厚切りジェイソン「子どもに苦労させないために、自分が必死に稼ぐのは間違い」
2023年08月18日
家族がお金に対して同じ価値観を持つ
――楽しく節約を続けるために、どんな工夫をしていますか?
【厚切り】僕は節約が楽しいからなぁ(笑)。趣味なんです。つまらないと思ったことがない。買おうとしたものが、思った以上に安く手に入ったら、本当に嬉しくて!
この前、いつも200円で買っている豆乳が、174円で売られていたんです。お店の棚に並んでいるだけ全部買って、それを家で積み上げて、うっとり眺めました(笑)。
妻もよく「こんなに大きな大根が100円だったよ!」なんて教えてくれるので、「すごいじゃん!」と喜び合っています。次女もそういう買い物が好きみたいで、よく家族で盛り上がっていますね。
――ご家族で節約が趣味なんですね(笑)。反対に、家族の中で「こういう無駄遣いはダメだよ!」などとけんかになることはないんですか。
【厚切り】価値観が同じなので、ないですね。
資産形成には、家族、特にパートナーと同じ価値観を持つことが、とても大切だと思います。これから結婚する人は、相手とお金の価値観が合うかどうかを絶対に確認したほうがいい。
――そこが合わないまま結婚してしまった人は、どうすれば…。
【厚切り】離婚だよ!
――(笑)。価値観を合わせる方法はないですかね?
【厚切り】無理です。早めに離婚したほうがいい(笑)。
そもそも、パートナーとちゃんと本音で話し合っていますか? お金のことに限らず、何か思うことがあれば、パートナーに伝えないと。そのとき、感情をぶつけるんじゃなくて、どうしてそう思うのか、理由をしっかり相手にわかるように伝えることが大切です。
そういったコミュニケーションは資産形成以前に大切なことですよね。できないなら、遅かれ早かれ価値観が合わなくなって、やっぱり離婚することになると思います。
――家族とお金の話でいうと、「子どもにお金で苦労させたくない」と考える親は多いですが、これについてはどう思いますか?
【厚切り】それは正しい考えだと思いますが、「子どもに苦労させないために、自分が頑張って働いて、お金を稼がないと」という意味なら、完全に間違っていますね。
子どもにお金で苦労をさせたくないのなら、お金についての考え方や価値観を伝えることが一番大切。それをしないで、稼いだお金を渡すだけなら、いくら親が頑張ったところで、子どもにお金について考える力は身につかないですよ。
全員が同じ生き方を目指さなくていい
――こういうことを聞くと、また叱られそうですが(笑)、節約しようと思っているけれど、途中で面倒になってなかなか続かない、という人もいると思います。
【厚切り】僕は節約するのが趣味だから、まったく面倒ではないし、むしろ楽しくて仕方ないんです。少ないもので安く楽しく暮らせると快感なんです。
人によって趣味も好みも性格も環境も違うから、みんなに「節約しようよ」なんて言うつもりは、これっぽっちもないんです。
みんながみんな必要最低限のものだけしか買わなかったら経済はまわらないし、全員が同じ生き方を目指したら、多様性がなくなって、世界がつまらなくなってしまう。
「自分にとって、これは価値があることなんだ!」と胸を張って言えるなら、それは素敵なお金の使い方ですよ。
僕が言いたいのは、「節約しろ、我慢しろ」ということではなくて、「自分の価値観や生き方に合うことに大切なお金を使っていきましょう」ということなんです。
本当は必要でもないし、欲しくもないものを買うために自分の時間とお金を使うことほど、もったいないことはないですからね。
資産という安心があるから目の前の仕事に集中できる
――お金や投資について真剣に考えている人とそうでない人では、人生はどう変わると思いますか?
【厚切り】現役で働き続けている間は、そんなに変わらないかもしれませんが、無駄遣いを見直して、その間ずっと積み立て投資をやってきた人と、まったく何もしてこなかった人とでは、老後にとんでもなく大きな差がつくでしょうね。
僕の本の読者から、「積み立て投資を始めました」とか「自動販売機でペットボトルの飲み物を買うのをやめて、マイボトルを持ち歩くようになりました」なんて報告をもらうことがありますが、投資を始めて数年くらいでは、そんなに増えた実感はありません。
でも、20年、30年経ったら、どうなると思いますか?
例えば、無駄遣いをやめて浮いた10万円を年利5%の複利で運用できたとしたら、1年後の利益は5000円ほど。だけど、そのまま30年間放置して運用を続けたら、43万2194円になる。元金の10万円が4倍以上になる計算です。とんでもなく大きいですよね。
コツコツ積み立て投資を続けてきた人は、引退後も現役の頃と同じくらいのお金の使い方ができると思います。
だけど、年金だけしか頼るものがないと、生活水準を落とさなくてはいけない。それまで節約してこなかった人が、急に節約しなければならなくなる。これは、かなりしんどいことだと思います。
今の生活をずっと続けても大丈夫だという安心感は、それだけですごく価値がありますよね。
僕は今、芸能界で仕事をしていますが、この世界はコントロールできないことばかりです。1年後に人気がどうなっているのか、仕事があるのかどうか、まったくわかりません。
資産が充分にあるからこそ新しいチャレンジができるし、目の前の仕事に集中できる。不安定な世界で人生をコントロールできている感覚を持てるのは資産のおかげです。
経済的な自立をしたことで一番良かったと思えるのは、安心と自由のフリーパスポートを得たという感覚かもしれません。
――これから資産を使う予定はあるのでしょうか。
【厚切り】もちろん必要になったときには使っていきますよ。でも、もともと物欲はないし、欲しいものはほとんど手に入ったと思っているので、今のところは大きなお金を使う予定はありません。
それに、「資産があるなら使わなきゃもったいない」と考えること自体が、無駄遣いの定義そのものじゃないですか。別に使わなくてもいいんです。僕はすでに資産から多くの効用を得ているので。
数年後、3人の娘たちが大学に進学するときに大きなお金が必要になるかもしれないし、将来もしかしたら彼女たちが「起業したい」なんて言うかもしれない。今はどうなるかわからないけれど何かあったときに柔軟に対応できるのもお金の力だと思います。
厚切りジェイソン流 シンプルな”お金の増やし方” 「Why? 投資の前に支出を見直さないの?」
東洋経済オンライン 2024年4月1日
新NISAが始まり、日経平均株価は4万円時代へ。マイナス金利も解除され、経済や投資の環境は一変した。
『週刊東洋経済』4月6日号の特集は「株価4万円時代の『お金』超入門」だ。その道のプロ達を伴走者に、今こそ「お金」について考えよう。
お金との付き合い方や投資関連の本でベストセラーを連発するのが、IT企業の役員でタレントでもある、厚切りジェイソン氏だ。
【図で見る】厚切りジェイソン投資術「3つのポイント」
今回はジェイソン流の「増やし方」特別編として、投資について詳しく話を聞いてみた。
・投資の前に支出を見直せ
新NISAが始まって、個別株投資や投資信託を始めた人が多いようだね。だけど僕から言わせると「Why? その前に支出を見直さないの?」だよ。
支出を抑えると投資額を増やせるし、投資で所得を生み出すより費用対効果があるからだよ。わかるでしょ。
例えば、10万円で年利10%なら、1年で生み出すのは1万円。でも、携帯電話の通信料金プランを変更してごらんよ。通信費は大幅に下がり、わが家なら妻と2人で月3000円かからない。でも、家計調査によると一般家庭の通信費は月に1万5000円で、その差は1万2000円以上だ! 節約するだけでこれだけお金が浮くんだよ。
固定費は一度減らすとずっと節約の効果が続く。毎日タクシーに乗る、コンビニでパンを買う、外食、飲み会……これらを断つだけで人生は豊かになる。そうしないと、お金も貯まらない。だって、ケーキを食べながらダイエットしないでしょ。
投資の“3つの鉄則” ・投資は長期・積み立て・分散
僕の投資法はシンプル。「支出を減らす」「残ったお金を投資に回す」「待つ」の3つの手順を踏むだけ。ゴールを決めず、手数料の低いインデックスファンドに積み立て投資をしているんだ。
鉄則はズバリ「長期・積み立て・分散」しかないよ。理由……は決まっているだろ、この投資方法がいちばん再現性が高いからだよ。世の中には専門性が高い方法で成功している人もいるけど、それはその人だからできたこと。極端な言い方をすると、運がよかったのかもしれない。
どっちにしても、他人にはそれは再現できないでしょ。だって、宝くじの高額当選者の必勝法をまねたからといって、億万長者にはなれないじゃん。
株価指数などに連動するインデックスファンドになぜ投資するか、もうちょっと聞きたい? それは「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェットの影響が大きいよね。
彼は2007年に100万ドルを使い、インデックスファンドと、優秀なファンドマネジャーが運用するヘッジファンド、どちらが10年後に利益を出すか賭けをしたんだ。
結果はインデックスファンドの利回りが年7.1%、ヘッジファンドが2.2%で、バフェットが見事大勝利を飾ったんだ。
投資のプロでも市場が読めないのに、素人の僕が結果を出せるわけないじゃん。それで、インデックスファンド一択になったんだ。
CRSP USファンドとは ・米国株ファンドを選ぶ
僕が定期的にコツコツ積み立てているのは、米国株のインデックスファンド。全米株式市場の大型株から小型株まで約4000銘柄を時価総額で加重平均した指数である「CRSP USトータル・マーケット・インデックス」という株価指数に連動するものだ。
以前は、ニューヨーク証券取引所やNASDAQ(米店頭株式市場)に上場している企業の中から主要500銘柄を選び時価総額で指数化した「S&P500」に連動するインデックスファンドに投資していた。
でも、中小企業までカバーするCRSP USに魅力を覚えて変えたんだ。
僕に米国で起業した経験があることは知っている? 投資家にもたくさん接したよ。米国人はスタートアップ投資が大好き。もちろん、日本人以上にだ。
投資家のバックアップを受けて、若い企業が飛躍的に成長するチャンスがあるからこそ、CRSP US連動型のファンドを選んだ。組み入れ銘柄が多く、分散投資にもなる。
最近はインド株や半導体関連株に投資するファンドもあるけど、それは分散投資とはいえないから、流行しても僕は手を出さないと思う。
・結局はグローバル投資
米国株だけが対象なら分散投資にならない? それは誤解だよ。だって、僕たちが使うパソコンにはマイクロソフトのOS(基本ソフト)が入っていて、携帯はアップルのiPhone。Googleで検索する。日常的に使っているものは米国発のものだけど、それらの会社は日本だけじゃなくて、ヨーロッパ、インドにも進出している。米国の主要銘柄に投資するというのは、実はグローバル分散投資と変わらないんだ。
ダウ平均が算出され始めた1896年から現在までを振り返ると、ブラックマンデー、リーマンショックとか、何度も暴落したけど、米市場は復活し、結局は右肩上がり。それが米国株一択の理由だね。
投資信託は「優秀な部下」 ・コストを見落とさない
インデックスファンドにはいろんな商品がある。対象とする指数と運命共同体なので、何を選ぶかはちゃんと吟味しようよ。それに、購入時や保有時、売却時にかかる手数料は販売会社や商品ごとに違うから、低コストにこだわることが大事。S&P500のインデックスファンドでも、保有時に支払う信託報酬は2%台から0.03%と幅広い。対象とする指数が同じなら商品の中身はほぼ一緒だから、コストがいちばん安いものを選ぶのは当たり前だぞ!
ずっと持ち続けることも大事だ。暴落しても感情的になって手放すのはダメ。日本人なら「長期」という漢字を頭に焼き付けておいて。だって、投資信託を持っているということは、優秀な部下が何人もいるのと同じだ。そんな人たちを何でクビにするの?
繰り返しておくよ。これはあくまで僕のやり方で、万人受けするかどうかは別の話。参考にはなると思うけど、ジェイソンが言ったからといって、鵜呑みにはしないでほしい。よく考えないとダメだぞ! 投資を理解し、自分に合ったやり方を見つけてね。コストや税金も要チェック。そして、最後のアドバイス、風邪はひくなよ! 健康じゃないと投資できないからさぁ。じゃ、バイバイ。