資産運用業高度化プログレス 4

Ⅰ 現状 2. 日本の公募投信の状況:

(2) 米国投信とのパフォーマンス比較 ②運用ファンド数別

日本

日米のアクティブ公募投信のパフォーマンス(5年シャープレシオ)を、資産運用会社の運用ファンド数(本数)別に比較してみると、日本では運用本数の多い大手の資産運用会社で、パッシブ平均(0.40)のみならず、アクティブ平均(0.20)をも下回る先が多い(A)。日本でも、パッシブ平均(0.40)を上回るパフォーマンスを上げている先が見られるが、運用本数の少ない独立系資産運用会社が中心となっている(B)。

日米資産運用会社が運用するアクティブファンドの数とパフォーマンス(左からファンド数の多い順)

米国

米国では、運用本数の多い大手先でもパッシブ平均(0.71)を上回るものが少なくない(C)。

日本のアクティブ公募投信の平均パフォーマンスが低い理由としては、後述するように、パフォーマンスが低くなりがちな少額投信が多いことが一因となっている。

Ⅰ 現状 2. 日本の公募投信の状況:

(3) 国内大手資産運用会社のパフォーマンス ①国内資産

国内大手資産運用会社8社のアクティブ投信の過去5年間のパフォーマンス(シャープレシオ)を資産分類別にみると、国内株式は、信託報酬控除後ベースでパッシブと概ね同等(図表A)。

国内債券は、パッシブ対比信託報酬が高いため、信託報酬控除後のパフォーマンスで概ねパッシブを下回る(図表B)。

Ⅰ 現状 2. 日本の公募投信の状況:

(3) 国内大手資産運用会社のパフォーマンス ②海外資産

海外株式や資産複合(海外資産を含むものが大宗)のパフォーマンスは、信託報酬控除前からパッシブを下回る(図表A、C)。

海外債券のパフォーマンスは、信託報酬控除前後ともパッシブ平均を概ね上回る(図表B)。

※ パッシブは、先進国債券(投資適格)に連動するものが多く、14年10月の日本の金融緩和を受け対先進国通貨で大幅な円安が進んだ結果、期初の基準価額が高まり低調であった一方、アクティブは新興国債券や先進国債券(非投資適格)に投資するものが多く、比較的堅調であった点に留意。

資産運用会社からは、信託報酬の水準に見合うだけの十分なパフォーマンスを確保するための自社運用力や、運用の外部委託先の目利き力といった点に改善の余地があるとの認識が示されている。

Ⅰ 現状 2. 日本の公募投信の状況:

(4) 少額投信の乱立 ①顧客利益への影響

資産規模別の5年シャープレシオをみると、運用規模とシャープレシオは比例する傾向(図表A)。

日本では、純資産額50億円以下の少額投信の数が極めて多く、10億以下の投信も多数存在している。また、ファンド単位でみると、少額投信の大半が、運営コストを超えるだけの運用報酬を得られていない可能性がある。仮に超過費用が生じている場合には、究極的にはその資産運用会社の他のファンドの顧客がこれを負担していることとなる(図表B)。

Ⅰ 現状 2. 日本の公募投信の状況:

(4) 少額投信の乱立 ②ファンド数の日米比較

日本における新規ファンドの設定本数は、減少傾向にはあるものの、米国と比べても多い状況が継続(図表A)。既存ファンドの残高拡大より、手数料収入を獲得するための新規商品開発に注力してきたとの指摘もなされている。

足許減少に転じてはいるものの、日本のファンド数は極めて多い。また、米国のようなパッシブファンドの巨大化が進んでいないこともあり、ファンド1本当たりの純資産額は伸び悩んでいる(図表B)。

ファンド数の多い資産運用会社では、運用している10億円未満の少額投信の数が多い(図表C)。

従来、日本では手続の負担等からファンドの償還・併合は十分に進んでこなかったが、本年5月には公募投信では初の併合が実施され、今後の広がりが期待される。資産運用会社は販売会社とも協力し、コストに見合わない不採算ファンドや中長期にパフォーマンスが悪化している等、顧客利益に資さない少額投信について、積極的に償還・併合していく必要がある。

Ⅰ 現状 2. 日本の公募投信の状況:

(4) 少額投信の乱立 ③専売慣行の運用規模への影響

少額投信の乱立の一因として、新規商品の組成後の一定期間(半年~1年程度)、販売を1社のみに限る商慣行(専売)の影響が指摘されている。専売の投信は、全体の本数の約3割を占めている(図表A)。

専売の投信数が多い販売会社では、長期にわたって専売を継続している傾向がある(図表B)。

設定後2~5年経過しているファンドの3~4割程度が専売を継続しており、販路が広がらず小規模なままにとどまっている可能性もある(図表C)。

販路が限定されている結果、パフォーマンスが良好であっても資金が十分に流入せず、効率的な運用に必要な運用規模(純資産額)を確保できていない投信が生じている(図表D)。

専売が行われる背景は様々であり、顧客利益に繋がる場合もありうる一方で、少額投信の原因にもなりうる。このため、資産運用会社が、販売会社とともに、販路の限定が顧客利益に資さない少額投信の発生・残存につながらないよう、中長期的に良好かつ持続可能な運用ができる商品組成や償還・併合に取り組んでいくことが必要である。