子供の教育、金融教育

パックンの子育てを読んで見ましょう。

ナイナビ子育て、2025年06月01日、03日


高校生2人の父・パックンに聞く、家庭でのマネー教育/パトリック・ハーランさんインタビュー【1】

1993年米ハーバード大学を卒業後に来日し、お笑いコンビ「パックンマックン」としてデビューしてから、投資家・コメンテーター・大学講師など多才な活躍をするパックンことパトリック・ハーランさん(54)。少年時代は経済的に豊かとはいえず、アルバイトをして家計を助けていたのだそう。

このほど『パックンの森のお金塾 子ども投資』(主婦の友社)をリリースしたパックンに、2児の父として子育てで大切にしていることを聞きました。

子どもたちをリトル・パックンにしないように意識してきた

ーーお子さんたちが小さいころを振り返って、大変だったことはなんでしたか?

パックン 大変だったことは本当にいっぱいありますね〜! 息子は赤ちゃんのころは縦抱っこじゃないと寝てくれなかったんです。縦抱っこで寝ても、ベッドに寝かせようとするとすぐ泣き出す敏感な赤ちゃんでした。僕もソファでずっと抱っこしたままうとうとして、眠れない夜がいくつもありました。当時、家で原稿を書く仕事のときは、抱っこひもで抱っこしたままパソコンで作業していたことも。

娘が生まれたころ息子は2歳でしたが、落ち着きがなくてちっともじっとしていられない子でした。外出先で娘のおむつ替えをしている間にどこかに行っちゃうようなアクティブな子だったんですよ。娘の子育てのほうが圧倒的に楽でした。

ーーそうなると、ヒヤリハットな事件もありましたか?

パックン アメリカのおじいちゃん・おばあちゃんに子ども2人を預けたときには、息子がおじいちゃんの携帯を勝手にさわって緊急番号911に電話をかけ、救急車を呼んでしまったこともありました。おじいちゃんが気づいたときには「通報がありました」と警察がやってきて、「本当にあなたの孫なの?」と疑われたりして大騒ぎに。そんなこともあったけれど、振り返ってみれば大変なことも子育ての醍醐味かもしれませんね。

ーーお子さんたちが高校生になった今は、どんなことを意識して子育てしていますか?

パックン 僕は子どもたちを“リトルパックン”にしないように、子どもたち自身のやりたいことや考えを大事にすることを意識しています。だから、本人たちの興味が赴くままにいろんなことにチャレンジさせます。ピアノを習いたいと言えば習わせるし、途中で辞めたいと言えば辞めてもいい。

学校の勉強も、僕は毎日「勉強しろ」とは言いません。学校がきついならいつ転校してもかまわないし、大学も行かなくてもいいよと伝えています。大学に行くと決めたなら応援するけれど、お金を出すのだからそれなりに責任を持たなきゃいけないよ、と話しています。

今、息子と娘は2人ともインターナショナルスクールに通う高校生。なんだかんだいって、2人ともちょっとひょうきんな人になったし、古いアメリカの映画や音楽も大好きになったし、やっぱりちょっとパックン色は強いかもしれません(笑)。

■子どもたちが小学生のころに証券口座を開設!
ーーお金の教育については、お子さんたちが何歳くらいからどんなことを意識していましたか?

パックン お金のことに限らず、僕はどんなことも子どもに100%オープンに話してきました。性教育のこと、薬物乱用のこと、自殺や殺人のことなど、人間社会に起こるさまざまなことを話します。
お金のことに関しては、お金は太陽と空気以外のすべての生活にかかるもので、働いて稼ぐものだよ、ということを小さいころから意識して伝えてきました。

といっても、そんなに厳しくはないですよ。子どもたちが小学生のころはお小遣い制ではなく、友だちと遊びや買い物に行くときにお金を渡すスタイルでした。渡すときに「必ずレシートをもらってね」と伝えて、子どもが帰宅したら、レシートを見ながらおつりをチェックするんです。足りないときには「ちょっと足りないよ」と指摘すると、子どもが「そうだ、自販機でジュースを買ったんだった」と気づく。そうやって、その日どれだけお金を使ったかを一緒に確認する程度でした。

ーーお子さんたちが8歳のころに証券口座を開き、毎年クリスマスに投資信託をプレゼントしてきたそうですね。

パックン はい。投資の仕組みはそのころから話して教えているし、子どもたちが10歳になるとジュニアNISA(※)を開設して、たくさんパンフレットをもらったなかからどの投資先がいいかを一緒に選んだりしていました。人生で永遠に付き合うことになるお金の勉強と、投資という社会的な仕組みのことは早い段階から教えました。
(※2025年現在は廃止)

ーーパパの投資教育に対して、お子さんたちの反応はどうでしたか?

パックン たぶん「うるさいなぁ」って感じてると思いますよ。わが家では、食事のときにお金のことに限らず、目につくものはなんでも指差して「あれはどうしてあんな形に作られていると思う?」などと子どもたちにいろんな質問をするんです。質問することで、子どもが自分で想像して考えるくせをつけたいからです。

そんなふうにお金のことについても質問したり話したりしてきた結果、高校生になった子どもたちは、トランプ政権の関税政策で株価が乱高下していることについても、その意味をしっかり理解しているようです。そんな彼らの成長はとても誇らしいですね。

■お小遣いは2週に1回、ただし条件つき
ーーお子さんたちは、お小遣いをどんなふうに管理していますか?

パックン わが家は2週間に1回、学校への交通費も含めて必要なお金をお小遣いとして渡しています。ただし、毎日食事の後に自分の皿を片づけることと、自分の部屋をきれいにすることが条件。部屋が汚れていれば、交通費だけ渡します。

小遣い帳をつけることにはこだわっていません。僕自身、子どものころに母に小遣い帳を細かく書かされてすごく嫌だった記憶があるんです。僕が郵便配達をしてお金を稼いだのに、チェックされるのが嫌で一度大げんかして小遣い帳を捨てました。それ以来、細かく帳簿をつけることはしていません。

だから子どもたちにも、厳しいお金教育はしたくないな、と。欲しいものがあるときは予算を立てることを日ごろから教え、日常生活で節約ぐせをつけられればいいと思います。

今回出版した本は、子どもへのマネー教育や投資の基本などについて書きましたが、僕も決してこの本の通りにマネー教育しているわけではありません。この本はアイデアであって、マニュアルじゃないです。本に書いてあるアイデアのなかから、各家庭にあった方法を取り入れてもらえたらいいと思います。

お金は夢をかなえるためのツール。親子で学びたい、お金の正しい知識とは?/パトリック・ハーランさんインタビュー【2】

このほど『パックンの森のお金塾 子ども投資』をリリースしたパックンにインタビュー。前編では二児の父であるパックンに、子どもたちへのお小遣いや投資教育について聞きました。後編では、お金をめぐる価値観、お金との向き合い方について聞きました。

■子どもの質問に答えられないなら「いい質問だね!」

ーー子どもへのマネー教育は、日本とアメリカでどのような違いがありますか?

パックン アメリカでは、約30州で高校での金融教育が義務化されていて、ファイナンシャルリテラシーを学ぶことを高校卒業の要件としています。ただ、州によって定められている教育方針は違うし、学区によってカリキュラムも違うから一概には言えません。僕はラッキーなことに、親からも学校でも教えてもらって学生時代に投資のことを理解していましたが、そうじゃないアメリカ人もいます。アメリカ人がみんなファイナンシャルリテラシーが抜群、というわけではないです。

ただ僕の経験上では、日本の金融教育はちょっと足りないと思いますね。日本はアメリカと違って文部科学省が教育課程の基準を定められるのだから、もっと金融教育を増やしていいんじゃないかな。予算はどうやって立てるのか、エンゲル係数とは何か、投資での複利効果のことなど、義務教育の一環として教えてほしいと思います。僕の本もぜひ参考にしてほしいなぁ!

ーー親自身も金融の正しい知識を知っておくことが必要ですね。

パックン 親もお金の知識についてあいまいな部分はありますよね。せめて子どもから質問されたときには答えられるようにしておきたいものです。質問に答えられないときには、ひとまず「いい質問だね!」と言えば大丈夫。「じゃあ一緒に調べようか」と、子どもと一緒に学ぶ姿勢をとってほしいと思います。

最近はトランプ政権の関税政策が話題になっていますね。関税はどういう仕組みなのか、関税を理解するのに重要な国際収支とはどういうものかなど、子どもに聞かれて答えられなければ「いい質問だね」と言って、一緒に調べてみましょう。そうやって親が学ぶ姿を見た子どもは「学校を卒業しても学び続けるものだ」と理解して、生涯学習の姿勢が身につくと思います。

■年収や月給について日常的に会話をしよう

ーー親子でニュース番組を見ながら会話するのもいいですね。最近では、中・高校生が闇バイトに関与する事件もあり、親としては不安に思うことも。マネー教育の観点から、その危険性をどんなふうに教えるといいでしょうか。

パックン このニュースについて考えることも、お金の価値観を教える一環になりますね。お金を稼ぐためにどれくらいの努力と労力が必要なのかを、日常的に親子で話すといいでしょう。

たとえば、公立学校の先生は公務員なので年収などが公開されています。平均年収が約500万円だとすると、年収は月給×12か月に賞与(4.4か月)となるので、月収は約30万円くらい。家賃がその1/3とすると10万円、そこから子どもの教育費や光熱費などを除けば手元に残るのは15万くらい。1カ月働いて、1日5000円くらいで生活すると考えられます。

ーー実際にはそこから税金なども引かれるので、手取りはもっと低くなりますね。そうしたシミュレーションをしておくことで、「1日で10万円稼げるバイト」などの甘い話に「おかしい」と気づけるようになるのですね。

パックン そうそう。こうやって考えた経験がある子どもは、1日で10万円稼げるバイトを見つけたら「ラッキー!」じゃなくて「ありえなくない?」と気づくはず。

だけど、残念ながら闇バイトに巻き込まれている子は、毎日お父さんお母さんと話すチャンスがないかもしれないですね。金融教育よりも、まず「今日は何した?」「明日はどんな予定?」と親子で毎日コミュニケーションを取って、すぐに相談できる関係性が何よりも大事です。

子どもにはお金より大事なことがいっぱいあります。勉強以外の友だちとの経験や、習い事などでの学びも大事なんです。もちろん、親子関係も。金融教育をしようとして、その関係性が崩れたら悲しいです。まずはなんでも話せる親子関係を大事にしたいですね。

■お金は幸せに生きるためのひとつのツールにすぎない
ーーわが家は3人子どもがいるのですが、同じように教えていても、子どもによってお金の扱い方が違います。とくに第二子の長女は、ある分すべて使ってしまうタイプで……。

パックン そのまま社会人になったら困ることは間違いないと思います。消費者金融を利用するようになってしまったら大変! そうなる前に、予算を立てて管理する方法を身につけたいですね。テレビをつけると消費者金融のCMがたくさん流れますが、高い金利が付く借金はとても危険です。僕はCMを見るたび、子どもに「絶対に消費者金融でお金を借りたらいけないよ」と言っています。

お小遣いをあるだけ使ってしまって欲しいものを手に入れられないなら、「貯金箱を作って一緒に貯めてみよう」とママが力を貸してあげるといいかもしれませんね。娘さんが勝手に開けられないようにして、どれだけ貯まったか定期的に見てみましょう。お小遣いのうちどれくらいの金額を何カ月貯金すれば欲しいものが買えるか、わかると思います。

ーーでは、パックンがもし“ひとつだけ”子どもにお金について教えられるとしたら、どんなことを教えたいですか?

パックン いい質問ですね(笑)。以前の本にも書いたけれど「お金に踊らされないでいこう」ということです。世の中にはお金に踊らされている大人もいっぱいいますよね。僕も子どものころ家が貧しかったときに、毎日お金のことばかり考えてつらかったです。でも、今はお金のことを考えるのが楽しくなった。それは、お金に踊らされているのではなくて、好きな踊りをしていたら、たまたまそれで稼げるようになったからです。

子どもにはお金中心の人生を送ってほしくないです。お金は目的じゃなくてあくまでもツール。そのツールを使って何が作れるのか、どういう生活ができるのか、どういう安心感が買えるのかを教えていきたいです。お金を生かして自分の夢をかなえて、理想の人生を築いてほしいなと思っています。

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