退職後の資産、年金、貯蓄 (アメリカ)

昨日は、日本における退職後の個人資産について見ました。

アメリカの最新事情

アメリカは、日本よりはるかに高いインフレ率に見舞われていて、フードバンクも利用者が増えています。現在のところ雇用は好調のようですが、既にリタイヤしたシニア層にとっては、給与上昇の恩恵はありません。過去に蓄えてきた資産が頼りになります。アメリカの最新事情を見てみましょう。USA TODAYの2022年6月1日の記事です。以下は拙訳です。


米国の成人のうち、引退時の貯蓄が長続きすると確信している人はわずか31%しかいません。あなたはどの程度自信がありますか?

社会保障制度は、退職後の重要な収入源になるかもしれません。しかし、その給付金だけで生活することを期待してはいけません。平均的な所得者であれば、ソーシャルセキュリティは退職後の賃金の約40%を代替するだけであり、ほとんどの高齢者が快適に暮らすためには、以前の収入の70%から80%程度が必要となるのです。そこで、個人貯蓄の出番となります。

しかし、ニューヨーク生命の最近の調査では、退職後に貯蓄が続くと確信していると答えた回答者はわずか31%でした。さらに悪いことに、ベビーブーマーの場合、21%しか貯蓄が長続きすると確信していないと答えています。

退職後にお金が足りなくなることを心配しているなら、IRAや401(k)の残高を増やすことは、足りなくなる可能性を低くするための良い方法です。しかし、貯蓄を減らさないようにするためにできることは、それだけではありません。実は、ある簡単な計算をすれば、高齢になっても貯蓄を活用できる可能性が高くなるのです。

適切な引き出し率を考える

退職後に貯蓄を取り崩すのが戦略的であればあるほど、貯蓄を使い果たす可能性が低くなります。そのためには、最初から適切な引出率を設定することが重要です。

1990年代以降、金融専門家は「4%ルール」を提唱しています。これは、退職時に貯蓄残高の4%を引き出すことから始め、将来の引き出し額をインフレ率で調整すれば、貯蓄は30年間十分にもつというものです。しかし、この時点で4%ルールは時代遅れになっているのかもしれません。

ひとつには、このルールができた当時は、現在と比べて債券の利息がかなり高かったことが挙げられます。また、シニア世代は債券への移行を勧められることが多いため、年4%の引き出し率を支えるには貯蓄が十分に増えない可能性があることを意味するのです。

さらに、早期退職を余儀なくされる人もおり、その場合、貯蓄を30年以上継続する必要があります。同様に、積極的に早期退職を選択し、着地する人もいます。

このように、4%ルールに頼るのはベストなアイデアとは言えません。4%ルールを出発点として利用することもできますが、自分で計算し、どの程度の引き出し率が自分にとって合理的かを確認することがより良い方法となります。ファイナンシャル・アドバイザーに相談するのもよいでしょう。

長寿の家系であることから、2.5%の引出率が安全だと判断することもできます。あるいは、3%の引き出し率にすることもできます。貯蓄を取り崩すなら4%より高い方が安全だと判断することもあるでしょう。しかし、これも個人の状況に応じて選択することです。

もっと自信を持って老後を迎えよう

貯蓄の持続力に不安を感じることは、退職後の生活を始めるのに最も良い方法とは言えません。貯蓄を増やすことは、長期的な展望に自信を持つことにつながりますが、賢い引き出し戦略を確立することも同様に重要です。そうすることで、退職後の見通しが変わり、老後をより楽しく過ごすことができるようになります。


4%ルールとは?

「4%ルール」は1998年に米トリニティ大学のグループによって発表された資産運用に関する研究から導かれたものです。

これは、毎年、資産運用額の4%未満を生活費として切り崩していれば、30年以上が経過しても資産が尽きる確率は非常に低いという内容です。どのようなポートフォリオ(資産構成)にするかなどによって数字は変わってきますが、おおむねこのような意味になります。

この4%ルールは、アメリカの一般的な株価の成長率(7%)から物価上昇率(3%)を差し引いて計算されたもので、要は投資で得られる利益の範囲内で生活を続ければ、半永久的に資産が目減りすることなく生活ができるという考え方です。

そして資産運用額の4%を1年間分の生活費として切り崩すということは、逆算すれば、元となる資産は1年間の支出の25倍が必要になるということになります。

時代や国が変われば株価の成長率も、物価上昇率も異なるので、いつでもどこでも4%ルールが当てはまるわけではありません。ただし、大きな資産を築いて投資利益の範囲内で生活を続けることでアーリーリタイアが可能になるという点は、どの国、どの時代でも共通しています。

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