お金の素人は専門家に相談すべきか 友達、親、投信ブロガー

◎今日のテーマ:お金の素人は専門家に相談すべきか:友達、親、投信ブロガー

大垣尚司教授

文化放送ラジオの「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」で大柿尚司氏が、ハーバード大学の研究論文を紹介していました。

同じレベルの素人が議論することが良い

その内容は、「個人の資産運用に関して、金融機関などのプロは当てにならない。同じレベルの素人が集まって、議論した方法で運用した方が、納得感もあって良い。」というものです。この番組の中で、大垣氏は、「銀行などのプロがどういう商品を顧客に勧めるか、ということは、顧客が少し考えれば分かる。」という趣旨の発言をしていました。つまり、プロは自分が儲かる商品しか売らない、という風に私は受け止めました。

ところで、日本とアメリカには違いがあるので、この論文の内容がそのまま日本に当てはまるとは考えにくいように思います。

① アメリカではETFが普及、日本ではアクティブファンド

アメリカでは1993年にSPY(アメリカSPDRのS&P500のETF)が誕生し、その後もIVV、VTI(Vanguard Total Stock Market ETF)、VOOなどの有力なETFがどんどん成長してきて、個人投資家は手軽に投資できる環境にあります。一方、日本では投資信託と言えば、まだアクティブファンドが中心で、新聞・雑誌などのメディアも広告宣伝主である証券会社等に忖度して、インデックスファンドの記事をほとんど扱わない状況が続いています。

② ファンドに対する信頼度の差

ファンド(投資信託)には、長年のマイナス・イメージが蓄積されて、日本では胡散臭いものという風に受け止められることが多いと言えます。一方、アメリカでは、一般の国民からも尊敬されているウォーレン・バフェットがETFを推奨した結果、日本のようなうさん臭さはあまりないと思われます。

③ IFA

IFAは“Independent Financial Advisor”の略で、日本では「独立系ファイナンシャル・アドバイザー」などと呼ばれています。銀行や証券会社をはじめとする特定の金融機関からは文字通り独立した存在で、中立的な立場から顧客にアドバイスする資産運用の専門家です。アメリカでは、このIFAが活躍していますが、残念ながら日本においてはそのような状況に達していません。このため、ETFやインデックスファンドが十分に育っていないという状況です。

④ アメリカ株式は30年間の成功体験、日本の株式市場は低迷の30年間

アメリカでは最近30年間で株価が5倍になりましたが、日経平均はバブルの最高値に及ばない状況が続いています。アメリカは株式やファンドにどんどん投資が継続していますが、日本は銀行預金ばかりが積みあがっています。

⑤ ウォーレン・バフェットとバンガード・グループ創業者ジョン・C・ボーグルの存在

アメリカでファンドの成長に大きな貢献を果たした人物として、ウォーレン・バフェットとジョン・C・ボーグルがいます。しかし、日本にはそのような人物がいません。

SPYのトータルリターン

以上のような違いから、アメリカでは投資に関する知識を多くの人が持っていますが、日本ではそうはなっていません。従って、友達と情報交換しても、非常に空疎なものになる可能性が高いと思います。私の友人の元銀行支店長は、SPYの設定来の年率トータルリターンが10%であることを知りませんでした。

投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year

銀行の支店長ですら、その程度の知識ですから、今60歳代、70歳代の親の世代の知識は全く使い物にならないと思われます。しかし、日本ではWebページが発達していて、「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year」で選ばれたファンドは優良なものが多いと思われます。これを参考にして勉強することには意味があると思われます。ただし、ここはインデックスファンドが中心で、アメリカで主流になっているETFに関する情報がありませんから、モーニング・スター、楽天証券、SBI証券のWebページや投信ブロガーたちのブログで勉強するしかないと思います。