「敗者のゲーム」著者 チャールズ・エリス のインタビュー3

<昨日の続き>

イ:株式市場が上がるか下がるかを予測して売買しようとせずに、ずっと株式市場に居続けることが必要なのはなぜですか?

エ:人々は株式市場の先行きを予測しようとしてきたが、予測できた人はほぼ皆無で、それは長い歴史が証明している。もし過去20年にわたって市場の行方を予測できた人がいたとしても、その人が今後も20年間、同じように予測し続けられることはあり得ない。この点は私が保証する。株式市場の先を予測することは不可能。この点を認識して株式投資に望むことが必要だ。

イ:著書の中で、「株式市場が大きく上昇するのは、20年や20年と知った長期間でも限られた日数の間だけだ」と言及されています。その限られた日数に起きる相場の大幅な上昇を逃さないようにすることも、相場に常に居続けなければならない理由の一つでしょう。

エ:そうだ。市場の行方を事前に予測することは不可能だからね。往々にしてみんなが市場の行方を予測しようとするのは、何か悪材料が出て不安になった時だ。相場が下落しているときに人々は次のように言い合う。

「これから大変なことになる。相場の下落は続くに違いない」と。そうした心理自体が相場下落をもたらす。将来に悪いことが起きるとばかり考えるからだ。そして「もう投資を続けられない。保有投信を売却して現金比率を高めよう」と考える。

その結果、株式市場は大幅に下落し、押しつぶされたスプリングのように反発に向けた力がたまった形になる。そして、ある時点で世の中の味方が突然変わる。

「コロナ禍は確かに大変だけど、当初危惧されたほどには深刻ではないのでは?」とね。そして株式市場のスプリングは反発して上昇し、元のトレンドラインへと戻っていく。あるいはトレンドラインを超えて上昇する。そうなると市場関係者は一安心だ。

だが、ここで正常なトレンドライン自体は変化していない。その反発の度合いも急なものになる。上昇相場も同様だ。

「ハイテク株を持っていれば、値上がりが続き、大きく儲けられる」と人々は興奮する。そして突然「この上昇が続くとは思えない。無事でいられるはずがない」と言い出す。相場は下落して長期のトレンドラインに回帰する。

どの日、どの週、どの月に投信を売却して株式市場から離れるのが正しいのか?それを当てるのは困難だ。市場参加者がお互いの行動を推測し合っているからだ。それは鏡だらけの部屋にいるようなものだ。鏡が次から次に現れる。だから次の答えがシンプルで正しい。

「現在起きていることに一喜一憂してはならない。そうせず、長期にわたって株式投資を続けていれば、大きな利益を手にすることができる。」

インタビューは以上です。以下は要約です。

  • アクティブ型の投資信託を運用するマネジャーの報酬と運用コストを足し合わせると、それらを差し引いてもアクティブ投信が市場平均を上回る成績を上げるのは至難の業だ
  • 長期にわたって市場平均を上回るリターンを上げることは極めて困難
  • 極めて優れたプロだけがアクティブ運用を手掛けていて、その極めて優れたプロを見つけることは簡単なのだが、そのプロの中でも勝ち続けられる飛びぬけたプロを探し出すことが困難なのだ
  • 債権よりも株から得られるリターンの方が良いはず
  • 株価は今割高で、ここ数年は大きな伸びが望めないかもしれないが、10年や20年の長期では上昇し続ける
  • 金融資産について大きな決断を下す時に株式のポートフォリオだけを見るではなく、持ち家、年金、退職金など、資産の全体を見て判断しなければならない
  • 世界中の株の指数に連動する投信を選び、保有コストを下げることに注力すると良い。
  • 市場の行方を事前に予測することは不可能だから、株式市場が上がるか下がるかを予測して売買しようとせずに、ずっと株式市場に居続けることが必要
  • 現在起きていることに一喜一憂してはならない。そうせずに、長期にわたって株式投資を続けていれば、大きな利益を手にすることができる

「敗者のゲーム」についてのアマゾンの解説です。

出版社からのコメント

個人投資家にとって、なぜインデックス投資が優れているのか、そして時間を味方につける長期投資がどれほど効果的かを明快に解説した世界的名著。 NISAやiDeCoなどで積立投資を始める人はもちろん、すでに投資をしている人にとっても有益な内容です。

内容

投資で成功するというのは、難しい証券分析などの専門知識や経験を身につけることではなく、ましてや短期的に市場を出し抜こうとすることでもない。市場平均利回りを上回る(=市場に勝つ)ことがきわめて難しくなった今、最も簡単かつ結果の出る方法は、インデックス・ファンドを活用することである。全米累計100万部を超えるロングセラーの最新版。プロ・アマ問わず幅広い投資家に向けたメッセージとして、時代を超えて読み継がれる運用哲学のバイブル。

チャールズ・エリス Charles D. Ellis

1937年生まれ。イェール大学卒業後、ハーバード・ビジネス・スクールで最優秀のMBA、ニューヨーク大学でPh.D.取得。ロックフェラー基金、ドナルドソン・ラフキン・ジェンレットを経て、1972年グリニッジ・アソシエイツを設立。以後、30年にわたり代表パートナーとして、投資顧問会社や投資銀行などの経営・マーケティング戦略に関する調査、コンサルティングに腕を振るう。2001年6月代表パートナーを退任。現在、ホワイトヘッド財団理事長。この間、イェール大学財団基金投資委員会委員長、米国公認証券アナリスト協会会長、バンガード取締役などを歴任。『キャピタル』『チャールズ・エリスが選ぶ大投資家の名言』『イノベーターは死なず』『ゴールドマン・サックス(上・下)』『投資の大原則』(共著)など多数の著作がある。