最後にしりぬぐいをさせられるのは国民

放漫財政、アベノミクスのつけを払う時期が近づいてきたように思います。

以下のロイターの記事は、日銀が苦しくなるというような見出しですが、日銀の職員は身分が保証されているので苦しくはならないでしょう。

最後の方に、国民、特に富裕層が痛みを受けると書いてあるように、最後に尻拭いをさせられるのは国民です。

具体的には、銀行・郵便局に預貯金のある人たちです。

私の銀行預金残高は、クレジットカード決済と固定資産税等の引き落とし用の分しかありません。

私、連れ合い、子供たちはそれ以外の資金、NISA、iDeCo、特定口座に移し、外国株式インデックスファンド、ETFで保有しています。


「上げるも地獄、上げぬも地獄」の日銀

2025年2月15日のロイターの記事を読んで見ましょう。

日銀は1月の金融政策決定会合で、0.25%程度から0.5%程度への利上げを決めた。これで政策金利は17年ぶりの水準となり、次の利上げは過去30年間なかった水準への挑戦になる。「経済・物価の見通しが実現していけば、それに応じて利上げを続ける」というのが日銀の岩盤メッセージである。今後も6カ月に1度程度のゆっくりした利上げを見込む市場関係者が多い。

<見えぬ高揚感>

日銀が利上げを継続するのは、賃金と物価がともに上昇するようになり、2%物価目標の実現が視野に入ってきたからである。しかし、「デフレ脱却の象徴である2%物価目標がとうとう実現する」という高揚感は、国民にも政府にもない。植田日銀総裁の表情にも晴れやかさはない。

それもそのはずだ。2%物価目標の達成とは言っても、その達成のされ方は政府や日銀が描いていた絵姿とは大きく異なる。最初の想定では、大規模な金融緩和などで日本経済がよみがえり、個人消費などの内需が熱を帯びて物価が上がるはずだった。今われわれが目にしているのは、食料などのコストプッシュインフレで国民が疲弊し、そこに住宅ローンなどの金利負担も加わるという厳しい現実だ。

インフレを巡る日銀と国民の目線も、すっかりずれてしまった。日銀はよく「基調的な物価上昇率」という言葉を使う。食料やエネルギーなどの価格を除いた方が、物価上昇の実力がわかるという考え方に基づく。多くの場合はそれでよい。しかし、今の日本では、日銀が重視していない食料やエネルギーこそが、長期にわたる物価上昇の主犯である。

2021年から24年までの3年間で、食料とエネルギーを除く消費者物価の上昇は4.6%にとどまる。年平均の上昇率は1.5%程度であり、これを「基調的な物価上昇率」と見るなら確かに2%より低い。しかし、同じ3年間に食料は16.7%、エネルギーは14.2%上昇しており、それらを含めた消費者物価の「総合」は8.7%の上昇である。

この「総合」は、ほとんど動いていない「持ち家の帰属家賃」を含む分、これでも低く抑えられている。「持ち家の帰属家賃」は技術的な理由で物価指数に入っているだけで、家計が直面する物価とは関係ない。したがって、政府統計における実質賃金の計算では、消費者物価の「持ち家の帰属家賃を除く総合」が使われる。それでみれば、物価は3年間で10.9%、毎年3─4%ものペースで「基調的に」上昇している。2%をはっきり上回る物価上昇が3年にわたり続いているのだから、「基調的な物価上昇率は低い」という日銀の説明には虚しい響きがある。

<金利上昇も困るし円安も困る>

では、この物価上昇を抑えるために日銀がもっと急いで利上げすべきなのだろうか。答えは単純ではない。もし、景気が強すぎるせいで物価が上がっているなら、利上げで景気を多少冷やしてでも物価上昇率を下げた方が良い。しかし、今の物価上昇の多くは輸入コストの上昇・高止まりによるものであり、経済成長率はインフレになる前よりむしろ低い。

例えば、昨年10─12月の個人消費は、コロナ禍前、すなわち5年前の19年の水準すら回復できていない。リーマンショックの後でさえ、個人消費は5年目には明確に回復していた。デフレ・円高のあの頃よりも、インフレ・円安の今の方が日本経済は厳しくなっているのだ。そこまで痛めつけられた日本経済に利上げでさらに負荷をかけるのは、本来なら避けたいところである。植田総裁がうれしくなさそうなのは、それをわかっているからだろう。

それでも日銀が利上げせざるをえないのは、今述べた輸入コストの上昇・高止まりの一因が円安にあるからだ。24年のドル/円相場は3年前に比べて4割近くも円安である。食料やエネルギーの多くを輸入に頼る日本では、円安になれば生活必需品の価格がどうしても上がる。

円安の背景としては、製造業の海外移転が進んで貿易赤字が定着したことや、少額投資非課税制度(NISA)を通じた海外への資金流出なども言われている。しかし、この3年に起きた最大の変化は内外金利差の拡大だ。米国金利が大幅に上昇する一方、日銀の利上げは大きく出遅れ、それが今に至る円安の主因である。
かつて望まれた円安も、今は国民にも政治家にも頭痛の種である。高インフレの放置は国民の目には政府の無策と映るので、政府・日銀はさらなる円安を避けたい。景気が良いわけではなくても、利上げで円安を食い止めなければならない。「利上げも困るが円安も困る」というのがおそらく石破首相の本音であり、日銀は「上げるも地獄、上げぬも地獄」のかじ取りを迫られる。

<「応能負担」なくして良いインフレ対策なし>

日銀がそういう厳しいトレードオフに追い込まれているのは、日銀自身のせいではない。もともとコストプッシュ型のインフレの場合、金融政策だけで対応すれば事態は余計に悪化する。この「不都合な真実」について少し説明を加えよう。
食料・エネルギー中心のインフレは、ただでさえ所得が少ない家計に大きな痛みを与える。そして利上げも、金利収入が増える富裕層にはプラスになるかもしれないが、住宅ローンがある世帯などには追加的な痛みとなる。つまりコストプッシュ型のインフレに利上げで対応すれば、そもそもインフレで悪化した不平等がますます悪化するのである。それは社会正義に反するうえ、マクロ経済にも悪影響を与えるので、政治は不安定化の傾向を強める。それが既に米欧で起きたことをわれわれは知っている。

あるべき処方箋は3つしかない。第1に、元になっているコストそのものを下げることである。要は世界的に食料やエネルギーの価格が下がればよい。その意味では、トランプ大統領がエネルギー価格を下げてくれるならありがたいが、うまくいくかどうかはわからず、いずれにせよ他力本願である。

第2に、実質経済成長を高め、実質所得を増やすことである。全体のパイが拡大し、低所得層の生活も以前より改善するなら、多少のインフレや不平等拡大は大きな問題になりにくい。したがって「物価に負けない賃上げを」という考え方は正しい。しかし、「賃上げの原資確保のため価格転嫁や値上げが必要」というのでは本末転倒であり、それだとインフレがさらに続くだけで事態は改善しない。実質賃金を増やす方法は、値上げではなく、マクロの生産性を高める成長戦略しかない。ただ、できる成長戦略はずっと前からやっており、そう簡単に成果が挙がるものではない。

第3に、所得の再分配である。コスト増の痛みを和らげる方策は、これまでも重ねられてきた。エネルギー補助金や所得減税・給付金などだ。しかし、それには多額の財源が必要なので長くは続けられない。だとすれば、インフレを相対的に我慢できる富裕層にはむしろ負担増を求め、それを財源としてインフレで困る人々を手厚く支援すればよい。コストプッシュ型の物価上昇は災害と同じであり、日本全体を襲う「国難」である。被害の小さい人が大きい人の痛みを一部引き受け、国民全体で痛みを分かち合う以外に、本質的な対応方法はない。

もちろん、富裕層に負担増を求めるには政治の決断が必要だ。しかし利上げに頼るだけでは、痛みのひどい人たちがさらなる痛みを受けるだけである。繰り返すが、インフレと高金利が続いた米欧では社会の分断が進み、国民の不満が結局政治に跳ね返ってきている。そのことはよく覚えておきたい。

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