サラリーマンは無関係
小規模企業共済というのは、会社員や公務員など一般のサラリーマンにとっては馴染みの無い制度です。
経営者、弁護士等
小規模企業の経営者・役員、弁護士等個人事業主が、廃業や退職時の生活資金などのために積み立てる制度です。掛金が全額所得控除できるなどの税制メリットに加え、事業資金の借入れもできる「退職金制度」です。
掛金は加入後も増減可能、全額が所得控除
月々の掛金は1,000~70,000円まで500円単位で設定が可能で、加入後も増額・減額できます。確定申告の際は、その全額を課税対象所得から控除できるため、節税効果があります。
共済金の受取りは一括・分割どちらも可能
共済金は、退職・廃業時に受け取り可能。満期や満額はありません。共済金の受け取り方は「一括」「分割」「一括と分割の併用」が可能です。一括受取りの場合は退職所得扱いになり、分割受取りの場合は、公的年金等の雑所得扱いとなり、税制メリットがあります。
低金利の貸付制度を利用できる
契約者の方は、掛金の範囲内で事業資金の貸付制度を利用できます。低金利で、即日貸付けも可能です。
いろいろな貸付制度
一般貸付け / 緊急経営安定貸付け / 傷病災害時貸付け / 福祉対応貸付け / 創業転業時・新規事業展開等貸付け / 事業承継貸付け / 廃業準備貸付け
現況
小規模企業共済制度の現在の在籍人数は約138万人、資産運用残高は約9兆円です。平成29年度の受給状況は、共済金受給額が約4,838億円、共済金受給額の平均は1,087万円、共済金受給者の平均在籍年数は約19年です(平成30年3月末現在)。
加入状況の棒・折れ線グラフ(加入人数・在籍人数)
運用資産の割合と運用利回り
中小機構では、小規模企業共済法に基づき「小規模企業共済資産運用の基本方針」を策定し、長期的な観点から運用を行っています。満期保有目的の国内債券(簿価)を含む自家運用資産の構成割合を約8割とし、約2割を運用機関に委託しています。
運用資産の割合は、以下のとおりです。
小規模企業共済資産運用の基本方針
⇒ 中長期的な観点から、リターン・リスクの特性が異なる複数の資産に分散投資する資産構成の割合を定める「基本ポートフォリオ」を策定し、これに基づき運用しています。
平成30年度運用利回り 0.99%
(内訳)自家運用資産 1.15%
委託運用資産 0.30%
➢過去5カ年の平均運用利回り : 2.08% (単純平均。以下同じ)
➢過去10ヵ年の平均運用利回り : 2.59%
2013年から2017年までの運用利回りはこのグラフの通りです。
➢自家運用資産の利回りは、安定的だが低下傾向
・平均運用損益額 :(過去5年)967億円 (過去10年)991億円
・平均運用利回り :(過去5年)1.34% (過去10年)1.47%
➢委託運用資産の利回りは、平均的にはプラス傾向
・平均運用損益額 :(過去5年)867億円 (過去10年)1,134億円
・平均運用利回り :(過去5年)5.48% (過去10年)7.66%
国内債券が全体の81%を占めているので、その中身を見てみましょう。
共済契約者に対する共済金(解約手当金)の支払いを、将来にわたり確実にすることができるキャッシュフローを確保するため、満期保有目的の国内債券(簿価)を含む自家運用資産の構成割合を約80%維持するように満期保有目的の国内債券(簿価)を毎月取得しています。
➢ 取得の基本的な考え方
・満期保有目的(債券の償還まで保有)として取得
・元本償還・利金収入が確実とされる格付けの高い銘柄(国債、地方債、政府保証債、財投機関債、金融債、社債)を取得
・取得債券は、キャッシュフローと適切な利回り確保を考慮して、満期年限の異なるもの(5年債、20年債による「ラダー型運用」を構築)を取得
・将来の償還額の平準化(年次・月次)を想定し取得
構成比(%) | 簿価(億円) | |
国債 | 37.0 | 25,228 |
地方債 | 24.0 | 16,335 |
政府保証債 | 5.0 | 3,409 |
金融債 | 7.6 | 5,207 |
社債 | 14.7 | 10,045 |
財投債 | 11.6 | 7,914 |
計 | 100.0 | 68,138 |
給付水準の体系および「予定利率」
給付水準の体系は、相互扶助の精神に基づき、事業をやめたとき等にお受け取りいただく共済金の額を高めに設定し、任意性の高い解約手当金の額を低めに設定しています。
本制度の「予定利率」は、1.0%となっています。
「予定利率」とは
本制度では、預かった掛金を原資に一定の運用収入を見込んで共済金や解約手当金の額を設定しており、この運用収入の見込みを算出する際の利回りを「予定利率」といいます。
小規模企業共済は、利率が低いので、これだけで将来が安心できるというものではありません。どちらかというと、銀行預金よりはましという程度のものです。従って、資産運用全体の中で、低リスクで安定した収入源として、一定程度利用するという方針が良いと思います。ただし、税制上の優遇措置がありますので、表面的な利率以上に、お得な商品です。