最低限身に付けるべき金融リテラシー10

2013年4月に金融庁金融研究センターは、金融経済教育研究会の研究会報告書として、「最低限身に付けるべき金融リテラシー」をまとめました。それについて、昨日に引き続き考えたいと思います。なお、この報告書について考えるのは今日が最終回です。

上から目線の報告書

昨日までで、4 分野・15 項目に集約した最低限習得すべき金融リテラシーについては終わりました。この金融リテラシーについては、学校段階、社会人・高齢者段階のいずれにおいても、体系的に習得させることが、効率的・効果的な金融経済教育の推進にとって重要であるとしています。

教えてやる態度

この報告書では「させる」という言い方をしていますが、随分と上から目線で、エラそうな物言いだと思います。自分たちがすべについて正解を持っていて、一般国民は知らないから教えてやる、という態度のように思えます。

事例研究

そのことについて、一つの例を挙げて、この報告書が正しいのかどうかを考えてみることにしましょう。

以下は、「③体系的な教育内容のスタンダードの確立」の中の「(b)社会人・高齢者段階」の記述です。

「社会人・高齢者段階では、自ら金融商品の真のリスクを十分に理解させるとともに、上記4.(1)②で述べた最低限習得すべき金融リテラシーを身に付け、自らの判断で選択できる能力を養うことが重要である。
例えば、運用について、将来に向けて金融資産を増やす必要性の高い若年社会人はある程度のリスクを有する金融商品を組み合わせることが適当と考えられる一方、個々人によって異なるものの、高齢者はより安全性の高い資産を中心とした資産構成とする等、年齢階層で適切な金融行動が異なることを理解させることが重要である。」

高齢者は安全性重視?

最後の高齢者に関する記述が問題でしょう。ここでも「させる」と言っていて、あくまで上から目線ですが、それはさておき、高齢者は安全性の高い資産を中心とした資産構成が正しいとしていることです。

この報告書では、「個々人によって異なるものの」という文章を挿入することによって、高齢者全員が安全性の高い資産構成にする必要はないと言いたいように思えますが、現実には、安全性に偏り過ぎているという問題があります。

資産運用の本

資産運用に関するどのような本を見ても、高齢者は、銀行預金や国債などの元本確保型資産を多めに持つことを推奨しています。

ロボアドバイザー

ロボアドバイザーで、データを入力すると、高齢者に勧める資産構成は、安全資産ばかりです。

それではこのような安全志向の資産運用は正しいのでしょうか。具体的な事例で考えてみましょう。

60歳代年金暮らし夫婦の場合

60歳代の年金暮らしの夫婦の場合です。夫は長年会社員として勤めていて厚生年金の第2号被保険者でした。65歳で引退し年金暮らしになりました。年金収入は年間220万円とします。妻は20代の頃会社員として勤めていましたが、結婚後は専業主婦になり第3号被保険者でした。年金収入は80万円です。

可処分所得は200万程度?

二人の年金収入合計は300万円です。この300万円は全額が可処分所得になるわけではなく、所得税、住民税、固定資産税、国民健康保険料、介護保険料等を支払わなければなりません。しかし、300万円の年金収入なら、贅沢をしなければ、何とか生活できる水準だと思います。

30年間のリスク

しかし、今後30年の間に、大きな病気やケガがあるかもしれませんし、老人ホームの世話になるかもしれません。家の修繕費で数百万かかったりすることなどを考えれば、今のうちに資産運用によって、いざという時の備えを充実したいと考えるのは、自然な発想です。

必要老後資金は2000万円?

昨年、金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書の高齢社会における資産形成・管理」の中で、老後資金が2000万円必要になるという報告があり、騒ぎになりました。現実には、2000万円を用意できない人もいますが、十分にできる人もいます。

投資のリスクと人生のリスク

もし、当面、年金収入だけで生活できるのなら、老後の蓄えのかなりの部分をリスク資産に投資できれば、10年後、20年後には、心配事が一つ減るかもしれません。銀行預金や国債でお金を遊ばせておくより良いのかも知れません。例えば、引退時に5000万円あれば、3000万円を内外のETFに投資する人がいるかも知れません。

安全性の高い資産が多い方が良いとは言えない

そのような考え方をする人がだめで、安全性の高い資産を中心とした資産構成とした方が良いとは言えないでしょう。そして、かなりの資産を持つような人は高齢者の中の例外的存在ではなく、かなりの割合を占めていると思います。

日本人高齢者の異常な安全資産指向

日本の家計の金融資産は、50%以上が現金・預金で、アメリカの13.4%よりもはるかに高い数字です。そして、巨額の金融資産を持っている人の多くは高齢者と言われています。

いきなり消費するより、投資後に消費

金融資産をいっぱい持っているのだから、高齢者はたくさんお金を消費して、経済を活性化しようという意見を耳にすることがありますが、将来不安を抱えている高齢者にとっては、現実的な意見ではないかもしれません。

ETF分配金を消費

もっと現実的な方法は、当面使いそうもないお金で、SPY(アメリカSPDRのS&P500のETF)や1306(TOPIX連動型上場投資信託(ETF))等のETFを購入することです。これらのETFは年間2%程度の分配金が支払われます。例えば3000万円を投資すれば、60万円の分配金を受け取ることができます。この分配金には当然税金がかかりますが、所得の少ない年金生活者の税率は低くなります。

キャピタルゲインも期待

分配金だけでなく、過去の推移をみればキャピタルゲインも毎年3~4%期待できるのですから、10年間使わないお金はETFに投資することがよいだろうと思います。私も連れ合いも、金融資産の8割以上をETFに投資しています。

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