雇用調整助成金、休業手当

現在、新型コロナう言う留守問題で休業補償が問題になっていますが、今日は雇用調整助成金、休業手当について確認します。

(1)雇用調整助成金

休業、訓練、出向

雇用調整助成金は国が活用を勧めています。雇用調整助成金とは、経済上の理由により事業活動の縮小せざるをえ得なくなった事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練又は出向を行い、労働者の雇用の維持を図った場合に、休業手当、賃金等の一部を助成するものです。

テレワークできない職種

タクシー運転手、製造業における製品製造のオペレーターなどは現場に行かなければ仕事ができませんから、雇用調整助成金を企業が受け取り、それを利用して企業が出す休業手当を受け取れる可能性はあります。一方で、オフィスなどでパソコンに向かって仕事をしている人は、テレワーク・在宅勤務で業務をこなせますから、助成の対象にはなりにくいでしょう。

連れ合いは1か月

私の連れ合いは、テレワークになってから既に1か月が過ぎようとしています。多少の不便はありますが、なんとか会社の業務運営は続いています。喧嘩をしないようにしないと心がけています。

経済産業省の厳しい目

かつて私の知り合いの会社が雇用調整助成金を利用して休業手当を受け取ったにもかかわらず、仕事を自宅に持ち帰ってしていたので、経済産業省からお叱りを受けたことがありました。

政府は、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて、今までの雇用調整助成金の特例を拡充しています。

①休業を実施した場合の休業手当、または、教育訓練を実施した場合の賃金相当額の助成

★新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主の助成率 : 中小企業4/5 、大企業2/3

★新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主で、かつ、解雇等をしていないなど上乗せの要件を満たす事業主 : 中小企業9/10、 大企業3/4

②教育訓練を実施したときの加算 加算額

教育訓練が必要な被保険者の方に、教育訓練(自宅でインターネット等を用いた教育訓練含む)を実施 : 中小企業2,400円、大企業 1,800円

③支給限度日数

通常時は、1年間で100日ですが、緊急対応期間は、この限度日数とは別枠で利用可能

(注) 中小企業と大企業の区分は、以下の通りです。

業種 資本金 労働者数
小売業 5千万円以下 50人以下
サービス業 5千万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
上記以外の業種 3億円以下 300人以下

製造業の場合は以下の通りです。

資本金 労働者数 区分
1億円 100人 中小企業
1億円 500人 中小企業
5億円 100人 中小企業
5億円 500人 大企業

(2)休業手当

休業手当は、労働基準法 第26条に規定されています。

60%以上の休業手当

第26条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は休業期間中当該労働者に、その平均賃金の 100 分の 60 以上の手当を支払わなければな らない。60%という数字は小さいのですが、労働協約でもっと高い水準を設定しる企業も有ります。

パート、契約社員も含む

つまり、普段もらっている給料の60%をもらえるということになるかもしれません。ここでいう労働者には、正社員だけでなく、パートや契約社員なども含まれます。

しかし、最初の部分に「使用者の責(せめ)に帰すべき事由による休業」とあるので、これに該当するかどうかが問題になります。

この点について、厚生労働省はQ&Aを出しています。

<休業させる場合の留意点>

問1  新型コロナウイルスに関連して労働者を休業させる場合、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。

新型コロナウイルスに関連して労働者を休業させる場合、欠勤中の賃金の取り扱いについては、労使で十分に話し合っていただき、労使が協力して、労働者が安心して休暇を取得できる体制を整えていただくようお願いします。
なお、賃金の支払いの必要性の有無などについては、個別事案ごとに諸事情を総合的に勘案するべきですが、労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。
また、労働基準法においては、平均賃金の100分の60までを支払うことが義務付けられていますが、労働者がより安心して休暇を取得できる体制を整えていただくためには、就業規則等により各企業において、100分の60を超えて(例えば100分の100)を支払うことを定めていただくことが望ましいものです。この場合、支給要件に合致すれば、雇用調整助成金の支給対象になります。

※不可抗力による休業の場合は、使用者の責に帰すべき事由に当たらず、使用者に休業手当の支払義務はありません。ここでいう不可抗力とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。例えば、自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分検討するなど休業の回避について通常使用者として行うべき最善の努力を尽くしていないと認められた場合には、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当する場合があり、休業手当の支払が必要となることがあります。

以上が厚生労働省のQ&Aです。

労使でうまくやってください

たくさん書いてあるわりには、良く分からないというのが率直な印象です。結論としては、「雇用調整金は出しますから、経営者と労働者が話し合いをしてうまくやってください。」ということになるようです。

ここで問題は、「新型コロナウイルスは、使用者の責に帰すべき事由」に該当するかどうかですが、厚生労働省は以下のようにしています。

<感染した方を休業させる場合>

問2 労働者が新型コロナウイルスに感染したため休業させる場合、休業手当はどのようにすべきですか。

新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません。
なお、被用者保険に加入されている方であれば、要件を満たせば、各保険者から傷病手当金が支給されます。
具体的には、療養のために労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から、直近12カ月の平均の標準報酬日額の3分の2について、傷病手当金により補償されます。
具体的な申請手続き等の詳細については、加入する保険者に確認ください。

以上が厚生労働省のQ&Aです。上記のように、使用者の責に帰すべき事由には該当しないと考えるのが普通の感覚です。