財政の問題が目に見えた形になる 上

顕在化する財政問題

2024年に日本で金利が上昇し始めると、政府債務が増大します。日本のGDP比債務残高が先進国の中で圧倒的に高いのですが、それがさらに高くなる可能性が高まっています。

自分の金融資産は外国に避難

私は、この状況に危機感を覚え、10年以上前に金融資産の大部分を外貨資産(最初は外貨MMF、その後外国く株式ETF)に換えました。日本銀行、財務省のOBは、日本円で受け取った退職金を外貨や金に換えるそうです。

今までは強制的に低金利を作り出して、債務残高があまり表面化してきませんでしたが、来年はいよいよそれが問題化するかもしれません。

学んだドイツ、学ばない日本

上のグラフの中でドイツだけが債務残高が低いのですが、これはハイパーインフレを経験した学習効果が表れているからでしょう。日本も終戦直後に20000%のハイパーインフレを経験したのですが、すっかり忘れているようです。

政府債務残高のGDP比

今年公表された様々な意見を確認します。


財政健全化についての論点

-小林慶應義塾大学教授から聴く/経済財政委員会

経団連は7月5日、経済財政委員会(柄澤康喜委員長、鈴木伸弥委員長)を開催した。慶應義塾大学の小林慶一郎教授から、「財政健全化についての論点」とのテーマで説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 財政リスクによる経済停滞

経済の低成長が財政悪化をもたらすのは当然であるが、反対に、財政悪化リスクが経済停滞をもたらす可能性もある。私が他の研究者と共同でディザスター(財政破綻)・モデルという理論を活用した分析を行った結果、政府債務残高の増大は「財政破綻が起きた場合、民間資本ストックに巨額の税が課される」という人々の予想につながり、経済成長率が低下する、というメカニズムが存在することがわかった。これは、ハーバード大学のカーメン・ラインハート教授とケネス・ロゴフ教授による有名な先行研究とも軌を一にする。

財政政策の景気刺激効果が減退した、との指摘もある。近年、日本では財政乗数がほぼ1まで低下している、また、海外では非ケインズ効果(財政支出の削減や増税が、むしろ経済にプラスに働く)の存在も指摘されている。

■ 日本の財政悪化の現状

日本の財政は歳出が税収を大幅に上回り、国際的にみても債務残高の対GDP比率は非常に高いが、昨今の低金利によって、比率の伸び自体は鈍化している。

経済成長率が金利を上回り続ける限り、財政破綻は起きない。しかし低金利の継続は格差拡大の副作用でもあり、本来より低い経済成長率にもつながる。これが本当に望ましい姿かどうか、考える必要がある。

■ 財政再建と独立財政機関

私が所属する研究グループでは、経済学者と一般国民それぞれに対し、財政に関するアンケートを実施した。その結果、経済学者と国民は共通して財政赤字を問題視し、財政赤字を放置した場合、将来、増税や歳出カットなど厳しい財政再建を強いられると予想していることがわかった。しかし、財政赤字の原因については、経済学者の多くが社会保障費を挙げる一方、国民は公務員の人件費や無駄遣いだと考えている。消費税への認識は、経済学者は肯定的であるが、国民は否定的であった。

こうした国民の認識を踏まえれば、日本ですぐに財政再建を実施できるとは考えにくい。まずは政府が財政健全化について長期的にコミットすることが肝要である。具体的には、欧米のような中立的な独立財政機関や経済財政諮問会議などにおいて、数十年先までの長期的財政見通しを公開し、国会などの政策論議に供することが考えられる。

■ 世代間協調問題とフューチャー・デザイン

世代間協調問題とは、現役世代がコストを支払い、将来世代がリターンを得る、コストとリターンの間に時間差があるという問題である。利己的かつ合理的に考えれば、現役世代が将来のためにコストを支払うメリットはない。

この問題へのアプローチとして、フューチャー・デザインという考え方を紹介したい。これは現役世代が将来世代になったつもりで現在の政策を議論する仕組みである。例えば、岩手県矢巾町では、フューチャー・デザインを活用して住民が議論した結果、現在は水道事業が黒字であるにもかかわらず、将来必要となる設備更新に備え、水道料金を引き上げた。フューチャー・デザインを用いれば、短期的には不利益でも、長期的な利益を重視し、通常と異なる意思決定が行われる可能性がある。矢巾町の事例は、米国の国際政治経済誌フォーリン・アフェアーズの100周年記念号巻頭論文で紹介されるなど、世界的にも注目されている。


NRI

2025年度PB黒字化目標と財政健全化

木内 登英 2023/01/25

政府の2025年度のPB黒字化目標堅持は形式的

鈴木財務相は1月23日の財政演説で、2025年度の基礎的財政収支(プライマリー・バランス:PB)黒字化目標の達成に向けて、歳出・歳入両面の改革を着実に推進する、と表明した。政府は、形式的には2025年度のPB黒字化目標を堅持しているのである。ただしそれは、2025年度のPB黒字化目標が達成可能と考えているからではなく、仮にそれを修正すれば、政府が中長期の財政健全化の姿勢を見直したと受け止められ、財政規律の歯止めが失われ、財政拡張的な意見が与党内で一気に高まり歯止めが利かなくなってしまうことを懸念しているためであるように思われる。

およそ実現可能とは思われない、2025年度のPB黒字化目標を形式的に堅持するだけで、財政健全化の道筋が維持される訳では当然ない。より現実的な目標に修正した上で、それを達成するためにより具体的な歳出・歳入両面の改革を明示すべきではないか。

内閣府の試算は2025年度のPB黒字化目標が達成可能と示唆

内閣府は、24日に開かれた経済財政諮問会議に、「中長期の経済財政に関する試算」を提出した。そこでは、従来から、中長期的に実質・名目成長率ともにゼロ%台半ば程度での推移を前提とする「ベースラインケース」と、政策効果が発揮されることで、成長率が実質2%程度、名目3%程度を上回る「成長実現ケース」で、2つ試算結果が示される。

成長実現ケースでは、2026年度にPBが黒字化するとの試算結果となった。2026年度の黒字化は昨年7月の試算でも示しており、見通しが維持されたのである。さらに、成長実現ケースで1年あたり1.3兆円程度の歳出改革を継続していけば、PB黒字化は2025年度へ1年程度の前倒しが視野に入る、としている。つまり、2025年度のPB黒字化目標は依然達成可能であることが示唆されている。

PB黒字化目標の修正は不可避に

しかし、足元から実質2%程度の成長ペースが始まるとの想定は、あまりにも現実味を欠く。「岸田首相が掲げる『新しい資本主義』の下、人への投資が促進される中で生産性と潜在成長率が上昇し、所得の増加が消費に結びつくことを前提としている」と説明されているが、それらの施策は未だ具体化されていない。また、それが具体化されるとしても、成長率の押し上げ効果を発揮するまでに一定の時間がかかるはずだ。

2025年度のPB黒字化目標は、かつては中期目標であったが、もはや2025年度は目前に迫ってきている。2025年度のPB黒字化目標を修正し、黒字化の時期を先送りするのが妥当なのではないか。

PB黒字化目標の修正と歳出・歳入改革の具体策提示を同時に

しかし一方で、目標の先送りをすることが財政規律を一段と緩めてしまうことがないように、歳出・歳入改革の具体策を決めたうえで目標修正を行うことが求められる。目標自体がより現実的なものになると同時に、財政健全化がポーズだけになっている現状を変え、財政健全化の実効性を高めることができるだろう。

防衛費増額、子ども関連予算拡大を議論する中で、追加で歳出・歳入両面の改革の具体策を決めることにはかなりの困難が伴うことは確かである。金利上昇も財政健全化には逆風となるだろう。

しかし、数字遊びのようなPB黒字化試算を示すことで財政健全化のポーズだけを維持することは終わりにしなければならない。歯止めのかからない政府債務の累積には、将来の需要を奪い、経済の潜在力を一段と低下させかねない大きなリスクが伴うことを理解する必要がある。

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