Ⅰ 現状 1. 資産運用業を取り巻く環境:
(3)日本の資産運用業の状況
日本でも、米国ほど極端な資金流入は起きていないものの、パッシブ投信やETFの残高・割合は増加傾向(図表A)。
この間、パッシブ投信の信託報酬も低下が進行。アクティブの信託報酬も足許では低下傾向にあるが、海外物を中心とするファンドオブファンズ投信の増加等により、低下は緩やかとなっている(図表B)。
国際的な競争環境が厳しさを増す中で、日本の資産運用会社も厳しい競争にさらされつつある。
Ⅰ 現状 2. 日本の公募投信の状況:
(1) アクティブ投信のパフォーマンス上の課題
• 資産運用会社が提供する商品のうち、国民の資産形成において重要な商品の一つである公募投信について、全ファンドベースで過去5年間のパフォーマンスをみると、アクティブ投信の信託報酬控除後シャープレシオ(平均0.20)は、パッシブ投信(平均0.40)を下回る(図表A)。
(注)シャープ・レシオ
リスク(標準偏差)1単位当たりの超過リターン(リスクゼロでも得られるリターンを上回った超過収益)を測るもので、この数値が高いほどリスクを取ったことによって得られた超過リターンが高いこと(効率よく収益が得られたこと)を意味します。異なる投資対象を比較する際に、同じリスクならどちらのリターンが高いかを考えるときに役立ちます。
このシャープ・レシオは、リスク調整後のリターンを測るものとして、投資信託の運用実績の評価などにも利用されます。
信託報酬控除前のシャープレシオをみても、アクティブ投信(平均0.29)は、総じてパッシブ投信(平均0.42)を下回る。日本のアクティブ投信は、市場平均を上回る超過収益を上げるという目標を達成できていないものが多い(図表B)。
但し、過去5年間のパフォーマンス上位の公募投信は、独立系の資産運用会社が運用しているアクティブ投信となって
いるほか、大手資産運用会社が提供するアクティブ投信の中にも、中長期に良好なパフォーマンスを実現している例が
見られる。
Ⅰ 現状 2. 日本の公募投信の状況:
(2) 米国投信とのパフォーマンス比較 ①全体
日本と米国の公募投信について、市場環境や運用規模等が異なるため、単純比較することはできないものの、過去5年平均のシャープレシオや累積リターンからは、米国投信のパフォーマンスの絶対水準の高さがみてとれる。
日米両国とも、過去5年平均のシャープレシオや累積リターンは、全ての分類においてアクティブがパッシブを下回っている。もっとも、両者の差は、米国に比べ日本の方が大きい。
日本の公募投信については、資産分類別に過去5年平均のシャープレシオや累積リターンをみると、国内株式のアクティブについては、比較的パッシブに近いパフォーマンスとなっているが、先進国株式やグローバル株式については、パッシブとの差が大きい。
(注) エクスペンスレシオ
エクスペンスレシオとは、ファンドの平均資産残高に対する運用その他の経費の比率(%)をいい、決算毎に見直され変動します。
A. 日本籍公募投信のパフォーマンス
すべての分類でパッシブがアクティブを上回っています。
分類 | 5年シャープレシオ平均 | 5年累積リターン平均((%) | エクスペンスレシオ平均(%) | ファンド数 | 期初純資産額(億円) |
全ファンド(パッシブ) | 0.40 | 22.60 | 0.44 | 450 | 66,366 |
全ファンド(アクティブ) | 0.20 | 9.70 | 1.49 | 3 | 555,260 |
国内株式(パッシブ) | 0.50 | 40.00 | 0.49 | 131 | 20,670 |
国内株式(アクティブ) | 0.40 | 30.90 | 1.57 | 526 | 60,686 |
先進国株式(パッシブ) | 0.47 | 37.00 | 0.38 | 63 | 7,747 |
先進国株式(アクティブ) | 0.23 | 12.00 | 1.79 | 415 | 76,969 |
新興国株式(パッシブ) | 0.24 | 15.20 | 0.54 | 22 | 751 |
新興国株式(アクティブ) | 0.20 | 12.80 | 1.96 | 220 | 24,766 |
グローバル株式(パッシブ) | 0.44 | 32.60 | 0.26 | 2 | 47 |
グローバル株式(アクティブ) | 0.17 | 8.20 | 1.78 | 34 | 12,014 |
B. 米国籍ミューチュアルファンドのパフォーマンス
ここでもパッシブがアクティブを上回っています。
分類 | 5年シャープレシオ平均 | 5年累積リターン平均((%) | エクスペンスレシオ平均(%) | ファンド数 | 期初純資産額(億円) |
全ファンド(パッシブ) | 0.71 | 53.13 | 0.18 | 318 | 2,191,439 |
全ファンド(アクティブ) | 0.67 | 40.63 | 0.70 | 5,690 | 10,842,714 |
株式(パッシブ) | 0.73 | 60.97 | 0.18 | 202 | 1,803,657 |
株式(アクティブ) | 0.64 | 54.54 | 0.82 | 2,804 | 5,662,731 |
アクティブはパッシブより成績が悪い
このレポートでは上記のように、シャープレシオで比較したときに、信託報酬をとる前の状態ですら、パッシブ運用の投資信託は0.42なのに対して、アクティブ運用の投資信託は0.29であり、パッシブ運用の方が投資成績が良いということが分かります。更に、アクティブ運用の方が信託報酬手数料が高いため、それを加味すると、パッシブ運用は0.40、アクティブ運用は0.20で、更にアクティブ運用の成績は悪くなる。プロによるアクティブ運用は売買することでより成績を悪化させているが、悪化させたのに手数料をもらっているという状況にある。ひどい話です。ところがこのような事実を多くの人が知らず、相変わらずアクティブファンドを買い続けているのです。