膨大する国債残高と個人ができるインフレ対策(2022改訂版) 1

この記事は、過去の記事を2022年版として改訂したものです。

<私と連れ合いの会話>

借金大国ニッポン

連れ合い:国は毎年借金を増やしているけど、どれくらいになっているの?

私:2021年のGDP比で言うと、日本は257だからGDPの2.6倍だね。

債務残高の国際比較(対GDP比)(2006~2021年)

(出所)IMF “World Economic Outlook” (2021年10月)
(注1)数値は一般政府(中央政府、地方政府、社会保障基金を合わせたもの)ベース。
(注2)日本は2020年及び2021年、それ以外の国々は2021年が推計値。なお、2022年については、日本:252.3%、米国:130.7%、英国:107.1%、ドイツ:69.8%、フランス:113.5%、イタリア:150.4%、カナダ:103.9%と推計されている。日本について令和3年度補正予算及び令和4年度予算によって見込まれる債務残高の増加が反映されていないことに留意が必要。

連れ合い:他の国はどうなってるの?

私:昔、ハイパーインフレに苦しんだドイツは、73と低い。アメリカは133、英国109、フランスは116。

連れ合い:それじゃあ、日本は異常に高いわね。ちょっと前に財政危機と言われていた南欧はどうなの?

私:イタリアが133。

連れ合い:イタリアの2倍の国債残高の日本って、やばくネ?

私:2~3年前までは、とりあえず大丈夫だったけど、最近2年間で新型コロナウイルス対策、ロシアのウクライナ侵攻に関連して、国家予算が膨らんだ結果、国債残高が跳ね上がった。金利を引き上げるアメリカ、ヨーロッパに対し、日本は超低金利政策を続けているので、円安が進んでいる。もしかするとやばくなってきているかもしれない。金利を他国並みに挙げれば、国債価格は下落し、国債の利払い費が上昇してさらに国債残高が増加する。このブログで数年前から危惧していたことが、コロナとウクライナ侵攻で、一気に加速している恐れがある。

国債を買い続ける日銀

連れ合い:その国債は誰が買っているの?

私:かつては国民や金融機関が買っていた。

連れ合い:国債を買うにはお金が必要だけど、国民はお金をそんなに持っているの?

私:団塊(1947~1949年生まれ)の世代を中心にシニア世代が、いっぱい貯蓄しているから、今は大丈夫。

連れ合い:でもこんなに国の借金が増え続けると、いつかは国民の貯蓄も底をつくんじゃない?

私:そうだね。それに、団塊の世代は引退する人が増えてるから、生活費などでどんどんシニア世代の貯蓄は減っていくね。

連れ合い:それじゃあ、買う人がいなくなるじゃない?

私:それで、今は日銀がどんどん買っている。

連れ合い:でも、いつまでも買い続けられるの?

お札を刷り続けると国が儲けて国民が損をする

私:お札を刷り続ければできるよ。お札は日本銀行券というくらいだから、日本銀行がどんどん刷れる。

連れ合い:どんどん刷るとどうなるの。

私:今あるお札の、2倍になる。

連れ合い:そうすると、みんながお金持ちになるの?

私:みんなが持つお札の枚数が増えるけど、それはお金持ちとは言わない。

連れ合い:それってどういうこと?

私:インフレになるから、お札の価値が半分に下がる。

連れ合い:マジか。ほかに変わることは有るのかな?

私:銀行預金も額は変わらないけど、価値が半分になる。そしてGDPの金額は2倍になる。国債の額は変わらないけど、国の負担は半分に減る。

連れ合い:そうすると、国は儲かるね。

私:国は儲かるけど、その反対に損する人もいる。

連れ合い:それは誰?

私:銀行に預金している人、郵便局に貯金している人、タンス預金している人。預貯金で半分のものしか買えなくなるからね。

連れ合い:個人が持っている財産の中で銀行預金の割合ってどのくらいなの?

私:家の金融資産のうち、54%だね。アメリカは13%、ヨーロッパは34%割だから、日本は極端に銀行預金と郵便貯金の割合が高い。

このグラフは、上から、日本、米国、ユーロで、左の色の濃いところが現金・預金。

資金循環の日米欧比較 2021年8月20日 日本銀行調査統計局

インフレ税、インフレタックス

連れ合い:国の借金が減るのはいいけど、それを国民が肩代わりするって、マジ、やばくネ。ところで、インフレって言えば、日銀はインフレ率を2%にしようとしているけど、それも、国の借金が減って、国民がそれを肩代わりするってこと?

私:その通り。インフレ率2%が10年続けば、複利で22%だから、銀行預金の場合には価値が2割減るってことだね。

連れ合い:サラリーマンが積み立てている財形貯蓄なら、価値が減らないんじゃない?

私:2020年は、新型コロナウイルスの影響で不安定な動きを示していたけど、それまでのインフレ率は1%前後で、日本生命の財形貯蓄の予定利率は0.7%だから、財形もだめだね。「財形貯蓄」でなく、「財産減損」だね。小規模企業共済の予定利率は1.0%だから、予定利率を上げないと損をするかもしれない。国民年金基金は1.5%だから、2022年5月のインフレ率を下回っているね。

連れ合い:厚生年金は大丈夫かな?

私:これからは年金の受取額もインフレで実質的に減る。年金をもらうシニア層は、マクロ経済スライドという訳の分からない名前の仕組みがあるので、インフレになったら、インフレで価値が減った部分を年金に反映するのではなくて、2~3割くらいは年金を減らすことになっている。正確に言うと、インフレの一部が賃金に反映されて、そのまた一部が減らされて年金になる。ダブルパンチだね。こんな風に、インフレになって、国民が国の借金を実質的に負担することをインフレタックス、インフレ税という。

連れ合い:それって、マジ、ヤッベ。でも、そんなことを続けている政権は、選挙で負けて、まともになるんじゃない?

私:今は国の借金をどんどん増やす政権を、国民が選んでいる。それにここまで来てしまうと、どの政権が担当してもだめだと言う感じだね。しかも、2022年は新型コロナウイルス対応やロシアのウクライナ侵攻で、日本銀行の印刷機が擦り切れるくらい、お金を刷っている。

でも、この状態はいつまでも続かないし、このままの状況が続けば続くほど、国の借金が増えるから、もっともっと深刻な状況に陥る。山高ければ、谷深し。もし、今の状況を立て直すとすれば、国民がインフレ税を払いながら、財政再建をした上で、日銀が国債を買うのを止めるのが基本になる。つまり、増税すると同時に金利を上げることだね。実際、東日本大震災からの復興のために復興特別所得税を今でも支払っている。やがて新型コロナ特別所得税ができるんじゃないかな?

<明日に続く>

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