PCR検査も金融資産も政府を信じていて良いのか

政府は国民の生命と財産を守る、と安倍総理大臣はよく言っていますが、本当にそうでしょうか。

相談の目安が見直し

5月8日、新型コロナウイルスのPCR検査に向けた相談センターへの相談の目安とされてきた「37.5℃以上の発熱が4日以上続く」「強いだるさや息苦しさがある」について、見直しました。厚労省は、これらを2月に公表しました。

「誤解だ」

加藤厚生労働大臣は「目安ということが、相談とか、あるいは受診の一つの基準のように(とらえられた)。我々から見れば誤解でありますけれど…」と、あくまで基準ではなく目安のつもりだったと発言しました。

犠牲者

この発言に対し、「あれだけ病院に行くなと言っておいて、誤解の訳がない。非は絶対に認めない。この基準でどれだけの方が犠牲になったことか」、「平然として変えて、誰も責任はとらない。政権の手口に国民が慣れてしまったとしたら、また同じことが繰り返されるだろう」という意見も出ました。

PCR検査数

PCR検査については、2月から繰り返し検査件数が少ないことが問題となって来ました。

必要な人が受けられない

新型コロナウイルス対策を検討する政府の専門家会議副座長の尾身茂氏(地域医療機能推進機構・理事長)も、国内におけるPCR検査数が諸外国に比べて少なく、「必要な人が受けられるようにするべきだと専門家はみんな思っている。今のままでは不十分。早い時期から議論したがなかなか進まなかった。これにはフラストレーションがあった」などと言及しました。

6個のポイント

更に尾身氏はは、今後PCR検査を拡充するにあたり困難になっているポイントとして以下の6点を挙げました。

(1)保健所の業務過多(尾身氏は職員がかなり減らされてきた点も問題視)
(2)入院先を確保する仕組みが十分に機能していない地域があった
(3)地方衛生研究所は人員削減の中で通常の検査業務をしなければならなかった
(4)検体採取者、マスクや防護服など感染防護が圧倒的に不足している(尾身氏は、このため医師らが検査に二の足を踏む原因になると補足)
(5)一般の医療機関が検査をするには都道府県と契約する必要があった
(6)民間検査会社には運ぶための特殊な輸送機材がなかった

これらの項目については、テレビなどでも2か月以上前から繰り返し議論されてきたことなので、この大事な期間を無駄にしてしまいました。

秋以降の第2波に備える

この8項目は、いちいち腑に落ちることばかりです。早く改善して、今年の秋以降にやって来るであろう第2波、第3波に対する措置を講じてほしいものです。

日本人の生命以外に守ってくれなさそうなのが財産

債務残高/GDP比の推移(国際比較)はこのグラフの通りです。20世紀の間は、先進国並みの債務残だけでしたが21世紀になってから急激にこの比率が上昇しました。

1997年金融危機

1997年に日本が金融危機に襲われて経済が収縮しました。この年、三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券の破綻、長銀、日債銀の一時国有化がありました。そして小渕恵三内閣の頃から本格的な財政出動が始まりました。

債務残高が膨らむ一方で、インフレは実現せず、デフレになりました。

デフレ―ション

下のグラフは消費者物価指数の推移です。2014年までデフレが続きました。債務残高が増えたうえにデフレが続いたので、政府の重荷は一層つらいものになりました。しかし、国民の資産運用としては、銀行預金を続けていた方が、お金の実質的価値が上がるという状態が続いたのです。

最近の状況を確認しましょう。数字は前年同月比の%です。

総合 生鮮食品を
除く総合
生鮮食品およびエネルギーを除く同号
2017年 0.5 0.5 0.1
2018年 1 0.9 0.4
2019年 0.5 0.6 0.6
2019年12月 0.8 0.7 0.9
2020年1月 0.7 0.8 0.8
2020年2月 0.4 0.6 0.6
2020年3月 0.4 0.4 0.6

前年比0.6%増

生鮮食品およびエネルギーを除く消費者物価指数は、最近、前年比0.6%程度で推移しています。緊急事態宣言の発せられた4月のデータはまだ入手できませんが、東京都の消費者物価指数は、前月より0.2上回っている状況です。

第1弾は25兆円、第2弾は?

今までの政府債務残高の上昇に加えて、今年は緊急経済対策が実施されます。今国会では総額25兆円超の補正予算が成立したばかりですが、5月に入って緊急事態宣言の延長を受け、さらなる対策が必要とされています。しかも、怖いのは、秋以降の第2波、第3波ではないかと言われています。どこまで債務残高が膨らむか分かりません。

金価格が1オンス1200→1700ドル高騰

最近1間、金の価格は1オンス1200ドルだったのが、1700ドルまで上昇しました。一方で、ダウは29,000ドル台から24,000ドル台まで下落しました。株価はいずれ持ち直すでしょうが、問題はインフレ率です。特に、債務残高の大きい日本が、日本人としては不安です。

1ドル1円⇒106円のインフレ

日本円は明治の初めに1ドル=1円でしたが、現在は1ドル106円になりました。戦後は1ドル=360円の時代が長く続きました。1940年代後半、銀行預金、国債を持っていた人は、価値がほとんどゼロになりました。そうなることが分かっていたにもかかわらず、政府は大丈夫だと言い続けたのです。

生命と財産は自分で守る

国は、生命と財産を守ってくれると思っているのは幻想だと思います。日本銀行が目標としているインフレ率2%も、それが実現すれば、毎年2%ずつ銀行預金の実質的価値が毀損されるわけですから、国民の財産を2%ずつ減らしますと言っているのと同じです。