個別株式の天国
連れ合いも私も個別株式は持っていません。しかし、二人とも10年前では、従業員持株会で積み立てた個別株式を持っていました。私の場合、積立金の元金1,000万円だったのですが、ある時株価が上昇して2,500万円になったので、全額を売却して1306(TOPIX連動型上場投資信託(ETF))に換えました。その直後に、日本銀行の異次元金融緩和政策が始まり、4,500万円に増えました。
個別株式の地獄
一方、連れ合いは、自分の勤めていた会社が倒産し、株式の価値が無くなってしまいました。積み立てた元金は400万円で、配当や株主優待の恩典はありましたが、300万円以上は損失になったはずです。
個別株式には十分すぎるほどの注意が必要
個別株式は、このようにリターンもリスクも大きいので、私たちは、従業員持ち株以外には手を出したことがありません。もし個別株式を始めるのなら、基本をETF(上場投資信託)において、趣味の範囲で少額を、十分に分散された複数銘柄でやった方が良いと思います。
個別株式、ETF、非上場投資信託の特徴をまとめた表です。
株式 | ETF(上場投資信託) | (非上場)投資信託 | |
対象資産 | 株式 | 株式、債券、不動産(REIT)、商品(コモディティ)等 | |
取引所に上場しているか | 上場 | 非上場 | |
取引価格 | 取引所で取引されている市場価格 | 1日1回算出される基準価額 | |
取扱金融機関 | 証券会社 | 証券会社、銀行、運用会社等 | |
購入時コスト | 売買手数料 | 販売手数料 | |
保有時コスト | なし | 信託報酬等の費用 | |
売却/解約時コスト | 売買手数料 | 信託財産留保額 | |
積立投資 | 株式累積投資で可能 | 多くの販売会社で一般的に可能 | |
分散投資 | しづらい | しやすい | |
信用取引 | 可能 | 可能 | |
その他 | 議決権・配当金・株主優待 | 分配金 |
いくつか特徴的なことを説明します。
超低金利時代に債権ETFは疑問
ETFの対象資産は、株式だけでなく、債券、不動産(REIT)、商品(コモディティ)があります。債券は、数パーセントのリターンがあれば良いのですが、現在は超低金利の時代ですから債券自体に魅力がありません。それどころか、今後急激なインフレになった場合には、金利が上昇し、債券価格が暴落する可能性が十分あるので、危険な商品かも知れません。リターンが低くてリスクが高いのであれば、買ってはいけない商品ということになります。ただし、日本においては、過去数十年にわたって低金利が続いてきたので、その期間データをもとに計算されるリスクは低くなっています。
個人向け10年変動国債は低リスク
なお、債券の中でもETFではなく、個人向け10年変動国債はインフレになっても、変動金利だから、受取利子が増えますから、債券ETFほどのリスクは無いかも知れません。ただし、絶対に安全という商品は世の中にありません。財務省も安全と言っていますが、戦時中に日本政府も同じことを言っていて、戦後20,000%のハイパーインフレで、国債は紙切れになりました。
主要ETFならNHKで毎時相場を放送
取引価格は、取引所で取引されている市場価格ですから、毎日でも確認できますし、TOPIXや日経平均のETFであれば、NHKで毎時相場を放送してくれるので、安心できる身近な商品です。それに比べると、連れ合いや私のつみたてNISAの商品の基準価格は、普段は確認しませんので、意識することがありません。価格の変動を知らないことは、悪いことではなく、むしろ良いかも知れません。
最も成績の良かった個人投資家の特徴
フィデリティ証券が調査したところ、最も成績の良かった個人投資家の特徴は、自分の株のことを忘れてしまった人だそうです。つまり、売り買いせずに放って置くことが最も良いということです。特に、ETFや投資信託は個別株式と違って倒産することがありませんから、安心して放って置くことができるのです。
銀行の投資信託は非常に危険
株式、ETFの、取扱金融機関は証券会社だけですが、投資信託は証券会社以外に銀行でも取り扱っています。しかし、私が実際に、三菱銀行の窓口を訪問した時には、高いコストの投資信託ばかりが並んでいました。
対面証券の投資信託もほとんどが危険
証券会社でも、野村、大和などの対面証券は高コストの投資信託がほとんどです。購買手数料がゼロ、信託報酬が0.2%以下の投資信託なら安心です。運用会社が直接個人投資家向けに売っている商品も有りますが、販売手数料、信託報酬が高いのでやめるべきだと思います。
独立系投信を相対的に高コストしたインデックスファンド
「さわかみファンド」(さわかみ投信)、セゾン投信(2007年)、レオス・キャピタルワークス(2008年)、コモンズ投信(2009年)、鎌倉投信(2010年)など、独立系運用会社が直販投信を販売していますが、2010年代に低コストのインデックス投資信託が登場し、コスト引き下げ競争を繰り広げている中では、魅力を感じません。
個別株式は保有コストがゼロだが
信託報酬は、低くなってきたとは言え、株式の保有コストがゼロであるのに比べれば、厳然としてあります。しかし、個別株式の場合には、急落した時に損切りした方が良いのか、それとも、持ち続けた方が良いのか、を迷うことになります。もし、持ち続けて倒産したり上場廃止になると、価値が無くなるからです。それらの煩わしさを、僅かの信託報酬で解消してくれると考えれば、やむを得ないコストとも言えるでしょう。
株主優待は趣味の世界の話
株式によっては株主優待がありますが、これは、趣味の世界の話で、投資とは直接関係ありません。逆に、例えば、日本航空が割引券をくれたので保有し続けた人が、2010年の倒産によって大きな損失を被った場合も有ったでしょう。趣味と投資は切り分けた方が良いと思います。
自動的に再投資する必要がない場合も有る
分配金については、投資信託は自動的に再投資してくれるものが多い一方で、ETFは一旦MRFや外貨MMFで受け取り、その際課税されるというデメリットがあります。しかし、MRFや外貨MMFを現金に換えて生活費や旅行代金に充当したり、他のETFに再投資するきっかけにもなりますので、人によってはデメリットばかりではないと思います。