子供の早期教育

<冒頭部分は昨日と同じです>

とても勉強になるラジオ番組をご紹介します。

NHKラジオ第一 「ふんわり」 毎週金曜日午前8:30~11:50(特に9時台と10時台が勉強になります)

脳科学者の黒川伊保子が、家族との関係、職場の人間関係、子供の育て方・接し方を脳科学と経験をもとに明快にテンポよく話してくれます。以下のメディアで過去1週間分の放送内容を聞くことができます。

NHKラジオ らじる★らじお 聴き逃し

radiko(ラジコ) タイムフリー

黒川伊保子の著書はたくさんありますが、その中から何冊か紹介します。


AERA dot. 2022/09/14

『トリセツ』黒川伊保子が語る子どもの早期教育 「文字も数字も息子にはいっさい教えませんでした」

『妻のトリセツ』がベストセラーとなった脳科学・人工知能研究者の黒川伊保子さん。自身は一人息子(31)を育てた母。ユニークな子育て法を聞いた。

――息子さんはどんなお子さんだったのですか?

今はワイルドでタフに育ちましたが、子どものころはおっとり、というかぼんやりで、宿題を出されていることに気づかない、習い事に興味を示さない、成績はよくない、走れば最下位……みたいな。小1の2学期のある日、帰宅するなり「今日ね、不思議なことがあったんだ。学校についたら2時間目だったの」って。えー! あなた8時に家を出たんだよ!? 10時までどこに行ってたの、と(笑)。何かに夢中になっていたんでしょうね。実は、ぼんやりするのは、とても集中力があるということ。集中力や想像力がありすぎて外界に戻って来られないので、このぼんやりは才能だと思って見守りました(笑)。

――ひらがなや漢字を入学前に教えるなど、早期教育はされていましたか?

いえ、まったく。読み聞かせはたくさんしましたが、文字はいっさい教えませんでした。数字も教えなかったような覚えがあります。私の父が、私にそうしてくれたから。父は教育者で、「学校で習うことを、親が小賢しく先に教えたら、学校で退屈するだろう」と、おおらかに笑ってました。脳の発達から見ても、文字を身に付けるといった記号論的な学習は、6~8歳の言語機能完成の最終段階で十分間に合うので、私は、小学校にお任せしました。

それともう一つ。これは研究で証明できることでなく私の実感ですが、脳が好奇心を発する前に情報を与えられた場合と、自分から興味を持ってから学んでいく場合とでは、脳が受け止める場所が違うのではないかな、と。私は、息子の脳が「おもしろい」と思えるときまで待ってあげたいと思ったんです。

きっと世の中には早く始めると得することもあると思う。でも、早く始めてしまうともったいないこともある。私の場合、子育てのタイミングは研究者としても脂ののっている時期だったので、文字を教えている余裕がなかったし、子どももぼんやりだったので、「これはラッキー」と思って遅く始めるほうの利益をとりました(笑)。

――息子さんが出合うまで待ったのですね。

それが我が家の方針でした。成績は平凡でしたが、小2のとき、お風呂でオナラをして「ママ、泡が浮くのは、泡に浮く力があるからだけど、水にも泡を押し出す力があるよね」なんてアルキメデスの原理に気づいたり、お風呂のお湯の表面に、手のひらを広げてぺたぺたと触りながら「水には一塊になろうとする力があるんじゃない?」と表面張力を発見したり……。小1のときは、7と8を足すと15になることがおもしろかったようで、「7と8って半端な数字なのに、足すとぴったり15になるんだよ!」とくすくす笑って私に説明してくれましたね。

――息子さんを怒ることは?

私は息子を育てると同時に人工知能も育てていたので、例えば子どもがコップのジュースを何度もこぼしても、ティッシュを永遠に引き出しても、うどんを手首に巻いても「え! 人間の赤ちゃんて、こんないたずらができるの!」と感心するばかり。いわゆるいたずらで腹を立てることはなかったですね。自発的にいたずらできる人工知能のつくり方なんて、想像もつきませんでしたから。

でも、まぁ、ぼんやりして車にひかれそうになったとか、命に関わることであれば、もちろん叱りますし、私自身のイライラを息子にぶつけてしまったこともあります。人間ですから。

でもね、怒りはネガティブなことではないんですよ。喜怒哀楽の感情を知ることで脳の神経信号が多方面に機能し、感性の回路ができていきます。ニコニコだけのママでは、子どもの感情の地図がうまく育たない。私が育児中のころ「今日から叱らない子育て」っていうのがはやって、これでは喜怒哀楽を知らない子が育ってしまうと私は本気で心配しましたが、大丈夫、丸一日怒らないお母さんなんていなかった(笑)。

――そう言われると、ほっとします。私はしょっちゅう息子に「パンツ穿きなさい!」と怒っています。パンツを嫌がるって、脳科学的に何か理由があるのでしょうか……?

パンツ、うちの息子も嫌がってました。6カ月の孫(男の子)も、オムツを外すと嬉しそうにしていますよ。パンツを嫌がる理由は、脳を持ち出すまでもないのでは? おちんちんがついているんですもの。あんなふうに、ぴょんと飛び出しているものがついていたら、オムツもパンツもストレスでしょうよ、と思いますよ。

――息子さんは、今どのような大人に?

子どものころはぼんやりだった息子は、とてもワイルドな大人に育ちました。中3の夏休みには100キロメートルの自転車旅行に一人で出かけたり、大学院の卒業旅行ではネパールに行ってバイクでヒマラヤを見に山越えをしたり……。小さいころのレゴブロックの基地の延長か、今は栃木の日光に森を買って、友達と山の家を造っています。理系の大学に行ってエンジニアになり、今は私の仕事のサポートをしてもらっています。素敵なおよめちゃんも来てくれて、パパとしても奮闘しています。

――最後に、子育て中のみなさんにメッセージをお願いします。

脳科学の研究をベースに私が実践したことをお話ししましたが、お母さんが心地いいと感じることをするのが一番。子どもが大きくなってからも愛の言葉を伝えるのは効果がありますし、「ああしておけばよかった」との後悔は無用です。すべてのお母さんが幸せで、自分の人生を楽しんでほしいですね。そうすれば、きっとお子さんは魅力的に育つはず!

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