日銀の利上げは、植田総裁自身もふらふらしていますが、市場の見方も様々です。
ロイターと、ブルームバーグの記事を読んで見ましょう。
日銀は0.5%以上の金利引き上げ想定、第1弾は夏から秋か
2024年5月10日
元日銀理事の前田栄治ちばぎん総合研究所社長は10日、ロイターの取材に応じ、日銀は基調的な物価上昇率が2%に到達すれば、今より0.5%以上の短期金利引き上げを想定しているとの見方を示した。夏から秋にかけて第1弾の利上げがあり得るとし、月6兆円規模の国債買い入れは年内に1兆円程度減額される可能性を指摘した。
<四半期ごと利上げの可能性ゼロでない>
前田元理事は「今基調的な物価上昇率が1.5%であるとすれば、基調的な物価上昇率が2%に上昇するときに金利を0.5%引き上げても実質金利は変わらない」と指摘。日銀が4月の「展望リポートに緩和度合いを調整すると記載しているのは、基調的な物価上昇率が2%に上昇する場合には0.5%ポイント以上金利を上げるという意味と解釈できる」と説明し、「4月の日銀の発信を見ると、金利を上げていくつもりなのだろう。それなりに金利を上げていく可能性がある」と述べた。
利上げ時期については「日銀は年内に着手するだろう。短期金利の次の利上げ時期は夏から秋にかけてではないか。具体的なタイミングはデータや市場動向次第だろう」とコメントした。同時に「経済・物価見通しが日銀の想定通りにいけば、理論的には四半期に一度の利上げが実施される可能性はゼロではない」とも述べた。
今後の利上げシナリオについて「基本的には半年に一度位のペースで利上げするだろう。ただ経済・物価情勢次第では、半年も待たず、ときには四半期に一度の利上げになる可能性もある」と指摘した。
<現在月6兆円の国債買い入れ、年内1兆円減額も>
金融市場や政府・与党関係者の間では低迷する消費を懸念し日銀の追加利上げに慎重な意見もある。前田氏も「23年度後半は消費が鈍かった。比較的物価が上がっていたので実質所得が伸びなかったからだろう」との見方を示した。同時に「物価は昨年の3-4%から今年は2-3%に上昇率が鈍化しており、賃金上昇率が高まっている点も踏まえると、実質所得面から消費が今後支えられるだろう。世界経済が大きく崩れない限り、日本経済は緩やかな回復を続けると思われる」と述べた。
日銀は4月の金融政策決定会合で国債買い入れを減らすとの観測も浮上し、今後の買い入れペースが注目されている。前田氏は「現行のおおむね月6兆円のペースを年内には減らすだろう。今のディレクティブのもとでも、月6兆円からプラスマイナス1兆円程度は執行部の判断で増減できるのではないか。それ以上の大きな買い入れ額の削減はディレクティブに記載する必要があるが、その際は減額する理由やエビデンスが必要になる」と解説した。
<最終利上げ目標、1.75%あたりのイメージか>
展望リポートに記載されている中立金利のスタッフ推計をベースにすると「2%の物価目標が実現するのであれば、日銀がみる短期金利の最終目標は1%から2.5%の間のどこかとなる。大まかにみてその中間点である1.75%あたりを一応イメージしているのではないか」とコメントした。
円安急進で日銀・財務省の一挙一動に注目が集まるが、「金融政策運営で為替にあまりに重点を置いたコミュニケーションをすると、かえって市場の不安定化を招く恐れがある。そもそも日銀の政策目標は為替の安定ではない」と強調した。
4月会合後の日銀総裁会見の発言が円安を加速したとの一部市場関係者の見方に関し「そのような可能性もあるということを念頭にバランスの取れた発信が必要だが難しい」と指摘。「日銀としてはあくまで為替が物価にどのように影響するかとの観点から情報発信するしかない」と語った。
同時に「為替(円安是正)のみを考えると大幅な利上げが必要となってしまうが、短期間の大幅な利上げに日本経済が耐えられない」との見方を示した。
その上で「為替をターゲットに金融政策を運営することはないが、過去20-30年のマイルドなデフレやゼロインフレ期に蓄積されたデータをもとにしたモデルが示すよりも、実際の為替変動による物価への影響は大きくなっている可能性がある」と指摘。「過去に比べ、為替に対する物価の感応度は高くなっている可能性がある。この観点から、円安が物価に及ぼす影響は金融政策運営上重要だ」とも強調した。
一方、経済・物価情勢が悪化する場合の政策手段は「その時点での短期金利の上昇幅や国債買い入れの減額度合いによる。短期金利の引き下げや、長期金利を引き下げるための国債買い入れ増額などが想定される。上場投資信託(ETF)などのリスク資産の買い入れについては副作用も考慮して是非が判断されることになるだろう」と述べた。
日銀利上げ、バンガードも市場上回る回数見込む-ピムコに追随
2024年5月10日
米資産運用会社バンガード・グループの国際金利責任者、アレス・クートニー氏は、低迷する円相場を押し上げるためには日本銀行が今年どれほどタカ派的になる必要があるかについて、市場は過小評価していると指摘する。
クートニー氏は、日銀が政策金利の無担保コール翌日物金利を現在の0-0.1%程度から年内に0.75%程度まで引き上げると予想。6月にも25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の追加利上げを実施すると見込む。一方、スワップ市場の織り込みでは、年内の利上げが21bpにとどまると予想されている。
同氏の見通しは、同業の債券運用大手パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)が先に示した年内3回の25bp利上げとの予測と一致する。ゴールドマン・サックス・グループのエコノミストらは、2027年までに政策金利が1.5%まで引き上げられると予想している。
日銀は3月の金融政策決定会合で利上げに踏み切り、マイナス金利政策から脱却。しかし、その後は円相場の下落基調が再開し、日米金利差を背景に4月には対ドルで34年ぶりの安値を更新した。先週には通貨当局が円安に歯止めをかけるために介入に動いたとみられる。