2026年以降のNISAはどうなるのでしょうか。
最近の状況を確認します。
2026年のNISAはどうなる?鍵握る自民党税調がスタート。「こどもNISA」など3つのポイントを解説
ハフポスト日本版編集部 2025年11月13日
自民党の税制調査会は11月13日、非公式の幹部会合を開いて2026年度の税制改正に向けた議論を始めました。特に個人投資家から注目が集まっているのは、新NISAの拡充が採用されるかどうかです。
今年8月、金融庁は「2026年度税制改正の要望」を公表。その中にはNISAの制度拡充に関する要望も含まれていました。金融庁が要望として提出した「NISA改正案」について3つのポイントを解説していきます。
①18歳未満対象「こどもNISA」
「こども家庭庁との共同要望」として出されている項目で、NISAの「つみたて投資枠」のみ、利用可能年齢を18歳未満に拡大するものです。
2023年までの旧NISAには、未成年者を対象とする「ジュニアNISA」がありましたが、2024年開始の「新NISA」スタート時に18歳未満は対象外になってしまったためです。非課税投資枠が年間120万円までの「つみたて投資枠」に限定されるものの、未成年から積立投資を行い、長期運用できるようになります。
金融庁の「つみたてシミュレーター」によると、例えば5歳から毎月1万円の積立投資を始めて、平均利回りが年5%だったと仮定すると、18歳時点では元本168万円が241万円になります。
②対象商品の拡充
具体的な方針については公表されていませんが、現状つみたて投資枠で買えるファンドが約270本、成長投資枠で買えるファンドが約2000本と大きな差があるため、つみたて投資枠の対象商品が拡充されると考えられています。
金融庁の「NISAに関する有識者会議」の資料によると、ヨーロッパやアジアなどの特定の地域別の株価指数に連動するファンドや、株式よりもリスクの低い債券のみで運用するファンドが追加される可能性があります。
また、現在はNISAの対象となっていませんが、人気の毎月分配型の投資信託商品なども検討される見通しです。
③非課税保有限度額の「当年中復活」
非課税保有限度額(つみたて投資枠:1800万円、成長投資枠:1200万円)に達した後、売却して空いた枠を使えるようになるのを、現行の翌年から当年中に変更するものです。ここで要望されているのは、年間の限度額(つみたて・成長合計で360万円)ではないので、注意が必要です。
この改正の恩恵を受けられるのは、非課税保有限度額に達した人、または、年内に非課税保有限度に達する予定だが年間360万円の非課税投資枠を使いきれていない人。新NISA制度はまだ始まって2年弱のため、現状すぐに対象となる人はいません。
金融庁の提出したNISA改正案は主に以上の3つで、新NISAがもっと使いやすくなるのではと、個人投資家からは期待の声が上がっています。
自民党税制調査会で2026年度税制改正の議論が始まる:物価上昇に連動した基礎控除の増額は実現するか
2025年11月21日 NRI 野村総合研究所
11月13日に自民党の税制調査会は「インナー」と呼ばれる幹部会合を開き、2026年度税制改正のスケジュールや主な論点を確認した。年末には税制改正大綱を決定する。
高市首相は、税調会長を計8年務めた財政健全化重視の宮沢洋一氏を小野寺五典前政調会長に交代させた。また、経済産業省とのつながりが強く積極財政派と考えられる商工族の西村康稔元経済産業相、山際大志郎元経済財政・再生相をインナーに起用した。
「年収の壁」の引き上げが最大の注目点となる。それ以外には、法人税を軽減する「租税特別措置」の見直しなども議論される。「租税特別措置」の見直しは、自民と維新の連立合意にも含まれた。企業の研究開発への投資額に応じて減税する「研究開発税制」や「賃上げ促進税制」が見直しの対象になるとみられる。また、ガソリン税と軽油引取税の暫定税率の廃止の代替財源の一つともされる。
金融所得の多い富裕層への課税強化策、住宅ローンに応じて税額を減らす「住宅ローン減税」の延長・見直し、少額投資非課税制度(NISA)の拡充も論点となる。
自動車関係では、購入時に燃費性能に応じて価格の3%を上限に課税する「環境性能割」の見直しが検討される。
観光振興の財源確保では、出国時に1人1000円を徴収している国際観光旅客税(出国税)の引き上げが検討される。
最大の注目点となる「年収の壁」の引き上げについては、今年の年末調整から、基礎控除等の非課税枠が103万円から160万円に引き上げられる。しかし、国民民主党は178万円までの引き上げを引き続き求めている。178万円の根拠は、前回基礎控除等が見直された1945年以降の最低賃金の引き上げ幅であるが、一部の人に適用される最低賃金の引き上げを基準に基礎控除等の引き上げを決めるのは適切ではないと高市首相は国会で答弁している。基礎控除等を単純に178万円まで引き上げる制度改正がなされる可能性は高くないものの、自民党税調も「年収の壁」対策のさらなる拡充を検討する。
税調では、物価の上昇に応じて非課税枠を引き上げる仕組みが検討されている。基礎控除等の非課税枠や税率区分が一定の下で物価が上昇すると、実質増税がなされることになる。足もとの物価上昇によって、物価高に対応していない税制や社会保障制度の弱点が浮き彫りとなった。
目先の物価高対策は、補助金、減税などで実施するとしても、より根本的な対策としては、制度改正が必要だ。自民党税制調査会の会合では、物価の上昇に応じて非課税枠を引き上げる仕組みが取り上げられ、出席者の多くは消費者物価指数を基に算出する方法が適切だと主張したという。
ただし、非課税枠をどの程度の頻度で改定するかについては、毎年実施するべきだとの意見がある一方、年末調整のシステム改修の負担が重いことから3年おきが望ましいとの声が出たという。年末調整のシステム改修の負担はあるとは言え、物価が顕著に変動する局面では、3年おきの見直しでは十分ではないだろう。