あなたは中国の国債を買いたいですか?

中国が利下げ

中国人民銀行(中央銀行)は2021年12月20日、銀行の貸出金利の指標となる最優遇貸出金利(ローンプライムレート、LPR)の1年物を5ベーシスポイント(bp)引き下げました。引き下げは2020年4月以来1年8カ月ぶりで、景気減速に対応したものです。

恒大集団がデフォルト

一方、大手格付け会社S&Pグローバルは2021年12月17日、中国の不動産開発大手、中国恒大集団を正式にデフォルト(債務不履行)したと判定しました。S&Pは声明で「中国恒大集団とオフショア金融部門の天基控股は米ドル建てシニア債の利払いを実行しなかったとみなす」と表明。

様々な問題を抱える中国

他にも、新疆ウイグル自治区、チベット自治区、香港、台湾、南沙諸島の問題を抱え、米中対立が激しい中で、ほとんどの日本人は中国の国債を買いたいとは思わないでしょう。

中国より格付けの低い日本国債

ところが、日本の国債の格付けは世界において24位で、23位の中国より低いのです。ドイツは2回の世界大戦でハイパーインフレを経験したので、どんなに苦しくても歯を食いしばって、政府が借金をしないように努力しているのです。一方で、すぐに忘れてしまう日本人は、第二次大戦後に20000%のハイパーインフレをしたことを忘れてしまい、学校でも教えようとしません。10万円の給付やクーポンで騒いでいる場合ではありません。

RANK 国名 ムーディーズ S&P フィッチ
1  ドイツ Aaa AAA AAA
1  ルクセンブルク Aaa AAA AAA
1  オランダ Aaa AAA AAA
1  オーストラリア Aaa AAA AAA
1  スイス Aaa AAA AAA
1  デンマーク Aaa AAA AAA
1  スウェーデン Aaa AAA AAA
1  ノルウェー Aaa AAA AAA
1  シンガポール Aaa AAA AAA
10  カナダ Aaa AAA AA+
11  米国 Aaa AA+ AAA
12  ニュージーランド Aaa AA+ AA
13  オーストリア Aa1 AA+ AA+
13  フィンランド Aa1 AA+ AA+
15  フランス Aa2 AA AA
16  韓国 Aa2 AA AA-
16  香港 Aa3 AA+ AA-
18  ベルギー Aa3 AA AA-
18  英国 Aa3 AA AA-
20  チェコ Aa3 AA- AA-
21  エストニア A1 AA- AA-
22  アイルランド A2 AA- A+
23  中国 A1  A+  A+ 
24  日本 A1  A+ 
25  スロバキア A2 A+ A
25  スロベニア A3 AA- A
25  リトアニア A2 A+ A
28  サウジアラビア A1 A- A
29  マルタ A2 A- A+
30  ラトビア A3 A+ A-
31  ポーランド A2 A- A-
32  スペイン Baa1 A A-
33  ブルガリア Baa1 BBB BBB
34  ポルトガル Baa2 BBB BBB
34  ハンガリー Baa2 BBB BBB
36  インドネシア Baa2 BBB BBB
37  メキシコ Baa1 BBB BBB-
38  イタリア Baa3 BBB BBB
39  ロシア Baa3 BBB- BBB
40  インド Baa3 BBB- BBB-
40  ルーマニア Baa3 BBB- BBB-
42  キプロス Ba1 BBB- BBB-
42  クロアチア Ba1 BBB- BBB-
44  ギリシャ Ba3 BB BB
45  ブラジル Ba2 BB- BB-
45  南アフリカ Ba2 BB- BB-
47  トルコ B2 B+ BB-
48  エジプト B2 B B+
49  アルゼンチン Ca CCC+ CCC

グレイ・リノ:中国の不動産と日本の国債

灰色のサイ(Gray Rhino)とは、マーケットにおいて高い確率で大きな問題を引き起こすと考えられるにも関わらず、軽視されてしまいがちな材料を指します。草原に生息するサイは体が大きくて反応も遅く、普段はおとなしいのですが、一旦暴走し始めると誰も手を付けられなくなり、爆発的な破壊力を持つことから、比喩として用いられています。たとえば、不良債権や少子高齢化などは、直近ではそれほど問題視されていなくても、いずれ拡大して表面化すれば株価暴落を引き起こしかねない潜在的リスクです。2013年のダボス会議(世界経済フォーラム)で米国の政策アナリストのミシェル・ウッカー氏が提起し、注目されるようになりました。現在、グレイ・リノと言われているのが、中国の不動産と日本の国債です。

ブラックスワン

ブラックスワン(Black Swan)とは、マーケットにおいて事前にほとんど予想できず、起きたときの衝撃が大きい事象のことです。元ヘッジファンド運用者でもある研究者、ナシーム・ニコラス・タレブが2007年に刊行した著書『ブラックスワン(The Black Swan)』で言及したのがきっかけで、使われるようになりました。
従来、すべてのスワン(白鳥)は白色と信じられていましたが、オーストラリアで黒いスワンが発見されたことにより、鳥類学者の常識が大きく覆されました。これにちなんで、確率論や従来の知識や経験からは予測できない極端な事象が発生し、それが人々に多大な影響を与えることをブラックスワンと呼んでいます。具体例としては2008年のリーマンショック、最近では2016年6月の英国EU離脱、12月のアメリカのトランプ大統領当選などが挙げられます。また、2020年の新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、究極のブラックスワンと言えるでしょう。

ブラックエレファント

ブラックエレファント(Black Elephant)は、「黒い象」とも呼ばれ、いつかは起きるのが明白な問題(リスク)を放置し、それが現実となって大きな被害が起きてしまう事象をいいます。ピューリッツァー賞を受賞し、世界的に知られる米国のジャーナリストであるトーマス・フリードマン氏が2016年の著書「Thank You for Being Late(遅刻してくれて、ありがとう)」で地球温暖化などの問題を取り上げて「黒い象」だと指摘し、その後、環境団体などの間でよく使われる表現となりました。

グリーンスワン

気候変動をきっかけとし、これまでの経験やデータからは予測できないような金融危機が起こるリスクを意味した言葉です。

テールリスク

マーケットには大小さまざまなリスクがありますが、ほとんど起こらないはずのリスクによって暴落や暴騰が実際に発生することをテールリスクと呼びます。ちなみに、テールとは、騰落率分布の端や裾野を意味する言葉。突然の政権交代やテロなどが代表的なものです。