国債残高、アベノミクス、外国為替、国際競争力、貿易赤字

BSフジのプライムニュースで国債残高、アベノミクス、外国為替、国際競争力、貿易赤字などを題材として討論がありましたので、その一部の発言をピックアップしました。

野口悠紀雄:一橋大学名誉教授
小幡績:慶應義塾大学大学院准教授

小幡:日本の生産性が低いのは、みんなのイメージでは、さぼっているとか、効率性が低いと思われがちだが、それは違う。売り上げは、数量×価格。同じものを作るのに効率性を上げるという努力はしてきたが、価格を上げるという努力をしてこなかった。日本企業は価格を上げることが嫌い。土下座してお願いしたり、コストが上がったからという言い訳をして価格を上げる。iPhoneは、カメラが少し良くなっただけで、1.5倍にする。いつの間にか20万円になった。あいつらは隙あらば値段を上げる。日本の企業はいい人だから、三方良し。赤字が出ない間は値上げしません、消費者のために良い製品を作ります。お人好しなのが原因。

野口:稼ぐ力があるのが、アップルなどのGAFA。iPhoneはものすごい機械なので、値上げできる。iPhoneがなければ仕事ができない世界を作り出した。グーグルも、それがないとどうしようもない。だから稼ぐ力ができた。高い給与も払える。最高のエンジニアには年間1億、2億の給与を払っている。それだけの給与を払えるだけの稼ぐ力を持っている。儲かっている。基礎に技術力ある。GAFAはアメリカ企業が補助金を払って育てたわけではない。色々な企業がいろいろなことをやって、競争して生き残ってきたのがアップルであり、GAFA。こういうプロセスを働かせることが重要。円安が生産性低下の原因なのだが、そういう風に付加価値を高める競争をしなくても日本の企業は生き延びられたから生産性が下がった。企業が付加価値を高め、経済が成長する基本的な原因は、高い技術力と新しいビジネスモデル、それを支える人材がなければできない。政府の役割は、そこに補助金を出すことではなく、それを妨げている既得権、規制をやめること。補助金を上げれば政府の思う通りに経済が発展するのではない。日本は、今までの企業で今まで通り幸せに活動してきた結果、一人当たりGDPは2位から27位に下がった。同じところにとどまっているためには、猛烈に走らなくてはならないが、日本は走るのが嫌だと言って、走るのをやめた。

小幡:アメリカが例外なので、世界の中では、日本はそれほどひどくない。現在は27位になったが、為替が戻れば、少し良くなる。円安誘導したのはものすごく間違いだった。アベノミクスの10年の痛手です。もう一つ、中国との付き合い方が失敗した。今、世界の経済はアメリカと中国。ドイツと韓国は中国に依存して成功してきた。日本は中国とは一線を画してきたのが失敗。

野口:2022年度末の見込みで、国の借金1029兆円。国債残高が急に増えたのはコロナで、補正予算が増えた。そういう支出が本当に必要だったかは大いに疑問。残高も問題だが、その時の支出も問題。支出が増えた大きな理由は、国債発行のための資金コストが低かった。つまり金利が低かったから。これはアベノミクスの隠された本当の理由だと思う。これをどう今転換するか、長期金利を上げるのかということになる。借金が膨らんでいるから長期金利を上げないと国債を発行できなくなる。もちろん国債費は増えるけれど、それはしょうがない。国の財政収支計算が出たけど、成長ケースでは徐々に改善されていく。それは税収が伸びていくパターン。ただし、成長ケースの実質成長率が2%くらいで、非現実的。ベースラインケースでは、成長率1%で、それでも高いけど、この問題は解決できない。これが現実的。国債の調達コストが低かったので放漫財政になった。長期金利が上がれば、利払いが増えるけど、今までの状況がおかしかったので正常な状態に戻すべき。

小幡:1000兆円も借金していて、何も起こらなかったから大丈夫だという人がいるけど、何も起こらなかったのが問題。1000兆も借金してちっともよくならなかったのなら、何をやっていたということだ。何に使っていたの?ということだ。1000兆円の国債を、みんなが喜んで買っているのか?日銀が半分買っているということは、日銀以外に買いたい人はいないのか?ということ。日銀は民間金融機関に当座預金で500兆円借金しているだけということになる。金利が上がったら、国の借金は日銀が引き受けてくれるが、日銀の借金は増えるだけ。国債は10年満期だが、コールレートは1日だけだから、引き揚げられたら、すぐに破綻する。

野口:日銀が国債の半分を持っているが、金利を上げなければ民間が買ってくれなくなった。それだけでなく、日銀がお金を民間に貸さなければ買ってくれない。信じられないことが起こっている。これは国内で処理しているからできること。しかし経常収支が赤字になって、対外資産を取り崩さなければならなくなり、海外から資金を調達しなければならなくなったら、今のような鎖国的な方法ではだめ。国債が国際的標準を満たしたものにならなければならない。アメリカはそれができるから、経常収支が赤でもやっていける。今の状況からみれば、長期金利は2、3%。

小幡:外国に国債を買ってもらうためには金利が上昇する。そうすると、日銀半分、民間半分の国際価格は大暴落する。銀行取付、銀行破綻の懸念が出て、日本売りになる。ヘッジファンドは、為替と株で仕掛けてくる。国債で仕掛けても日本は強いから、対応できる。破綻するときのシナリオは海外に攻撃されるということ。そして、民間企業も個人もキャピタルフライトが起きるというのが普通のシナリオ。それが起きないように日銀が買い支えているが、それがいつまでもつかということ。