企業年金実態調査2019年度

機関投資家のポートフォリオ

私たちの金融資産はさまざまな組織が運用しています。厚生年金は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、国家公務員共済、地方公務員共済、私学共済、また、アクティブファンド、インデックスファンドの運用金融機関が運用しているほか、厚生年金基金、確定給付年金の運用も巨額になります。これらのうち、私は、厚生年金基金と確定給付年金の運用に関し役員などを務めた経験があります。私たち個人投資家が運用をするにあたって、参考になる点はあるのでしょうか。

企業年金連合会の発表している2019年度の調査結果を確認します。

資産規模別内訳 ⇒ 確定給付年金は100~200億円のところが多いようです。

資産規模 確定給付企業年金 割合
10億円未満 42 4.55%
10~20億円 62 6.72%
20~30億円 61 6.61%
30~50億円 99 10.73%
50~100億円 172 18.63%
100~200億円 164 17.77%
200~300億円 69 7.48%
300~500億円 102 11.05%
500~1000億円 74 8.02%
1000億円以上 78 8.45%
合計 923 100.00%
平均 417億円
中位数 113億円

⇒ 厚生年金はどんどん姿を消して、現在は確定給付年金に改組しました。

資産規模 厚生年金基金 割合
10億円未満 0 0.00%
100~200億円 3 50.00%
1000億円以上 3 50.00%
合計 6 100.00%
平均 3456億円
中位数 501億円

資産構成割合は下表のとおりです。

資産構成割合 確定給付年金 厚生年金基金
国内債券 23.33% 19.32%
国内株式 9.01% 14.83%
外国債券 17.27% 11.12%
外国株式 12.19% 15.74%
一般勘定 17.85% 14.09%
ヘッジファンド 4.93% 2.35%
その他 10.13% 7.65%
短期資産 5.29% 14.91%

一般勘定

一般勘定とは、生命保険会社の商品で、個人保険や企業年金資産等を合同して一つの勘定で運用する勘定です。 一般勘定は、元本と一定の利率の保証(保証利率)がされており、生命保険会社が運用のリスクを負うものです。 また運用の結果次第では配当があります。

第一生命の一般勘定の推移

1994年には4.5%でしたが、最近は1.25%が長らく続き、現在は0.25%に引きさがりました。

 

生命保険会社が保証利率を引き下げました。 | いわしJOURNAL

ヘッジ・ファンド

投資戦略は多種多様であり、金融先物やデリバティブ(金融派生商品)、空売りやレバレッジ等を組み合わせ、株式や債券、為替など幅広い商品に投資し、収益を追求するファンド。米が中心で富裕層、機関投資家向けに私募形式で行われる。

ヘッジ・ファンドの特徴

代表的なヘッジファンド戦略としては、「株式ロング・ショート戦略」「グローバル・マクロ戦略」「イベント・ドリブン戦略」「マーケット・ニュートラル戦略」等がある。ヘッジファンド投資には、株式や債券等の伝統的な資産の運用と異なる仕組みや複雑なリスクが存在する、流動性が低い、解約に制限がある、解約したくてもすぐに現金化できない、情報開示が限定的、即時の時価評価が難しいなど伝統的資産に比べ制約が多いという特徴があります。

債券・株式の割合はGPIFに近い

一般勘定とヘッジファンド等を除いた、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式だけの比率は次の表のとおりで、GPIFの割合に近いものとなっています。

確定給付年金 厚生年金基金 GPIFの割合
国内債券 38% 32% 35%
国内株式 15% 24% 25%
外国債券 28% 18% 15%
外国株式 20% 26% 25%

修正総合利回りは下の表のとおりです。

修正総合利回り

年金資産の運用成果を評価する評価基準の一つ。従来の簿価ベースの平均残高(平残)利回りに時価の概念を導入し、総合利回りよりも更に時価をベースにした収益率。

時価ベースに修正

分母の平均残高に前期末の未収収益と評価損益を加えることにより、時価ベースの収益率に近くなるように修正された利回り計算方法で、算出が比較的容易であり、時価ベースの資産価値の変化を把握する指標として広く普及している。しかし、修正総合利回りは、金額加重収益率と同様の理由(キャッシュ・フローの影響を排除できない)でファンド・マネジャーの評価には適さない。

2019年修正総合利回り: △1.28%

  •  株式市場は、米国の堅調な株式市場や米中貿易協議の進展期待から年度半ばから年末にかけて上昇したが、年明けから新型コロナウィルス感染の世界的拡大や、円高・米ドル安が大きく進行したことから大幅に下落。
  •  主要国長期金利は、米中貿易協議進展期待の高まりや、好調な米経済指標を受けて上昇に転じる局面もあったが、2020年に入り新型コロナウイルスの感染拡大を受けた世界的な景気減速懸念から再び低下。

ショック時はバランス型が強いが・・・

年金の修正総合利回りと、私の運用実績を比較したのが下表です。私が負けたのは2010年、2015年、2019年の3回で、それぞれ、東日本大震災、チャイナショック、新型コロナショックの年度で、年度末の3月に大きく下げています。年金のポートフォリオはバランス型なので、各種ショック時には下落幅が小さいのですが、それ以外の年にはパフォーマンスが悪いのです。

修正総合利回り 私の運用実績 確定給付年金—私
2010年 -0.5% -8.4% 7.9%
2011年 1.8% 12.0% -10.1%
2012年 11.2% 12.0% -0.8%
2013年 8.8% 8.9% -0.1%
2014年 11.1% 16.5% -5.5%
2015年 -0.9% -8.0% 7.1%
2016年 3.5% 11.5% -8.0%
2017年 4.5% 5.4% -0.9%
2018年 1.6% 10.3% -8.8%
2019年 -1.3% -7.3% 6.0%
2020年 36.3%

3.87%対7.1%

過去5年平均が1.45%、10年平均が3.87%ではあまりに低すぎます。私の運用実績は、過去10年平均で7.1%でした。