新型コロナウイルスの見通し

モルガン・スタンレーが新型コロナウイルスについて、今後の工程表を出したそうです。その内容を検討したいと思います。

1.感染者数は急速に減少し、検査可能な人数は同月末までに1日あたり100万人に増加

封鎖解除と感染再発

アメリカでは厳しい規制のおかげで、感染者数が急速に減少しています。今後封鎖解除が現実の課題となるでしょう。日本における異次元金融緩和の出口戦略も難しいですが、新型コロナウイルスの出口戦略も難しい。どの分野からどの程度のスピードで緩和するかによって、感染再発のリスクもあるし、国民からの不満も高まるでしょう。

検査可能人数の違い

検査可能人数を月末までに1日あたり100万人にするとのことですが、日本は2万人にするとのことです。なぜ、これほどの違いがあるのでしょうか。理由はいくつかあるそうですが、韓国や欧米との比較で考えると

  • 韓国ではマーズが2015年に症例が確認されたために感染症に対して警戒していた
  • 北朝鮮が生物兵器を作っていることは明らかなので、それに対する防衛策としてウイルス対策がしっかりしていた
  • その結果、韓国では遺伝子検査の会社が成長していた
  • 日本には実際の症例も危機意識も希薄だったため、保険診療で重要視されなかった
  • その結果、日本では会社が育たなかった
  • つまり、日本はIR検査に関して、欧米韓国と比較して後進国だった
  • その上、今年2月になってもクラスターつぶしに精力を注いで、PCR検査の拡大に力を入れてこなかった
  • 埼玉の保険所長が話した通り、「病床が満杯になるのを避けるため、条件を厳しめにやった」

等の理由があったそうです。

2.ワクチンは、今秋までに健康医療従事者が使用可能になる見込みで、2021年春までにはより広範囲にわたって利用が可能に

最低18か月が必要

渋谷健司氏(英国キングス・カレッジ・ロンドン教授)等によると、ワクチンが使用可能になるには最低で18か月かかるとのことですが、モルガンスタンレーはもっと具体的な情報を手に入れているのかも知れません。ただし、岡田晴恵白鴎大学教授の話では、有効なワクチンが必ずできるわけではなく、かなり難しい作業になるという話でした。

少しずつだらだらと感染

そのようなことを考えると、ワクチンが十分に行き渡るには3年程度の期間が必要ではないでしょうか。それまでは、少しずつだらだらと感染が続いて集団免疫が進展することになるだろうと思います。その際、爆発的な流行にならないために、自主規制はいろいろな形で残るだろうと思います。

株価は事前に上昇

サラリーマンの出社、通勤、飲み会、映画、ライブ、エンターテインメント、国内旅行、海外旅行はいつ解禁になるのでしょうか。ただし、それら社会、経済活動が自由になる前に、株価は上昇し始めるでしょう。早ければ今年の夏、遅くても来年中には株式相場は回復することになると思います。

3.「第2波のピーク」:第1波のピーク時の感染者数は1日当たり3万~3万5千人、第2波のピーク時の感染者数は同1万~1万5千人程度

スペイン風邪の大きな波は2回

アメリカの感染者数は現在1日当たり3万人程度なので第1波のピークでしょう。今後徐々にこの数字が減少していくとの前提の下に、規制を緩和することを検討し始めたようです。しかし、人々に集団免疫ができなければ、再び感染が急速に拡大することは目に見えています。102年前のスペイン風邪の時も、第2波が翌年襲いました。

0波、1波、2波、3波

実は小さい山ではありましたが、1921年に第3波もありましたし、第1波の前の年に第0波ともいえる小さな山もあったのです。

4.最短でも2021年春ごろとされるワクチンの利用が可能になって、初めて終わりに向かう

これはその通りだと思います。

ソーシャルディスタンシングは2022年まで

新型コロナウイルスの感染拡大防止策の一つで、人と一定距離を置くようにする「ソーシャルディスタンシング(社会的距離をおくこと)」について、米国は医療体制が充実しワクチンが開発されなければ、2022年まで措置を継続しなければならない可能性があるとの研究報告が専門誌に発表されました。

ワクチンができるまで

報告をまとめたのは、ハーバード大学公衆衛生大学院の研究チームです。「重症者への対応能力が大幅に強化されたりワクチンが使用できるようにならなければ、人と一定距離を置く措置は2022年まで必要になる可能性がある」としています。

都市封鎖は一時的対症療法

現在中国では、都市を封鎖して外部との移動を封鎖したり、家から出ないようにする方法では、一時的に感染者が発生しない効果しかありません。例えば、現在東京では約1万人の感染者が確認されていますが、実際の感染者数は数十倍から100倍ともいわれています。仮に100倍の人が感染していたとしても、東京都全人口12,000,000人の10分の1以下です。

集団免疫とワクチン

日本人が欧米人と同レベルに感染する可能性があれば、第2波が来ても不思議なことではありません。医療崩壊を起こさずに、ゆっくりと少しずつ感染していくとすれば、1~2年で集団免疫ができるとされる7割が感染するのに5年、10年が必要になるでしょう。従って、このウイルスの終息にはワクチンが必要です。

5.薬品パイプラインへの期待

アビガン、イベルメクチン

パイプライン(開発パイプライン)とは、製薬業界における医療用医薬品候補化合物(新薬候補)のことです。製品パイプライン、新薬パイプラインともいわれます。現在、日本ではアビガンへの期待が高まっていますが、この薬が有効であるかどうかは、まだ確かではありません。また、アタマジラミ症などの寄生虫感染症の治療薬「イベルメクチン」も期待されているようです。

アビガンの副作用

アビガンは、妊婦あるいはその相手の男性に関して、リスクがあるので副作用が一部あることは分かっていますが、比較的実用に近い薬品です。また、感染初期では効果があるという報告も有ります。一方、まったく新しい薬剤開発には通常長い時間がかかります。

6.唯一ワクチンだけが真の解決をもたらす

新コロナウイルスの感染力と致死率が高いことを考えると、最終的にはワクチンに期待することがオーソドックスな思考だと思います。ただし、かつてのように人間がどの国にも安全に旅行できるようになるには、今後数年間を要するのではないでしょうか。