<昨日の続き>
──ハーバード大学出身ですよね。米国の大学は学費が高いのでは?
パックン 実は、米国の一流大学は「ほぼタダ」で行けます! OBからの寄附金で、奨学金の原資があるから。ハーバードの場合は、今だと年収10万ドル以下の家庭なら、学費はほとんどかからない。大学側がその家の収入などに応じて、奨学金など、お金のプランを全部考えてくれました。ぼくは、ライオンズクラブから返済不要の奨学金をもらっていましたね。
──お金の問題で大学進学を諦める必要がないんですね。
パックン なぜかというと、優秀な学生を獲得することが、大学にとっていちばんの投資だからです。OBになったときの寄附額が変わってきますから。実際、5年前に卒業25周年の同窓会に参加したときは「寄附の新記録を目指そうぜ」と同学年の仲間と話して、25億円も集めました。
お金だけじゃなくて、文学や政治など、さまざまな分野で活躍する出身者が増えれば、大学の評価も上がり、さらに優秀な人が集まってくる。人材に投資することは利益率が高い。
だから日本も教育の無償化を進めて、貧困家庭の子供支援にお金をかけるべき。そもそも教育って、道路と同じインフラなんです。道路だって、有料のところもあるけれど、ほとんどは無料でしょ。それと同じです。
──卒業後、就職しなかった理由は?
パックン 就職も考えました。同級生にはウォール街で大儲けしてる人もいるし、今は内閣に入っている人もいる。そういう道もあったかもしれないけれど、ぼくは「お金中心」じゃなくて、「冒険中心」で生きていきたいと思った。貧乏だったから、今も毎日お金のことを考えるし、お金があって幸せだとも思うけれど、お金にしがみつく人にはなりたくなかった。みんなが手堅い道に進むときに、逆にレールから脱線して、自分で道を切り開いてみようかなと。
芸能界の仕事は、いつか需要がなくなるかもしれないけれど、そうなってもぼくは多分大丈夫。極貧生活に戻っても、節約してやっていける。年を取ったら世界各国を回って、給料は要らないから賄い付きで皿洗いさせてもらう、そんな生活も十分楽しんでできると思っています。
●インデックスファンドを中心とした”守りの投資”を実践!
個別株はテック系やクリーンエネルギーなどに注目
──とはいえ、今はお金があるし、資産運用もされていますよね?
パックン はい。ぼくは投資をピラミッドの形で考えています。まず土台である「自分」に投資する。具体的には健康と教育です。健康状態がよくて、稼げる人でいることがいちばん大事。この土台がしっかりしていないのに、リスクの高いものに投資すると、いつグラグラして生活が崩壊するかわからない。逆に、土台がしっかりしているなら、ピラミッド型ではなく投資部分を増やして長方形のような形になってもいい。とにかく、土台があるかどうかイメージしながら、資産形成するのが大切だと思います。
で、土台の上は緊急事態に備えて、半年分の生活費を貯金しています。その上は、全体の5パーセントくらいを債券に手堅く投資。数年以内に使う予定があるお金とかですね。さらにその上は、ぼくの場合はS&P500指数に連動する米国のインデックスファンドで、全体の5割くらいはここに投資をしている。ほかに、通貨別や地域別、セクター別ファンドも保有しています。
「このファンドは大丈夫か? 」って毎日不安になりたくないので、世界のトレンドを見て、この先需要が高まるものを選んでいます。たとえば、建設セクターは有望だと思う。世界はまだ人口が増加しているし、老朽化しているインフラも多い。世界で活躍する建築関連企業は、安心できる投資先だと思います。
──個別株への投資は?
パックン 個別株も買いますよ。個別株はピラミッドの先端の部分で、全体の1割以下です。頑張っている企業や将来性のある企業、たとえばテック系や製薬系、クリーンエネルギーなど、人間全体のためになるもので稼いでいる企業。S&P500指数にも入っている銘柄ですが、より応援したいと思う銘柄を選んでいます。ファンドのリターンにはなかなか勝てないし、個別株はあまり老後のあてにはならないとは思っているけどね。
あと、ぼくは投資をしていませんが、もしFX(外国為替証拠金取引)やクリプト(暗号資産)に投資をしたいなら、それもピラミッドの先端部分で、ほんの少しだけ投資するのがいいと思います。
──日本株には投資をしていないんですか?
パックン 日本株はPERなどの株価指標でみるとすごく割安なので、日本の中小型株に投資するファンドなども持っていますよ。住んでいる国だから、応援もしたいですしね。ただ、将来性はあるかと聞かれたら、なかなか難しいかなとも思うので、保有割合はかなり低い。
日本の企業はもっと外向きになって、成長市場に合わせた研究開発や、商品づくりをやったほうがいいと思います。特に今は円安ですし、どんどん海外で稼ぐ企業が増えるとうれしいですね。
日本の国立大学の授業料は、昭和40年代半ばには年間18万円で私立大学より大幅に低額でした。東大の学生の親の年収は平均年収を上回っているのに、大学の授業料が安いのは、高所得者の優遇であり経済格差の拡大につながるという意見が出また。その後、国立大学の授業料は値上がりして、私立大学に近づいたのです。