新型コロナウイルスで、各国が財政出動、金融緩和を押し進めている中、インフレが懸念されています。
一般会計歳出は128.3兆円
下のグラフは一般会計における歳出・歳入の状況です。一番上の赤線が一般会計歳出で、令和2年は128.3兆円に跳ね上がっています。その下の青い線が一般会計税収で、63.5兆円です。下の方の棒グラフのうち、水色が建設公債、ピンクが特例公債(建設国債を発行しても、なお歳入が不足すると見込まれる場合には、政府は公共事業費以外の歳出に充てる資金を調達することを目的として、特別の法律によって国債を発行することがあります。)です。今年は補正予算で新型コロナウイルス対策を講じました。
努力していたドイツ、しなかった日本
現在のGDP比債務残高は下のグラフの通りです。一番上の赤い線は日本です、240%です。一番下のドイツは、世界大戦後にハイパーインフレで苦しんだ経験を踏まえて、財政削減に励んできました。ドイツでは、今回の新型コロナウイルスで、アーティストにも緊急助成金を支給したことが報じられていますが、それは今まで財政縮減を続けてきたからできるのであって、日本は、今まで以上に厳しい状態に陥っています。外国の良い面だけを見るのではなく、過去の努力にも目を向けるべきです。
富裕層の行動
今後インフレが起きると、借金をしている日本政府は負担が減り、楽になるでしょう。その反面、現金、銀行預金等、価値が減少する資産を保有する人は大変です。それを承知している富裕層は、インフレになっても安全でいられるために、自己資産を他の資産に移しています。
逃避先の分散化
逃避先の資産は、株式、金、不動産です。このうち、金については昨日まで勉強してきました。株式については、回復のスピードが速すぎて不安を持つ人もいるため、金に逃避させている人もいます。
不動産の現状確認
不動産については、インフレに対するプラス効果と、インバウンドの衰退、東京オリンピック中止懸念、リモートワーク推進を受けたマイナス効果が混在しています。そこで、現状を確認したいと思います。
下のグラフは東証REIT指数です。
2003年4月に1,015、2020年8月には1,734になています。70%増加しているものの、株式や金と比べると見劣りします。
東証REIT指数
東証REIT指数とは、東京証券取引所に上場しているREIT(不動産投資信託)全銘柄(2016年9月末現在、57銘柄)を対象にした指数(インデックス)で、時価総額(発行済口数×投資口価格)に応じた組入れ比率になるように作られています。日本のREIT市場の状況を把握するために東京証券取引所が算出・公表している指数です。
REIT(不動産投資信託)
「REIT」は「Real Estate Investment Trust」の略語で、実物の不動産に投資する投資信託です。実物の不動産に投資するといっても、不動産の値上がりで収益を狙うというよりは、保有不動産から得られる賃貸料収入を主な収益源としていて、その経費差引後の収益を分配します。また日本のリートは、Japanの「J」をつけて、Jリートとも呼ばれています。
時価総額上位のREITの表です。最高が8000億円台です。
順位 | 証券コード | 投資法人名 | 時価総額(百万円) |
1 | 8951 | 日本ビルファンド投資法人 | 886,736 |
2 | 3283 | 日本プロロジスリート投資法人 | 882,774 |
3 | 8952 | ジャパンリアルエステイト投資法人 | 785,414 |
4 | 3281 | GLP投資法人 | 706,979 |
5 | 3462 | 野村不動産マスターファンド投資法人 | 659,185 |
6 | 8984 | 大和ハウスリート投資法人 | 629,154 |
7 | 3269 | アドバンス・レジデンス投資法人 | 448,740 |
8 | 8954 | オリックス不動産投資法人 | 424,212 |
9 | 8953 | 日本リテールファンド投資法人 | 393,488 |
10 | 3249 | 産業ファンド投資法人 | 385,616 |
都心は需要停滞?
最近の東証REIT指数は、新型コロナウイルスの国内感染者が高止まりしていること、米中の覇権争いが激化激化していること、外国人訪日客が当面見込めそうもないことから、好調にはなっていません。特に都心では、あまり大きな需要を期待できそうもありません。しかしながら、日本銀行の金融緩和が当面は継続しそうだという背景をもとに、すぐに大きく下落はしそうもありません。
東京のビジネス地区の不動産の動向を三鬼商事のデータを基に見てみましょう。ビジネス地区とは、千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区です。
空室率
空室率は2月まで下がっていましたが、3月から上がり始め、5カ月連続の上昇となりました。2020年7月には2.77%になりました。
平均賃料
一方で、平均賃料は79カ月連続で上がり続け、2020年7月には23,000円に達しています。
都心の周辺に上昇の可能性
都心の不動産価格については、2020年初めまで上昇要因がどんどん積み重なっていましたが、新型コロナ以降、下落要因が増えました。特に、テレワークは大きな動きですから、都心の価格は今後あまり上がらないかもしれません。一方で、東京は、エンターテインメント、教育、ショッピングなどの点で圧倒的魅力がありますから、山手線の少し外側は、上昇の可能性があるかもしれません。