという側面もあると思っている。日米の金利差で円安になったと言われているが、それだけではない。アメリカが、利上げは一服して利下げを始めるかと言う状況になったのに、円高にならない。120円、110円、105円とか、1年前、2年前の水準に行くかと言うと、行かない。国際金融市場が、「あの国本当に大丈夫なの?財政と、中央銀行、日銀がやっていることは平気なの?かつてに比べれば、今の140円は円安水準。やる気がない国だと思われると円安が進みかねない。そうなると、日銀が短期の政策金利を上げることになる。そうなると、日銀の赤字や債務超過が問題になる。

為替レートが上がると、利上げする。ロシア、トルコ、アルゼンチンがそうだ。先進国でも、30年前に、イギリスが、単一通貨ユーロに入ろうとするときに、ERMと言う仕組みに入っていたが、為替を高めの中心レートを設定したために、ソロス率いるヘッジファンドに、売り込まれた時があった。あの時、イングランド銀行が政策金利を10%、15%くらいまで上げた。このように先進国でもやるので、為替が売られた時に何をやるかと言うと、為替介入だけではない。一番効くのは中央銀行が政策金利を上げること。これが世界中で共有されている共通認識。

金利を10%上げることなんかできない。1%、2%上げるだけで債務超過になる。それが始まれば、さらに円が売られることになるかもしれない。円安を止める手立てがなくなるかもしれない。為替介入にも限界がある。そうすると最後の手段は資本移動規制。海外にどんどんお金が流出するから円安になるので、お金の意味での鎖国にする。その中で、自力で経済の立て直しをし、財政再建をし、日銀のバランスシートの正常化をする。

資本移動規制をすれば、海外にお金を持ち出せなくなる。資本移動規制がかかったら、大企業が貿易の決済するのも金額に規制がかかったり、一定期間内にいくらまでとかなる。外貨建てで、外国にお金を払うのは厳しく制限されることになるので、ビジネスどころでなくなる。鎖国状態、北朝鮮のようになる恐れもある。

司会:アメリカのFRB、イングランド銀行、オーストラリア銀行など、赤字転落や債務超過だが、問題は起きていない。

川村:これらの中央銀行は、今後5年、10年の財務の見通しを出しているから問題が起きない。満期が来た国債は手放しているし、イングランド銀行はそれだけでなく中途売却もして、どんどん自分たちの資産を縮小している。資産規模を縮小していけば、同じ逆ザヤでも、500兆円と200兆円では影響が全然違う。つまり、資産の縮小を進めるとともに、複数の金利シナリオで財務を検証・結果を公開している。そこでは、5~6年、7~8年すれば、債務超過状態は解消するということをみんなに見せているので、市場も納得している。日銀は、それを見せていないし、正常化のオペレーションに全然着手していない。国債を手放す計画も出していない。他の国の中央銀行はとっくにやっている。

司会:「日銀は政府の子会社であり統合政府で見れば問題ない」という理論の問題点は?

川村:普通の国では、中央銀行が国債の買い入れ、財政ファイナンスをやっていない。そういう国では、政府の財政が悪化すると市場金利が上がる。長期金利が上がって、こんなんじゃあ続かないぞと警告する。すると、財政再建に向けて正していく。去年秋のイギリスのトラスショックが典型。その時は、大規模な財政拡張を計画したとたんに、英国債とポンドが急落して長期金利が休場した結果、首相が辞任した。

それが日本では起こらないように、YCC政策を実施している。短期金利も、長期金利も市場金利を抑え込んでいる。市場の警告が、金利の形では発していない。為替は日銀が抑えられないので円安になっている。短期金利を上げれば、利払い費と言う形で、政府が負っているが、日本の場合には、日銀にその分のリスクがかかっている。


以上をまとめると、以下の通り

円安
⇒物価上昇
⇒物価上昇を抑制するために当座預金に金利を付ける
⇒数年で日本銀行は債務超過
⇒日本国の財政も、日本銀行の財務も信用できないから、日本円は信用できない
⇒更なる円安
⇒日本銀行は国債を手放し、日本政府はインフレ税、増税、財政支出削減を実施
⇒日本国民には厳しい生活が待っている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です