<昨日の続き>
――個別株は買わないのですか?
【パトリック】投資をし始めた頃、個別株を買って大やけどをしたことがあるんです。スタンフォード大を出た友人の一人が、IT株で大儲けしていたんです。うらやましいなと思って、僕も色々買いました。
ところが1999年にITバブルが崩壊。ビビって全部売ってしまったんです。その友人に株価が大きく下がってしまったことを半ばなじるように報告したところ、「まだ売ってなかったの?」と言われました(笑)。友人は利益が出たところでとっくに売ってしまっていたんですね。
専業の投資家は一般投資家とはけた違いに情報を持っていますし、センスがある人もいる。この出来事で、自分だって個別株で儲けられると傲慢になるよりも、投資に関して僕はあくまで堅実に、謙虚でありたいと思いました。それによく考えると株の取引って裏があると思いません?
――裏、ですか?
【パトリック】僕がA社の株を買おうとするとき、誰かがA社の株を売ろうとしているわけです。なぜ売るんですかね? あるいは僕がA社の株を売る。喜んで買う誰かがいるわけです。
なぜ買うのか?「へえ、あなた、この株、売るんですか。これから上がるのに」とほくそ笑んでいる人がいるんじゃないかなって、考えてしまうんですよね(笑)。
――なるほど。
【パトリック】投資の神様と言われるウォーレン・バフェットすらインデックスファンドへの投資を勧めていますからね。僕の投資に対する考え方は非常に堅実です。ピラミッドで説明すると、投資をするには、まず収入と健康が大前提。ここをしっかり固めないと投資はできません。
――ピラミッドの土台ですね。
【パトリック】はい。そのうえで、リスクの低い債券を買う。基盤ができたら株式のインデックスファンドを買って資産を増やし、最後に余剰金を使って、遊びで少しだけ個別株を買ってもいいかな、という考え方です。要するにリスクごとにピラミッド型になっているわけです。
ただしこれは僕の考え方なので、すべての方にパックン流の投資が当てはまるとは考えないでくださいね。
20代で買ったジュースが70代で4800円に変わる!?
――パトリックさんは現在53歳ですが、老後に向けてどのような資産運用を考えていますか?
【パトリック】僕は幸い健康なのでまだ働くつもりですが、あと10年くらいしたら、株と債券の割合を5分5分に持っていって、より安全な投資にシフトしていくかもしれませんね。基本的に、老後は元本に手をつけず、配当や利息、不動産収入で暮らしていけるようにしたいと思っています。
――理想的ですね。そうなるために今からでも40代・50代の読者ができることは何かありますか?
【パトリック】僕は「老後計算機」を常に頭の中に持ち歩くことをお勧めしています。
――「老後計算機」?
【パトリック】今目の前のその消費を投資に回したら、老後いくらになるかをパパっと計算できる計算機です。例えば、今20歳の人が150円のペットボトルのジュースを買ったとします。この150円を利回り7%で運用したら、70歳のとき、いくらになっていると思いますか?
――すぐには計算できませんね。いくらでしょう?
【パトリック】7%の利回りなら、10年ごとに倍々になっていくと覚えておいてください。つまり30歳には300円、40歳で600円、50歳で1200円、60歳で2400円、70歳では4800円です。
――おお!
【パトリック】だから僕は若い人がジュースを買っているのを見ると、すぐ注意したくなる。「その150円は、70歳のあなたから4800円を奪っているのと同じだよ」と(笑)。
――なるほど。ただ、今40代・50代だともう遅くはないですか…。
【パトリック】そんなことはありません。今50歳の人が150円のジュースの代わりに水道水を飲んだら、60歳でジュースが2本、70歳でジュースが4本飲めますよ。
それに子や孫の代まで資産を残すと考えたらどうでしょう? 50歳で150円のジュースを節約したら、50年後には4800円になっている。それだけのお金を子孫に残せるんです。
ゲーム感覚で楽しみながら節約生活をしてみよう
――最後にミドル世代に向けて、安心な老後を送るためのアドバイスをお願いします。
【パトリック】僕は子どもの頃、貧しかったので、お金のことを考えるとお腹が痛くなりました。そんな生活から解放されたくて、仕事、節約や投資を始めました。節約して、自分の収入よりはるかに低いお金で生活できるのが僕の強みです。
ですから皆さんも一度、家計を見直して節約生活を経験してみたらどうでしょう。
――実験的に節約生活を経験してみると思いがけない出費に気づくかもしれませんね。
【パトリック】1カ月でも2週間でも構いません。ゲーム感覚で実際の生活費よりうんと低い金額で生活してみる。それができると「これだけあれば暮らせるんだ」と自信になりますよ。それとお金と向き合うのは朝イチなど、できるだけ気力があるときがいいですね。
お金は幸福の源にすべきで、不幸の源にしてはいけません。「あ~大丈夫だ」とおおらかな気持ちになれるまで、節約と投資に励みたいですね。
【パトリック・ハーラン】1970年、アメリカ・コロラド州生まれ。ハーバード大学比較宗教学部卒業。93年、来日。97年、吉田眞氏(マックン)とお笑いコンビ「パックンマックン」を結成。NHK『実践!英語でしゃべらナイト』をはじめ、多くのテレビ番組に出演。「パックン」の愛称で、お茶の間から支持を集める。2012年より、東京工業大学非常勤講師として「国際社会とコミュニケーション」を担当。その後、俳優やコメンテーターとしても活躍している。著書に『ツカむ!話術』(角川oneテーマ21)、『逆境力』(SB新書)などがある。
パックンは2014年に45歳ごろで、都心に2億円の家を買ったようです。それについても『女性自身』の記事を見てみましょう。
パックン 都心“2億円豪邸”新築で「もう米国には帰らない!」
2015/05/06
春雨の中、都心の急坂を全力疾走する1台のママチャリ。乗っているのは、パックンマックンのパックン(44)だ。その自転車には、前後に幼い2人の子供がちょこんと座っている。パックンといえば、米国出身で名門ハーバード大学卒のインテリ芸人。04年に、モデルだった日本人女性と結婚。いまでは8歳の長男と6歳の長女の良きパパだ。
パックンは、1軒の建て売り住宅の前で自転車を止めると、販売員に熱心に話しかけ始めた。これはもしかして新居探し?ところが、近くで酒屋を営む店主が、意外な証言を――。
「パックンが新居探し?そんなハズはないですよ(笑)。だって、ほらまだ4月なのに屋上に鯉のぼりが飾られている、あの大豪邸。あそこがパックンのお宅なんですから。パックンはよくうちにも買い物に来てくれて『おじさん、いつも元気ですね』ってお世辞も上手(笑)。ご近所づきあいも100点満点なんですよ」
なんと、すでに都内に自宅を購入していたとは!そのパックン宅は、3階建てのまさに豪邸だった。この一帯は都心の一等地。近所の不動産会社によると、土地建物あわせて2億円近いだろうという。仕事を終えて帰宅してきた本人に直撃した。
「ああ、この家ですか? 僕ら一家の持ち家なんですよ。誰にも言ってなかったけれど、(建てたのは)一昨年だったかな?」
突然の取材にも、笑顔で答えるパックン。
「昔はハリウッドデビューという夢も実は持っていたんです。でも、今は日本で幅広く仕事をさせていただけてね。子供たちも家ではバイリンガルですし、ゆくゆくは2カ国を股にかけるような人間になってほしい。でも今は、アメリカに帰る気持ちはないんですよ」
そして、こう付け加えた。
「ここに家を建てて、自分の“本拠地”ができたなと思っているんです。僕はいつも『僕の国はもう日本ですよ』と言っています。だから、もうしばらく頑張らせていただいて、引退したらわからないけれど、少なくとも子供が大学に入るまでは日本でやっていきます」
日本人よりも日本を愛し、“ジャパニーズ・ドリーム”を達成したパックン。“第2の母国”にマイホームを構え、どっしりと根を張って生きていく決意が見えた――。