中小企業オーナーのつらい決断

立食パーティーの感染防止

2月に高校のクラス会がありましたが、その時は、中国武漢市が都市封鎖になりましたが、日本からは遠い国の話と思っていたころでした。立食パーティーで、各人のグラスには自分の名前を書いた付箋をつけることによって、感染防止を図ってはいましたが、現在では常識になった三密の典型のような状況でした。

中小企業の社長

その時、友人のうち数名は中小企業の社長がいました。彼らは「従業員に給料を払い続けるためにどれだけ悩み、苦労しているかを従業員にも知ってほしい。」と話していました。私は、サラリーマンしか経験したことがありませんので、彼らの悩みは分かりませんが、それぞれの立場で悩みがあるものです。

アメリカの事情

2020年4月3日のニューヨーク・タイムスにスモール・ビジネス・オーナーのつらい決断の記事がありましたので、参考にしたいと思います。以下は拙訳です。

中小企業オーナーのつらい決断は他人事でなくなった

企業経営者がビジネスを継続する方法を決定するに当たって、企業のために何年も働いてきた従業員につらい思いをさせる場合もあり得ます。メガンヌ・ウェッカーは、中国のサプライヤーからの感触で、自分の家族が経営している家具ビジネスが経済的打撃を受けると感じました。

ウェッカー女史は、シカゴ郊外にある74年の歴史のある家具屋であるスカイライン家具の会長で、中国の取引先からコロナウイルスの引きおこした経済的惨状を聞きました。スカイラインの年間売り上げは約5,000万ドルで、ウェイフェアやターゲットなどの小売店に販売し、サプライ・チェーンが途絶えれば、大打撃をも受けることになりえます。

彼女は最悪の場合に備えていますが、米国経済ががくんと止まった時に、彼女と父親でありスカイラインの最高責任者であるテッド・ウェッカーが、会社を休業しなければならない場合には、断腸の思いでした。二人は3月中旬に両工場を閉鎖し、自分たちへの給与支払いを停止しましたが、300人の従業員には2週間給与を支払い続けました。

しかし時間切れです。ウェッカー女史は他の中小企業オーナーと同様に、お店やレストランが店を閉じる中で、どのようにして会社を操業し続けるかを決断しなければなりません。給料削減、一時帰休、レイオフともなれば、何年も自分たちのために働いてくれた従業員に、痛手を被らせることにもなります。

損害は既に明らかになりつつあります。木曜日に労働局が発表したところによると660万以上の失業給付申請があり、前週の申請件数より328万件増加しました。

スカイラインとしては、イリノイ州が非常事態宣言をいつ解除するか分かりません。「私たちの最優先事項は従業員の健康・安全と、現在操業中のビジネスをちゃんと続けて、この苦境から脱出できることの二つだ。」とウェッカー女史は言います。「利用できる経済対策と借入を勉強するつもりだ。」

今月、ほとんどの従業員に給料を払う計画という救済措置を利用して、連邦資金を確保できると期待しています。

大企業がアドバイスを貰えるようなアドバイザー、弁護士、会計士をたくさん抱える余裕が、小さな企業にはないので、危機を潜り抜けることはずっと難しい。

先週末、ビザとモルガン・スタンレーのチーフ・エグゼクティブは、今年、従業員は一切レイオフしないと公に誓いました。この2企業にいる77,000人の労働者にとって安心できるものです。

しかし、この表明は金融機関にとって、現金を持ち、信用力とより多くのお金を借り入れられる力があるので、比較的容易です。この2社には、また、今後巨額の手数料を生み出すビジネスがあります。

他方、小売業は、コロナウイルス・パンデミックによって全国の小売店が閉鎖せざるを得なくなるはるか以前から苦しかったのです。メイシ―とギャップは、今週、合計で20万人以上の従業員をレイオフし、余裕資金はなく、店舗が閉鎖されているので収入を得ることができません。

小企業のオーナーにとって、すべての従業員を雇い続けることは不可能かもしれません。しかし、景気後退に耐え、存続可能な事業として、危機後に存続するために何が必要かということも決めなければなりません。

パンデミックを乗り越えられるほどの個人的資産を持っている実業家でさえ、別の市場ではどんな風にみられるのかを考えています。

インターネット・ドメイン・ネームの会社であるゴダディの創業者ボブ・パーソンズは、急減した収入を何とかしようとしていると言いました。

彼は、900人の従業員を抱える18のビジネスを築き上げましたが、ほとんどすべてを閉鎖しました。その中には、アリゾナにあるゴルフコースのスコッツデール・ナショナル・ゴルフ・クラブ、ハーレー・ダビッドソンの販売特約店も有ります。彼のホールディング・カンパニーであるヤム・ワールドワイドには、個人への貸付機関とフェニックスにある210平方フィートの商業用不動産も含まれています。

「私たちの所有する最大のビジネスはショッピングモールで、そこにはレストラン、ネイルショップ、フィットネス・センターがたくさんあるが、賃料はあまり入ってこなくなる。」と彼は言います。

彼の目標は900名の従業員のほとんどを4月中雇用し続け、その後見直すことです。

多くの事業オーナーは厳しい決断で自分も苦しんでいる、とピエール・デュポンは言います。彼は、たくさんの事業オーナーを顧客に持つ金融サービス企業のセリティー・パートナーズの共同経営者です。

長年スカイラインで勤めてきた家族も雇用しているとウェッカー女史は言います。「50年勤続祝いをした女性がいて、その息子も孫息子もここで働いている。」とウェッカー女史は言います。

ベンチャー・キャピタル企業ベンロックの共同経営者ブライアン・アッシャーは、素早く応急措置をすることを推奨しています。「もし削減しなければいけないなら、深く素早く削減するのです。そして残った社員が精神的に安心できるように、良くもてなすべきだ。」と彼は言います。

賃料には交渉の余地が十分あります。パーソンズ氏はテナントからの賃料が安くなることを予想していますし、アッシャー氏は自分が投資している会社に賃料引き下げを要請することを勧めています。彼は家主に賃料を10~20%、そして最大50%引き下げてもらいました。

もう一つの戦略は、保有する現金を長引かせることです。18か月分の現金を保有する会社は最高の状態で、12か月分なら18か月分持つようにすべきだとアッシャー氏は言います。12か月分以下しかなければ、苦しむことになります。

しかし、現金は賢く使わなければならないと、ウェル・ファーゴ・プライベート・バンクの事業移行プランニング責任者ボブ・ブキャナンは言います。

「もし短期的に生き延びられても、意思決定の結果、悪い状況に陥ったら、話にならない。」と彼は言います。「もしサプライヤーへの支払いを遅らせた場合、彼らは6か月後にまだビジネスをしているだろうか?そこまでじっくり考える人はあまりいない。」

信用力の無い中小企業にとって、景気刺激策が実現するまで生き延びるのは難しい。中小企業に焦点を絞ったコンサルティング企業ネクスト・ストリートの調査によると、25%は30日を乗り切るのが難しく、次の25%は90日を乗り切るだけの現金を持っていないとのことです。給与などの支払いを認める中小企業局の貸付金は、助けになるほど十分に早急なのかどうか分からない。

「お金がどんどん支払われているという報道を目にしますが、申請から資金提供まで3週間かかる。」とネクスト・ストリートの共同経営者マイケル・ロスは言います。そして申請が殺到していることを考えれば、銀行は現在のお得意様を優先する。

「人々が街で目にする中小企業には資金は届かない。中小企業は4~6か月間資金を受け取れない。」と彼は言います。

中小企業局を通じて認定されたリーダーたちは、年間300億ドル以上を扱ったことがないと彼は指摘します。彼らは今回40倍以上の3500億ドルを3か月間で処理しろと言われているのです。

以上が記事の拙訳でした。日本でもアメリカでも同じような問題があるのですね。