緊急時の最中に緊急時の資金を作る

新型コロナウイルスで、景気が悪くなり、業績が不調になればボーナスにも影響が出たり、リストラにあう可能性もあります。2008年は現実に失職した人が大勢いました。飲食業への影響は既に現れていますが、このような事態に陥ると、1年分の生活費、あるいはそれ以上を常に保有していないといけないと痛感します。しかしいまさらそんな愚痴を言っても仕方がないと思う反面、何とかならないかとも思います。そんな時にニューヨーク・タイムズ紙2020年3月20日の記事が目に止まりました。以下は拙訳です。

緊急時の最中に緊急時の資金を作る

コロナウイルスのせいで米国経済は急速に停滞し、職に悪影響を与えています。緊急時のための資金をまだ持っていないなら、どんなお金であれ蓄える時です。

ほとんどの人たちは緊急時の資金を、徐々に長い時間をかけてためるものだと考えます。しかし、多くの人にとって、危機は今ここにあるか、今後数週間で直ぐにやって来るのですから、別の取り組みが必要です。

「わずかな収入しかないのに、急にたくさんのお金を蓄えるのは難しい」とアメリカ消費者連盟の上級フェローであるスティーブン・ブロベックは言います。そして、前回の景気悪化に比べ現在の経済は、一時的な仕事やフリーランスの人が多く、失業手当の受給資格がなかったり、収入が変動するので貯蓄が難しかったりします。

ウイルスの流行対策として、連邦政府は現金の生活補助を支給することとしていますが、詳細は未定です。従って自分でプランを立てることが賢明です。

「正解は何もしないことであってはいけません。」と、金融刷新に特化した非営利法人である金融健全ネットワークのチーフ・プログラム・オフィサー、ジョン・トンプソンは言います。

救いとなる理由:少額の現金の備えでも、最悪を避けるのに役立たせることができるからです。わずか250ドルでも、家族が公共料金を支払えなかったり、立ち退きさせられるリスクをかなり引き下げることが可能です。

「1ドルずつ貯める」ことによって、料金を滞納せざるを得なくなる可能性を引き下げることができると、デューク大学金融調査グループのコモン・センツ研究所の共同創立者マリエル・ビースリーは言います。

それじゃ、どうすれば良い?

最初に自分の収入に関する情報を入手することだ、とトンプソン氏は言います。雇主はあらかじめコンピューターを使って、週ごとのシフトを組むことがよくあります。そこで、どれほど不足するかを見積もって、もし労働時間が削減されていないかを確認しようとするのです。

次に、現金と貸付限度額の利用しうる資金を見積もることです。新たなクレジットカード口座を開設することはお勧めできませんが、既に財布に入っているそれぞれのカードの貸付限度額を知ることで、もし必要ならいくら引き出せるかを知ることは役に立つと、トンプソン氏は言います。

ボーナスであれ、手数料であれ、所得税還付金であれ、どんな種類の一時金でも、あてがあるなら、できるだけ蓄えることです。アメリカ人は今の時期、税金の還付を受けていて、それはかなりの金額です。なぜなら、子供のいる家族が該当する勤労所得控除も有るからです。

還付を受ける家計の平均は3,000ドルを超えていて、手取り給料のほぼ6週間分に相当すると、大手銀行の研究部門であるJPモルガン・チェース・インスティチュートによって行われた数百万の顧客口座研究によって分かりました。(この研究は、2015年、2016年、2017年のデータによるもので、I.R.S.統計によると、3月5日時点の返金還付額は3012ドルでした。)

これによって、今後の困難な数週間を金銭面ではしのげるけれど、万能薬ではないとトンプソン氏は言います。

というのは、多くの人は、クレジットカードのローンや家計の必需品を買うための、特定の支出のためにとっているからです。「多くの人にとって、そのお金は既に使われている。」と彼は言います。

それでも、還付金を受けた家計は、受け取った後平均して6か月間還付金の4分の1以上を保有していることが、チェースの研究で分かっています。「数百ドルあるとかなり違う。」とトンプソン氏は言います。

次に、支出をよく見て、切り詰められるところは切り詰めるのです。倹約はつらいかもしれませんが、大事な考えです。春の旅行(もちろんとても楽しみにしていたでしょうが)を延期できますか?一時的になしで済ませるサブスクリプションはありますか?(多くの出版物は無料のコロナウイルス記事をオンラインで提供しています)数か月間費用の少ないスマホに切り替えられますか?

「できるだけ積極的な手段」を取り、貯蓄を緊急時の資金に振り向けるのだとビースリーは女史は言います。

状況によっては、一時的に退職勘定への拠出額を引き下げ、緊急時資金にそのお金を振り向けるのです。職場の401(k)プランなどの口座に拠出するのに緊急時の貯蓄をしていない人は多いのですとビーズリー女史は言います。その理由は、経営者が自動的に、給与天引きで退職金の拠出手続きをしてしまうからです。

普通なら、価格が安い時により多くの株を買うのですから、規則的に退職プランに拠出し続けるのは賢明です。しかし、緊急時は、まったくやめてしまうより削減した方がましです。一つの選択肢は、経営者にマッチングしてもらう金額以上の掛け金を停止することかも知れないとビーズリー女史は言います。そういう風にして、退職のための長期の貯蓄をするのです。一旦危機が去ったら――スマホのカレンダーのリマインダーをセットしておき――ちゃんと拠出を始めるようにしておくのです。

過去に考えたことは無いかもしれませんが、補助的栄養支援プログラム(SNAP)や女性、乳児および小児のための補助栄養プログラム(WIC)等、地元のフードバンクの支援を確認するのに、今が良い機会です。

もし家を所有しているなら、金銭の緊急対策としてホームエコティライン(家の純粋価値を担保にしてできる借金)の利用を検討できます。家の価値と住宅ローンとの差額を借り入れるのです。2019年末で、住宅ローンのある45百万軒近い住宅所有者は平均して119,000ドル分の純資産を持っていると、調査会社ブラック・ナイトは言います。

融資枠内の利子は普通、クレジットカードよりも低いのです。しかし、借金は住宅によって担保されているので、もし支払わなければ差し押さえのリスクがあります。従って、ホームエコティを利用するにあたっては注意した方が良いのです。

貯蓄の備えがあれば、必要な時にお金を使うことを心苦しく思うことはありません。そのためにあるものですから。緊急時のためのお金は長期にわたって増殖させる退職貯蓄とは異なります。もしものための口座は引き出すためにあり、再び使えるように補充するものです。

「一切手を付けない口座を作るために貯蓄しているわけではない」とトンプソン氏は言います。

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