MMT理論:天秤と鹿威し

◎今日のテーマ:MMT理論の「天秤」と「鹿威し(ししおどし)」

MMT

現代貨幣理論(MMT:Modern Monetary Theory)は、「通貨発行権を持つ国家は債務返済に充てる貨幣を自在に創出できるため、「財政赤字で国は破綻しない。」と主張します。

1990年以降の理論

MMTは、1990年代にウォーレン・モスラー(米投資家)、ビル・ミッチェル(豪ニューカッスル大学)、ランダル・レイ(米ミズーリ大学-カンサスシティ)、ステファニー・ケルトン(米ニューヨーク州立大学、サンダース上院議員の顧問)等によって提唱された経済運営の手法についての考え方です。

選挙がらみ

米国では、2018年11月にニューヨーク州から連邦議会下院選に立候補し当選したアレクサンドリア・オカシオ-コルテス氏がMMTを支持したこと、また、MMTの主要な発信者であるケルトン教授が2020年の大統領選に出馬を表明している民主党サンダース議員の2016年大統領選時の顧問を務めていたことなどから、注目が集まっています。
(参考)米国におけるMMT支持者は、国債発行で確保した財源を用いて、完全雇用を達成・維持するため、「雇用保障プログラム」(Job Guarantee Program)(政府が基金を作り、失業者を雇用してその業務を担わせる)を実施すべきとの立場。

「インフレにならない限り」

この理論には、「インフレにならない限り」という前提条件が付いています。ニューヨーク州立大・ケルトン教授は、こう言います。

日本が実例

「日本は有益な実例を提供しています。国内総生産(GDP)比の公的債務は米国の3倍もあるのに、超インフレや金利高騰といった危機は起きていません。自国通貨建ての債務は返済不能にならないと、史上は理解しているのです。」

「日本政府と日銀はMMTを長年実証してきた。日銀は日本国債の40%を買い上げ、金融政策で長期金利を抑制している。政府債務が問題なら、実体経済に問題が出るはずだ。」

インフレは「天秤」

ケルトン教授の主張は、「債務がインフレを引き起こすレベルまで達していないことは確かです。債務は全く課題ではない。」ということです。つまり、国債を発行しても天秤が傾くような問題が発生していないのだから、どんどん国債を発行して長期停滞から脱却した方が良い、ということです。そして、ハイパーインフレの懸念に対しては、「財政拡張策にインフレ防止条項を入れておけばいい。例えば5年間のインフラ投資計画を投資たとしても、2年目にインフレの兆しが出れば、支出を取りやめる」という対応策を実施するということです。天秤が動き出したら、下がった方の錘を取り除くということです。

しかし、この対応策には2つの問題があります。

① ハイパーインフレは「鹿威し」

MMTに反対する人は、気がついたときに天秤の錘を取り除こうと思っても、時すでに遅く、ハイパーインフレや通貨暴落が発生して、大きな不幸に見舞われることを懸念しているのです。それは、鹿威しが傾き始めたら、それを元に戻すことは不可能で、あっという間にすべてが終わってしまうということです。現在は、この鹿威しを日本銀行が力づくで抑え込んで、ひっくり返らないようにしているのです。まだ、鹿威しはひっくり返っていませんが、水しぶきは既に飛び散り始めました。それは日本の円に見切りをつけた財務省や日銀のOB達です。彼らは退職金を外貨に換え始めました。2%のインフレ目標を達成して日銀が手を離したら、すぐにひっくり返るのか、あるいは、まだ、ひっくり返らないのかは分かりません。

② ハイパーインフレを止める苦しさ

国債残高が増えれば増えるほど、ひっくり返るときの不幸の大きさは大きいので、それを防ぐためには未然に国債残高を小さくする努力をしなければならないということです。その努力を実行すると、歳出削減と増税によってひどい不況になる恐れがあります。そうなれば、企業倒産が起こり、公務員の給与不払い・解雇、社会不安などが懸念されます。もし破局に至る前に、国債残高を減らすことができたとしても、その努力のための苦しさは、最初から増やさないようにする努力よりもはるかに大きいのですから、最初から増やさないようにすべきだということです。

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