DC(確 定 拠 出 年 金 )制 度 が 改 正 さ れます。
- 2022 年 5 月 か ら:企業型DCの加入可能年齢が拡大されます。
- 2022 年 5 月 か ら:iDeCoの加入可能年齢が拡大されます。
- 2022 年 10 月 か ら:企業型DC加入者がiDeCoに加入しやすくなります。
- 2022 年 4 月 か ら:受給開始時期の上限が75歳に延長されます。
これらのうち、「3.2022 年 10 月 か ら 企業型DC加入者がiDeCoに加入しやすくなります」について考えます。
現在、企業型DCに加入している方がiDeCoに加入するには、各企業の労使の合意が必要ですが、2022年10月から原則加入できるようになります。ただし、企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金、これらの合計額がそれぞれ、以下の表のとおりであることが必要です。また、企業型DCにおいて加入者掛金を拠出(マッチング拠出)している場合などには、iDeCoに加入できません。
企業型DCに加入している人が iDeCoに加入する場合 | 企業型DCと確定給付型(DB、厚 生年金基金など)に加入している 人がiDeCoに加入する場合 | |
企業型DCの事業主掛金(①) | 55,000円以内 | 27,500円以内 |
iDeCoの掛金(②) | 20,000円以内 | 12,000円以内 |
①+② | 55,000円以内 | 27,500円以内 |
DCは制度が複雑なので、まずその内容を確認します。
4つの制度
企業型DCは、大きく分けて次の4つのタイプがあります。
①選択制
シンプルな任意加入の選択制です。 確定拠出年金制度のひとつです。 現行給与の一部を原資とすることにより、財形年金のような任意加入の制度です。
⇒ 比較的最近の企業が導入しています。
②給与に上乗せして支給
対象者全員の給与に上乗せして支給します。 上乗せ分を確定拠出年金の掛金として拠出する場合、その掛金は福利厚生費(損金)となります(掛金を前払で現金支給すると給与とみなされます)。
⇒ 歴史のある(古い?)会社が多く導入しています。私の勤めていた会社もこのタイプでした。
③給与上乗せ支給+選択制
①と②の併用です。選択制による掛金に、会社から支給される掛金を上乗せすることで、より多くの資産形成を目指せます。 ①同様、加入者が選択する掛金は給与と見なされませんので、非課税および社会保険料の対象外となります。 全体で月額最大55,000円まで積み立て可能です。
⇒ 私の知り合いの会社もこの制度を導入していて、会社が支給する額は毎月1,000円です。
④マッチング拠出
会社から支給される掛金の額を上限として、従業員自身の所得から上乗せ拠出ができます。 これを「マッチング拠出」と言います。マッチング拠出による掛金は、選択制と異なり社会保険料算定の対象とはなりますが、全額所得控除されるため、税金はかかりません。
選択制とマッチング拠出の違い
① 掛金
- 選択制:掛金は全て事業主掛金です。
- マッチング拠出:掛金は全て加入者掛金です。(加入者掛金の拠出には、事業主掛金の拠出が前提となります)
② 税制
- 選択制:全額非課税となります。
- マッチング拠出:全額所得控除できます。
③ 社会保険
- 選択制:事業主掛金(福利厚生費)として会社が拠出するため社会保険料算定の対象外となります。
- マッチング拠出:給与として支給されたものを加入者掛金として加入者個人が拠出するため予め社会保険料が控除されています。
④ 掛金拠出限度額
- 選択制:月額55,000円です。ただし、その他企業年金がある場合は月額27,500円となります。
- マッチング拠出:月額27,500円です(ただし、事業主掛金と合算して月額55,000円、かつ事業主掛金の金額を超えない範囲での選択となります)。 その他企業年金がある場合は、月額13,750円です(ただし、事業主掛金と合算して月額27,500円、かつ事業主掛金の金額を超えない範囲での選択となります)。
⑤ メリット
選択制
a.掛金が非課税ということに加え、社会保険料の算定基礎からも外れる
b.会社負担分の金額によらず、全体で55,000円までの範囲であれば、加入者は好きな金額を積み立てできる。
マッチング拠出
a.掛金は全額所得控除の対象
以上が確定拠出年金の現行制度でした。
ところで、選択制企業型年金が導入されている場合に、2022年10月の改正によっては、選択肢があります。
例えば、最大でDCを55,000円掛けられる企業にいて、現在20,000円のDC掛け金を社員が支払っている場合、その差額35,000円を企業型DCを増額すべきか、あるいは、イデコに掛けるべきかという問題です。
企業型DCを55,000円に増額した場合、
- 所得税、住民税、社会保険料が減ります
- 厚生年金も減りますが、会社の掛け金も減るので、将来、年金を受け取るときに会社が掛けてくれなかった分だけ受給金額が減ります
- 一般的には、会社のインデックスファンドは、SBI証券等ネット証券のDC用インデックスファンドより少しコストが高くなる(おそらく0.1%未満)ので、わずかならが損になる
ということが想定されますが、税金や社会保険料は年収などによって変化するので、計算が難しそうです。たぶん、イデコに回すよりは、企業型DCを増額した方が良さそうな気がしますが、どちらにしても大差ないという気もします。