MMT(Modern Monetary Theory)について

◎今日のテーマ:MMT(Modern Monetary Theory)について

財務省の資料

先日このブログで、MMTについて図を使って説明しましたが、財務省から様々な意見をまとめた資料が公表されましたので、それについてもう一度扱います。日本語では、現代貨幣理論、現代金融理論とも言われていますが、財務省は理論に値しないと考えているためか、「理論」と言わずに「経済運営の手法についての考え方」と言っています。

鹿威し

私の結論から言えば、この考え方に似ているのは「鹿威し(ししおどし)」だと思います。「水を注いでも、注いでも変化がないから大丈夫だ」ということです。この「水」は「国の借金」で、どんどん増やしても問題がないという考えです。しかし、あるとき突然、鹿威しの向きが傾いて、とんでもないことが起こります。その後、ハイパーインフレによって「国の借金」がゼロになり、国民の金融資産が無くなるのです。鹿威しの向きが突然変わる要因の例を挙げると、次の3つです。

① 国民が自分たちの金融資産を外貨に換えるため大幅な円安になり、その結果インフレになる

② 首都圏直下型や南海トラフの大地震が起こって、住居、ビルなどの再建需要、復興需要が引き金となってハイパーインフレが発生する

③ 団塊の世代を中心とする高齢化が進み、家庭の資産が減少するため、国債の引き受け手が日銀しかいなくなり、ハイパーインフレ、財政立て直し、ひどい不況になる

このうち、③はゆっくりと十数年かけて来るでしょうが、②は突然やって来る可能性があります。また、①は、既に、日銀OBや財務省OBは行動に移していますが、国民の多くが気付くには、もう少し時間がかかりそうです。

今1滴加えても何も起こりませんが、次の1滴を垂らした時にすべてがひっくり返るのです。あるいは、次の1滴を垂らさなくても、鹿威しの受け皿が突然小さくなれば、やはり、すべてがひっくり返ります。

以上が私の考えですが、以下は主要な人物の考えです。

黒田日銀総裁

「MMTというのは、最近米国で色々議論されているということは承知していますが、必ずしも整合的に体系化された理論ではなくて、色々な学者がそれに類した主張をされているということだと思います。そのうえで、それらの方が言っておられる基本的な考え方というのは、自国通貨建て政府債務はデフォルトしないため、財政政策は、財政赤字や債務残高などを考慮せずに、景気安定化に専念すべきだ、ということのようです。」

●ポール・クルーグマン

(ニューヨーク州立大学、経済学者、2008年度ノーベル経済学賞受賞)
「債務については、経済の持続可能な成長率が利子率より高いか低いかに多くを左右されるだろう。もし、これまでや現在のように成長率が利子率より高いのであれば大きな問題にならないが、金利が成長率より高くなれば債務が雪だるま式に増える可能性がある。債務は富全体を超えて無限に大きくなることはできず、残高が増えるほど、人々は高い利子を要求するだろう。つまり、ある時点において、債務の増加を食い止めるために十分大きなプライマリー黒字の達成を強いられるのである。」

●ジェローム・パウエル

(FRB議長)
「自国通貨で借りられる国にとっては、赤字は問題にならないという考えは全く誤っている(just wrong)と思う。米国の債務は国内総生産(GDP)比でかなり高い水準にある。もっと重要なのは、債務がGDPよりも速いペースで増加している点だ。本当にかなり速いペースだ。歳出削減と歳入拡大が必要となるだろう。」

●ウォーレン・バフェット

(バークシャー・ハサウェイCEO)
「MMTを支持する気には全くなれない(I’m not a fan of MMT — not at all)。赤字支出はインフレ急上昇につながりかねず、危険な領域に踏み込む必要はなく、そうした領域がどこにあるのか正確にはわからない。(We don’t need to get into danger zones, and we don’t know precisely where they are.) 」

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