東京の住宅価格は、相変わらず高止まりしています。
住宅を買おうとしている人にとっては困った問題ですが、これを解決に近づける方法があります。
① 東京23区内には空き家が多いのですが、その理由は固定資産税が低いからです。これを逆に、住んでいる固定資産より高くすれば手放す人が多くなり、住宅価格は下落するでしょう。
② 投資用にマンションを購入し、値上がりを待っている物件がありますから、実際に住んでいなければ固定資産税を上げれば、投資目的の購入者が減るでしょう。
野党も、与党もなぜこの住宅問題を放置しているのでしょうか。不思議です。
現状と今後の不動産市場の動向を見てみましょう。
「マンション価格ついに…」2025不動産市場の行方分譲マンション、戸建て、賃貸をそれぞれ「予測」
2025/01/16 東洋経済ONLINE
2025年の不動産市場を語る前に、2024年を総括しておこう。
「にわか投資家」が拡大した分譲マンション市場
マンションの売買市場でニュースになることは新築マンションの集計値以外にない。2023年3月に首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県)の平均価格が史上初めて1億円を超え、1億4360万円となった。これは都心の好立地大規模物件が2棟同時に販売されたからだが、相場が急伸したように見える。
このニュース以降、都心のタワーマンションを購入するのは自宅を探す実需だけでなく、中国人をはじめとする外国人、日本の法人、個人の富裕層まで「にわか投資家」が拡大した。その直後から買い手が急激に増えたため、新築の倍率は上がり、中古の好立地のタワーは売り出された価格の満額で即日に売れていったりした。
2024年に入って新築は昨年と比較して、供給戸数が減少し、平均価格は下落し、在庫は増加した(2024年11月までの累計値)。12月までの累計値は1月下旬に発表されるが、ほぼこのような数値になりそうで、これだけ見れば市況は悪化したことになる。
しかし、新築は棟数で300ほどしかない。その立地や戸数が大幅に変わる中で、前年と比較したところで意味はない。とはいえ、このニュースは上記の「にわか投資家」のマインドを冷やすには十分かもしれない。「先高感」の目論見に反して、「先安感」の数字が突きつけられるからだ。
では売れていないかというと、そうではない。中古マンション市場では、成約戸数が増加し、販売単価は上昇し、在庫は減少している。先ほどの新築市場の逆が起きている。新築の供給エリアはかなり偏りがあるのに対して、中古にはそれがない。市況を判断するには中古市場をウォッチする必要がある。
値引きしながら在庫処分している戸建て市場
新築分譲は増えた在庫を削減するため、値引きしながら在庫処分を行っている。そもそも在庫が増えたのには理由がある。コロナ禍になり、ステイホームで家に対する不満やリモートワークスペースのニーズから住み替えが増え、需要急増に沸いた。そこで街場の不動産屋は土地を自ら仕入れて、新築分譲市場に大挙して参入した。建築費の高騰も重なり、新築分譲戸建ての価格は2割上昇した。
しかし、その市場は長くは持たず、コロナが収束するにつれて売れ行きは悪化する。決定的なターニングポイントは全国旅行支援が再開された2022年10月になる。ここから、在庫は急速に積み上がり、体力のある会社ほど値引きしてでも在庫の回転を急いで、今に至っている。
供給がいっこうに増えない戸建て用地の地価は高止まり傾向が継続している。高齢化社会の中で死亡者数が増え続けて、相続は発生しているものの、ほとんどの実家は親が住んでいた状態に近い物置きとなっており、空き家所有者の5年以内での売却意向は17.3%しかない(国土交通省「令和元年空き家所有者実態調査」)。
なぜなら、相続資産のうち金融資産と不動産資産がそれぞれ大きな割合を占めるケースが多く、固定資産税などを支払う余力はあり、特段急ぐ理由もないからだ。そして、新築価格がコロナ前の2割増しなので、売れ行きが悪くなった中古戸建て価格も価格がさほど落ちてはいない。
家族の世帯人数が少なくなっている中で、資産性の面からも不人気市場になっている戸建て市場だが、見方によっては魅力的に映る。それは、マンション価格と比較するとはるかに割安であることと、土地価格は減価しないことから10年以上住むなら、資産性が十分にあるからである。持ち家購入検討者は戸建ても視野に入れることをお勧めする。
家賃が高騰している賃貸市場
コロナ禍に経済活動を制限したために、非正規雇用の解雇が一斉に行われた。若年層が多いために、シングル向けの賃貸住宅は稼働率が急減した。正規雇用のファミリー層の雇用は安泰だったことと、持ち家価格の高騰で購入できない世帯が増え、ファミリー向け市場は需給が逼迫し、家賃が高騰している。コロナ終了とともに、雇用環境が改善し、シングル向け市場も急速に回復し、どのセグメントでも家賃は高騰している。都区部では4年前の家賃と比較して5~10%値上がりしている。賃貸派は自分の住む物件の募集事例を物件検索サイトで確認してみた方がいい。
その他の影響要因
新築の供給戸数は一定量を維持しているが、その中で建築費高騰は尋常ではなく、コストアップの主要因になっている。これは円安やサプライチェーンの混乱などによる資材価格の高騰と労務費の変動によるものである。複数の大手ゼネコンが営業赤字になるなどの状況の中で見積もり額はうなぎ登り状態にあり、当面解消しそうにない。
また、ローン金利の上昇は限定的ながら、これまでの金利の引き下げ競争が逆行し始めている。通常、金利が上がれば、投資活動は冷え込むものだが、金利の絶対水準がかなり低いのでマインドに落ち込みはない。逆にデベロッパーに至っては、金利上昇は売却物件の価格をコストプッシュするだけと私は考えている。
ここから、2025年に予測を行うが、予測の際に最もやってはいけないことは、不確かな根拠やデータに基づく拙速な「推論」をすることである。わかっていないことを推し量って論ずるのは「あてずっぽう」でしかない。多くの有識者はこの域を出ていない。
予測とは、事実を積み上げ、その因果関係を把握した結果である。これは演繹法であり、学問である。私の予測は単にこの手法を踏襲しているにすぎない。
それでは、2025年はどうなるか? 2024年の現状認識を正確に把握したら、その前提条件や取り巻く環境が変わらなければ、その延長線上のことが起こる。未来はすでに起きている現実の積み上げの先にあるだけだ。2024年の市場把握に足元の変化とそのトレンドを丹念に調べていくと、それは2025年に起きることとなる。
2025年不動産市場はどうなるのか
・分譲マンション市場
持ち家価格は不動産への資金が増えれば、資産インフレする。法人も個人もほとんどの方が不動産を購入する際に、ローンを組む。この資金の流れを止めるのは金融庁しかないが、金融庁の公開資料を確認していると、資金が止まらないことは当面確実であり、価格が下がることはない。新築・中古ともに、同じエリアなら、確実に単価が上昇していくことになる。
ただし、価格の高騰とにわか投資家の減少で、売れ行きは少し落ち着くことになろう。需要が減った分、販売期間が延びるということだ。新築は省エネ基準適合で断熱性能など向上して望ましいことだが、さらに価格高騰に拍車がかかる。価格高騰と売れ行きの悪化は、需要吸引力の高い都心部はさておき、地方・郊外の物件は冷え込む事態がすでに顕在化している。
・戸建て市場
新築の在庫調整は続くが、供給が全体的に減り始めており、供給調整が既に始まっていると認識している。これは事業構造上、借入が難航している以外の理由は考えられない。土地価格と建築費が下がらない限り、供給は増えそうにない。そもそも価格がコロナ前より2割上がっているので、供給はその分下がる可能性が高い。単純に買える人が減るからだ。当面は価格は下がらず、売れ行きも芳しくない状況が続くと考えられる。
・賃貸市場
家賃の高騰は稼働率の上昇によって起こる。シングルは人手不足から都市圏に若者や外国人が集まるからで、ファミリーは持ち家価格が高く買えないからになる。理由こそ違うが稼働率は上昇の一途で、建築費の高騰から供給戸数が増えることは望み薄である。このため、家賃はこれまで以上に高騰し、やや広めに住み替えたいと思うと2~3割の家賃上昇になり、引っ越しをためらうほどになる。これは、住み替え時だけでなく、更新時の家賃の引き上げ事例も増えており、常態化していく可能性がある。
総じて、不動産市場は価格も家賃も高騰が続く。こうした状況では、家賃負担は重たくなる一方で、持ち家という資産を持てばキャピタルゲインが得やすい状況にある。将来予測から逆算して自宅の戦略を考えれば持ち家取得一択であることを学習したら、あとは行動に移すのみとなる。
新築・中古マンション市場動向は? 注目物件や在庫状況など最新市況を不動産アナリストが解説!【2025年1月版】
2025年1月15日 ダイヤモンド不動産研究所