財政危機8:家計の金融純資産と国債消化

◎今日のテーマ:財政危機 家計の金融純資産と国債消化

家計が間接的に国債購入

現在、国会では2019年度国家予算が審議されています。国の一般会計は101兆円で、税収を遥かに上回っています。それを補填しているのが国債です。日本の財政が破綻しないで済んでいるのは、日本の家計が主に間接的に国債を買っているからです。しかし、家計の国債消化能力は無限ではありません。家計の金融資産(金融総資産から住宅ローン等の負債を除いたもの)を超えてまでは、国債を消化できません。

家計の純金融資産は毎年6兆円減少

週刊ダイアモンド2月9日号に、小黒一正法政大学教授の試算が掲載されています。1990年には381兆円あった家計の純金融資産は、2017年には226兆円まで減少しました。つまり27年間で155兆円減少していて、年平均で6兆円の速さで減少しています。

国債が吸収できなくなる時期

現状、長期金利はほぼ0%ですから、この状態が続くとすると、西暦何年に家計は国債を買えなくなるでしょうか。

226兆円 ÷ 6兆円=38年

38年 + 2017年 =2055年

には家計の消化余力がゼロになります。

異次元緩和金融政策はいずれ終わる:出口論

しかし、この計算は長期金利が0%のままとした場合の計算で、いつまでも0%金利が続くわけでは有りません。いずれ、インフレ率が2%になれば、現在日限が実施している異次元緩和金融政策を止めることになり、長期金利は上がるでしょう。

長期金利増加 過去27年間の
年間平均縮小額:兆円
長期金利増加分:兆円 家計年間消化額:兆円 消化期間:年 家計が国債を消化できなくなる年
0% 6 0 6 38 2055
1% 6 9 15 15 2032
2% 6 18 24 9 2026
3% 6 27 33 7 2024
4% 6 36 42 5 2022
5% 6 45 51 4 2021

長期金利1%上昇すると利払い費は9兆円増加

長期金利が1%増えた時に、家計の年間消化額は2019年の公債残高897兆円の1%ですから、利払い費が9兆円増加します。0%の時の6兆円に9兆円を加えると15兆円になります。その15兆円で226兆円を消化していくと15年で家計の消化余力がゼロになります。

長期金利をさせないために日銀は国債を買い続けるかも?

長期金利が5%になれば、4年で、家計の消化余力がゼロになります。日銀が国債を一切引き受けなければ、長期金利が5%になることも考えられますが、金利を抑えるために日銀もある程度国債を購入するでしょうから、もう少し低い水準になると考えられます。しかし、日銀も国債購入をいつまでも続けて行けるわけでは有りません。このように具体的に数字で計算すると、深刻な状況がよく分かります。数年後には、消費税増税、緊縮財政、インフレタックス導入という「アトノミックス(財政破綻―清滝信宏プリンストン大学教授)」へと、大きく舵を切ることになるのではないでしょうか。というよりも、せざるを得なくなるでしょう。思っていたよりも、かなり早い時期に、そうなるかもしれません。

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