令和5(2023)年度税制改正要望の中で、金 融 庁は「資産所得倍増プラン」の要望事項をまとめました。その内容を確認します。
「資産所得倍増プラン」関連要望(例えば、以下の要望が考えられる。)
- 【所得税】NISAの抜本的拡充【事項要望】
- 【法人税】資産形成促進に関する費用に係る法人税の税額控除の導入【事項要望】
- 【贈与税】教育資金一括贈与制度の拡充等(教育団体等への寄付、投信信託での運用等)〔文部科学省主担〕
- 【所得税】金融所得課税の一体化〔農林水産省・経済産業省が共同要望〕
1.「資産所得倍増プラン」関連要望
NISAの抜本的拡充【事項要望】
【要望のポイント】
簡素で分かりやすく、使い勝手のよい制度に
制度の恒久化
非課税保有期間の無期限化
年間投資枠を拡大し、弾力的な積立を可能に
非課税限度額の拡大(簿価残高に限度額を設定)
安定的な資産形成を促進する観点から、長期・積立・分
散投資によるつみたてNISAを基本としつつ、一般NISA
の機能を引き継ぐ「成長投資枠(仮称)※」を導入
※ 非課税限度額の内枠として、①既に積み上げた資産(預貯金)によるキャッチアップ投資や、②企業の成長を応援するため、上場株式や一定の商品性を持った株式投信等への投資を可能とする
つみたてNISAの対象年齢を未成年者まで拡大
※ ジュニアNISAは、予定通り2023年末で新規買付終了
要望案のイメージ
つみたてNISA
・年間投資枠(40万円)を拡大
・非課税限度額(800万円)を拡大
対象商品は、長期の積立・分散投資に
適した株式投信
成長投資枠(仮称)
・年間投資枠を別途設定
・非課税限度額を内数として設定
※対象商品は、上場株式や一定の商品性
を持った株式投信等
◆ 資産形成促進に関する費用に係る法人税の税額控除の導入【事項要望】
【現状及び問題点】
○ 高齢社会対策大綱(2018年2月閣議決定)において、勤労者が資産形成を開始するきっかけが身近な場で得られるよう、職場環境の整備を促進することが盛り込まれたところ。
○ しかしながら、企業による従業員の資産形成に関する取組みについては、いまだ道半ば。今後、企業の取組みを促進していくことが重要。
【要望事項】
○ 資産形成に関する企業の取組みを促す観点から、資産形成促進に関する費用(例えば、企業が行う金融経済教育に関する費用)の一定割合について、法人税の税額控除を導入すること。
○ 職場つみたてNISA奨励金が「賃上げ促進税制」の対象となる旨を明確化すること。
◆ 教育資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置の見直し 〔文部科学省主担〕
【現状及び問題点】
○ 祖父母(贈与者)が子・孫(受贈者。30歳未満に限る。)の口座等を開設し、教育資金管理契約に基づき贈与した場合、贈与時には1,500万円までは贈与税が非課税となる。契約終了時に贈与税の精算が行われ、残高及び教育資金以外の支払分は、贈与税が課税される。
○ 本制度は、贈与された資金が長期に金融機関に預け入れられるため、一部を投資商品で運用することにより、その果実を教育関連団体等への寄附(第三者への教育支援)につなげることも期待されているところ。
○ しかしながら、現行、投資商品での運用損失や教育関連団体等への寄附等については、教育資金以外の支払分とされ、贈与税が課税されてしまうため、贈与された資金が十分に活用されていない現状。
【要望事項】
教育資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置において、①一定の投資商品(例えば、つみたてNISA対象商品等)に係る運用損失及び②教育関連団体等への寄附金を、契約終了時の贈与税の課税対象から除外するなど、制度の拡充を措
置すること。
◆ 金融所得課税の一体化(金融商品に係る損益通算範囲の拡大) 〔農林水産省・経済産業省が共同要望〕
【現状及び問題点】
○ 金融商品間の損益通算の範囲については、2016年1月より、上場株式等に加え、特定公社債等にまで拡大されたところ。
○ しかしながら、デリバティブ取引・預貯金等について、未だ損益通算が認められておらず、投資家が多様な金融商品に投資しやすい環境の整備は、道半ば。
○ 特に、デリバティブ取引については、ヘッジや分散投資として活用されることで、家計による成長資金の供給の拡大と家計の資産形成に資することが期待されるが、現状、個人投資家による活用が限定的。
【要望事項】
証券・金融、商品を一括して取り扱う総合取引所が2020年7月に実現したことを踏まえ、投資家が多様な金融商品に投資しやすい環境の整備を図り、家計による成長資金の供給拡大等を促進する観点から、金融商品に係る損益通算範囲をデリバティブ取引・預貯金等にまで拡大すること。
【令和4(2022)年度税制改正大綱(抜粋)】
デリバティブ取引に係る金融所得課税の更なる一体化については、金融所得課税のあり方を総合的に検討していく中で、意図的な租税回避行為を防止するための方策等に関するこれまでの検討の成果を踏まえ、早期に検討する。