◎今日のグラフ:国家公務員共済のポートフォリオ
改正前
国家公務員共済組合連合会は2015年に基本ポートフォリオを変更しました。改正前の構成割合は下のグラフの通りです。国内債券、つまり国債の割合が全体の4分の3を占めています。ちょっとコメントができないほど異常な数字です。国家公務員共済は国債の引き受け手だったのでしょうか。ほぼゼロに近い利回りの国内債券を保有して、投資と言えるのでしょうか。銀行預金と同じではないでしょうか。
改正後
そして、下のグラフが改正後の構成割合です。非常に常識的な割合だと思います。債権と株式という伝統的な資産だけで構成されています。株式は国内・国外合計で5割を占めています。個人のバランスファンドとして商品化しても、普通に販売できる、ごくオーソドックスな割合です。
手放した国債は日本銀行が引き受け
この割合自体は常識的な割合ですが、ここで驚くのは、改正前と改正後の構成割合のあまりの豹変ぶりです。黒田氏が日本銀行総裁に就任して、2013年4月に異次元緩和を始めました。ETFについては、年間1兆円買い増すことにしました。そして2014年10月31日の追加緩和で、ETFの買い入れを年間3兆円に増加しました。全く同じ日にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がポートフォリオの変更を発表しました。変更後のポートフォリオは、上記の国家公務員共済のポートフォリオと全く同じ割合です。つまり、GPIFで保有する国内株式は、日銀が価格を引き上げるから安心してたくさん買って下さいね、ということだと誰もが受け取ったでしょう。また、国債の割合を減らしても、つまり大量に売却しても日本銀行が引き受けるから暴落しないということだと思いました。GPIFも、その翌年の国家公務員共済も、あるべきポートフォリオを実現できたのですから、それに関しては良かったのですが、そのしわ寄せがすべて日本銀行に行きました。そして、それから2年以上たった今でも、日本銀行は国債とETFを買い続けています。
財政赤字も日本銀行が引き受け
国債とETFは2018年だけでなく2019年に入っても買い続けそうです。その間、政府が借金を増やして、その分だけ日本銀行が紙幣を刷り続けていますので日本の中にあるお金の量は増えています。お金はどんどん刷れますから、財政再建の道もより険しくなってきて、ゴールは遠ざかるばかりです。しかし、永遠にお金を刷り続けるわけにはいきません。どこかで、刷るのをやめなければ大変なことになります。そして、ゼロ金利が終わりを告げた時に、国債の利払いの金額が膨張して財政再建は一層遠ざかります。
何かのきっかけでハイパーインフレの恐れ
アメリカやドイツのようにGDPに対する国債残高の割合が小さい国は、対応が可能ですが、放漫財政を続けている日本は収拾がつかなくなる恐れがどんどん高まっています。首都直下型大地震などのきっかけで、ハイパーインフレなどが発生する可能性が高まっていると思えてなりません。