VOO (バンガードS&P 500 ETF)の分配金2021年12月

昨年末にバンガード社から分配金が支払われました。

年間1.36%

1306(TOPIX連動型上場投資信託(ETF))の分配金支払いは年間1回ですが、アメリカは年間4回が多いようです。今回の分配率は0.35%、最近1年間合計では1.36%でした。数年前までは2%弱だったのですが、最近1年間は株価値上がりが急なので、分配金の伸びがそれに追いついていない状況です。ただし、2年前の配当金の実額は5.57ドル、今年は5.44ドルですから実額でも少しだけ減少しています。

このことに関連して、野村ネクスト・ファンドで分配金について解説していますので、勉強しましょう。


ETFの分配金が想定とずれるのはなぜ?

分配金の増減を理解するためのポイント

① ETFの分配原資は配当等の収益(インカムゲイン)から信託報酬等の費用を差し引いた収益であり、株式の売買等による収益(キャピタルゲイン)は分配原資とならずETFの内部に留保される。

② ETFには取引所で売買する市場(流通市場)とは別に、機関投資家等の大口投資家がETFの取引きを行う市場(発行市場)があり、発行市場での「設定」や「交換(解約)」により、ETFの口数が変化する。

以上2点を踏まえ、分配金の増減について具体的に見てみましょう

分配金の希薄化

説明をわかりやすくするため、株価の変動はないものと仮定し単純化した例で分配金の希薄化について考えます。

① 配当落ち前

組入れ株式が配当落ち前で、純資産440、口数4、1口あたり純資産110のETFがあったとします。

■ 純資産:440(株式時価:440)
■ 口数:4
■ 1口あたり純資産:110(株式時価:110)

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② 配当落ち後

このETFで保有する株式が配当落ちを迎え、配当は合計で40だとします。ETFの純資産は440のままですが、その内訳は、株式時価が400、配当が40となります。口数は4ですから、株式時価が100、配当が10で、1口あたり純資産は110です。このまま追加の設定も交換(解約)もなく、つまり口数に変化がなくETFの決算日を迎えた場合、1口あたり10の分配金が支払われます。

■ 純資産:440(株式時価:400、配当:40)
■ 口数:4
■ 1口あたり純資産:110(株式時価:100、配当:10)

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③ 配当落ち後の追加設定

ここで、株式の配当落ち後にETFが1口追加設定されたとします。追加設定は、このETFの1口あたり純資産110相当の株式か現金を拠出して行われます。追加設定により、ETFの純資産は550(440+110)、口数は5となります。

■ 純資産:550(株式時価:510、配当:40)
■ 口数:5
■ 1口あたり純資産:110

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④ 分配金の希薄化

上記、株式の配当落ち後に1口追加設定のあったETFが決算日を迎え、分配金を支払うことになりました。ETFの分配原資は40で、配当落ち後の追加設定により口数は5となったため、1口あたりの分配金は8となります。1口あたりの純資産は、株式時価が102となったため、102+8=110で追加設定前と変わりません。

■ 純資産:550(株式時価:510、配当:40)
■ 口数:5
■ 1口あたり純資産:110(株式時価:102、分配金:8)

etf_13_img04.png

このように、配当落ち後に追加設定があった場合、口数は1増えて4→5になりますが、分配原資は配当落ち前の配当確定日に40と確定しているため1口あたりの分配金は10→8に減ってしまいます。しかし、追加設定の110が純資産に加わって550となるため、1口あたりの純資産価値が110(102+8)であることに変わりはありません。つまり、分配金は減りますが、支払われなかった分はETFの内部に留保されており、保有しているETFの価値が下がっているわけではないと言うことです。このことを「分配金の希薄化」と言います。

分配金の濃縮化

逆に、組み入れ株式の配当落ち後にETFの交換(解約)があった場合は、口数が5→4に減るため1口あたりの分配金は8→10に増えますが、純資産は110減るため、550-110=440となり、この場合も1口あたりの純資産は110でETFの価値が変わっているわけではありません。このことを「分配金の濃縮化」と言います。分配金の濃縮化が要因で、本来の利回り以上に分配金が計上される場合があります。

⑤ 分配金の濃縮化

■ 純資産:550(株式時価:510、配当:40)
■ 口数:5
■ 1口あたり純資産:110 (株式時価:102、配当:8) ■ 純資産:440(株式時価:400、分配金:40)
■ 口数:4
■ 1口あたり純資産:110 (株式時価:100、分配金:10)

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まとめると、配当落ち後の機関投資家等による設定や交換(解約)の結果、分配金の希薄化や濃縮化が起こり、分配金が増減することがあります。しかしながら、分配金として受け取ることができなかったり、逆に多く受け取ったとしても、1口あたりの純資産の実質的な価値は変わらないため、経済的には損得が無いと言うこともできます。分配金として期待すべきは、あくまでも投資対象資産の配当等の利回りがベースであることを覚えておくとよいでしょう。

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