<昨日の続きです>
アメリカの新聞USA TODAY紙の2019年12月13日付の記事を参考にして、来年の景気を考えてみます。
考えられる来年の3つのシナリオを見ることにしましょう。
1.一般的見解:低成長
ウォルターズ・クルワー・ブルー・チップによる51人のエコノミスト調査によれば、2020年経済成長の平均予想は控えめの1.8%です。今年の2.3%や、経済不況後の高い水準に相当する2018年の活力ある2.9%より下がっています。トランプの実施した連邦税削減と支出増は、昨年成長を生み出しましたが、勢いがなくなってきた、とミラーは言います。
一方、米中当局者は、火曜日に貿易協議が第1段階の暫定合意に達したと報じられました。12月15日に効力を発生することとなる、消費関連の中国製品輸入がほとんどを占める1560億ドルの関税を、取り決めが撤廃すると予測されました。
中国からの輸出に課せられる3600億ドルの関税に関しては、合意の一部として関税額が引き下げらえるものの、存続すると報じられています。
部分合意のおかげで景気後退リスクは弱まるものの、不確実性の状態は残り、景気はおおむね不活発で、アメリカの製造業、設備投資には徐々に打撃となる、とミラーは言います。大統領選のせいで、税制と他の政策は透明性を欠くことにもなり、設備投資を控えることになるだろう、とRSMのエコノミストであるジョー・ブラスエァスは言います。
「私たちはきっと不確実性の1年を経験するだろう」とオックスフォード・エコノミックスのグレゴリー・デイコは言います。
ウォルターズ・クルワーの調査によると、来年の設備投資は1.1%増で2019年の半分のペース、一方工業生産の成長は鈍化する、とエコノミストは予測しています。ISMによると製造業の活動は4か月連続で収縮しています。ヨーロッパと中国において最近工場稼働率が上昇しているのは、米国の製造が間もなく上向くことを意味するけど、それは低いレベルだとミラーは考えています。
今まで消費者は、ビジネスの苦境からは概ね無縁で、消費はゆっくりしていたものの、しっかりしていました。家計の収入に占める借金は比較的高いのです。家計の支出が経済活動の約70%を占めるので、それは重要な点です。しかし企業の景況感が弱ければ、ますます雇用――そしてこのようにして消費者の信頼感と支出――を冷やすことになり、企業の利益は低く、成長力も鈍いままだとデイコは考えています。
家計の購買を抑制しそうなもう一つの要因が、雇用者数増加の低迷です。雇用者数の毎月の増加は、来年急に減速して100,000~125,000人になるとミラーは考えています。なぜなら、経済が弱くなり、失業率は半世紀ぶりの低水準である3.5%になっているので、働き手がいなくなっているということを意味しているのです。
調査に参加したエコノミストの予想では、来年は雇用者数増加の鈍化に伴い、平均で3.7%に上昇します。そして消費者支出は2019年の2.6%から2.3%に下がるだろうと予想しています。
一方、FFレート切り下げ効果もあって、今年初めに30年固定住宅ローンが4.5%から3.68%に下がったので、住宅建設については明るいのです。
しかしデイコは住宅建設が来年、わずか0.9%しか増えないと予想しています。在庫を制限していることと、労働者と使える土地が不足しているため住宅建設は制約されていると彼は言います。
2.楽観的見解:消費者が圧倒する
もっと見込みのある見方をするエコノミストもいます。確かに製造は厳しい状況ですが、その理由はゼネラル・モータースのストライキのような一時的な要因による部分もあると、リサーチ会社ナティクシスのジョー・ラボルグナは言います。そして製造業は必ず循環し、減退の後には回復が来る、と彼は言います。
実際、中国からの輸入品の関税を予想して、商品在庫を今年の初めに積み上げたのですが、それを企業は減らしてきました。膨れ上がった在庫を減らすために行った生産減少は「たぶん終わりに近づいている」とゴールドマン・サックスは言います。
もっと広く言うと、エコノミストは製造を強調し過ぎるとゴールドマンは言います。製造は経済の12%しか構成していませんし、低金利や、11月後半に史上最高値に近づいた株式市場も考慮に入れなければならないでしょう。
「強い消費支出は、弱い設備投資よりも長く続く」とゴールドマンは顧客に対して説明しています。貿易戦争の影響は、来年経済がもっと打撃を受けるというよりはむしろ、「もっとエスカレートすることなく」収束する、とリサーチ会社は予想しています。失業率が3.3%になると、年率の賃金上昇は3.5%に加速され、支出が増加するとゴールドマンは言います。
ラボルグナとゴールドマンは、来年経済が活況を呈し、年率2.5%成長になると予想しています。
景気後退はあるのでしょうか?
ゴールドマンは、その可能性をわずか20%だとしています。従来、失業率が低下すると、賃金上昇が加速され、高インフレとFed金利高騰を招き、経済が悪化したとゴールドマンは言います。しかし、インフレーションはFedの年率目標である2%以下に張り付いています。それには様々な理由がありますが、割安のオンラインショッピング、企業や労働者が低インフレーションの継続を予想していることもあります。
1990年代のハイテク株価、2000年代半ばの住宅価格の上昇等、経済拡大を終わらせたバブルの兆候もほとんどない、とゴールドマンは言います。
3.悲観的見解:不確実性の拡大
貿易戦争と不活発な世界経済成長のために、消費支出とサービスセクターが悪化するというダメージを、主流派の見方は軽視していると考えるアナリストもいます。
「製造分野の不確実性が広がっていきそうだ」とバンク・オブ・ザ・ウェストのチーフ・エコノミストであるスコット・アンドーソンは言います。
アンダーソンは既にその兆候を見ています。消費者の信頼感はまだしっかりしているものの、全国産業審議会によれば4か月連続で下降しています。そして、住宅、自動車、電気製品を今後6か月間で買う計画のアメリカ人の割合が、6月から減少しました。
「消費者は少し疲れ気味のようだ」とアンダーソンは言います。
来年購買が衰えるのは、「あまりに泡状態になった」株式市場だ、と彼は言います。スタンダード&プアーズ500指数が今年25%上がった後なので、わずかな上昇しかないと予想するアナリストもいます。
来年、経済は1.3%しか成長しないだろうと、アンダーソンは予測しています。彼は40%の確率で景気後退があると見ています。
より大きな取り決めが、もしできなさそうなら、中国との貿易戦争をトランプが仕掛けるかも知れないと、スウォンクは恐れていて、景気後退の可能性を51%としています。
以上が、私の拙訳でした。
このような予想は、頭の整理には役に立ちますが、当たることを余り期待しない方が良いと思います。1年経った時に、これを読み返すと、当たらない部分の方が多いようです。
私の場合、投資原則は「買いっ放し Buy and Hold」ですから、このような予想とは無縁です。私個人に関して言うと、来年は、我が家の修繕にお金がかかりそうなので、NISAの1306(TOPIX連動型上場投資信託のETF)とUSMMFを売らなければならないだろうということです。