お金の悩みは話したがらない

お金の問題は、単なる数字ではなく、気持ちの問題かもしれません。リファイナリー29の2021年11月16日の記事をもとに考えてみましょう。以下は拙訳です。

誰でもお金の問題は抱えているのに、誰も話そうとしないのはなぜ?

個人のお金の話が力強く語られないのは個人的な問題だし、お金に関して選択するときには感情に突き動かされるからです。たぶん、あなたは消費を抑える必要があると思っていても衝動買いをする人かもしれません。あちこちでどれだけ切り詰めるかを考えることがとても多いかも知れません。そんなことを考えるのはやめたいけど、自然に考えてしまいます。ここで取り上げるのは、単につつましく消費する習慣だけではありません。この習慣は、過去における困難な経験、子供の頃の不安、最も深い恐怖を伴う、強烈で一生にわたるお金とのつながりに関係しています。

「お金に関して感情的な悩みを人はたくさん持っている」と個人金融専門家でリファイナリー29のトーキング・ストック・コラムの著者のパコ・デ・レオンは言いますが、彼女の近刊予定の著書のファイナンス・フォー・ザ・ピープルFinance for the Peopleは、2022年2月1日に発売予定です。私たちは皆お金に関してある『話』を利かされていると、デ・レオンは信じていますが、それは、お金は幸せになるための唯一の道だとか、お金がない者は怠け者だとか、お金に関して安定すれば権利にはならないが特権になるというような話です。

「個人のお金については、このように強烈な恥の烙印となります。たぶん私は変わった人間として成長し、13年間カソリックの学校に行ったからだろうと思いますし、根本的な欠点があると言われるのはどういうことなのかを知っていますし、その感情を持つことがどういうことなのかを知っています。」

この本はお金の基本、借金、投資、その他についてセクションを分けていますが、全体を通じて、自分は誰でどう育ったかによってお金についての考えを獲得するとデ・レオンは説明しています。裕福な家族の出であれば、投資や富を管理する手腕に関して有利なスタートを切ることを意味します。一方で、もしお金が予測不可能で両親が請求書に苦労しているのを見る環境で育ったならば、どんな事情であれ、すべての形の借金を過度に恐れるかもしれません。お金を扱う態度は単に計算したり計画するだけではなく、合理的でなくなることも良くあります。しかし、これらの感情をむやみに無視しようとするべきだということを言うつもりではなく、なぜ存在しているのかをまず最初に考えるべきです。個人のお金に関して学ぶべき目標は、単に予算管理が上手くなるとか、リタイヤのために十分に貯蓄するということではなく、お金に関する不安を減らしたり恥ずかしさを減らすことです。

「誰かに、所得の10%を貯蓄しなさい、50%を貯めなさい、ということは簡単です。こういったとても実践的なアドバイスをすらすら書くことは簡単です。しかし、合理的に考える必要があることは理解しているが、得策でない行動をしてしまう理由が分からないでいるのを見ることが、私にとってイライラしたりとてもつらいのです。

思考と同様に行動も合理的にできるようになるためには、「どのように考えているかについて考える必要があります。認識の偏りについて考える必要があります」と彼女は言います。

この本の1セクションで、デ・レオンは予算、つまり、いくら使えるかという観点だけでなく、理想的なライフスタイルのために必要なお金はいくらかという観点をアドバイスしています。

「そうすれば、私が教えられた基本パターンを単に受け入れるだけでなくなります。私の両親は移民で、こんな風でした:学校に行きなさい、学位を取りなさい、就職しなさい、与えられたものを受け入れなさい。」

デ・レオンは単純に唯一のゴールやマイルストーンを達成するだけでなく、新習慣を確立するのに役立つ自動システムやガードレイルを作ることも強調していますが、その理由は、私たちが人間であり、誤りを犯しやすく、結局は自分たちのセーフティ・ネットを作る必要があるからです。「西洋社会はあまりにも最終ゴールに焦点を当てすぎるきらいがあります」とレオンは言います。「直観に反する目標を実際に達成するのに役立つことの一つは、結果にとらわれ過ぎず、プロセスは誰もが持てるものなので、多くのプロセスを単に追いかけることです。毎日がプロセスなのだから、単に結果だけを大事にしてはいけません。」

もちろん多くのお金の問題が単に個人的なものだと言っているわけではなく、構造的なものでもあります。デ・レオンは不平等が資本主義システムに織り込まれていることを、長い時間をかけて認識してきました。システムが変化する中で、個人は当面、何をできるでしょうか。これが、レオンの答えようとした疑問です。この本の最初の方で、お金に関する「最悪のもの」という考えについて話しています。「すべての年代はそれぞれ独自のものを提供され、今日の若い人は「後期資本主義」というかもしれない最悪のものを提供されています。それに対して何ができるのでしょうか?「私は自分のことをとても戦略的に考える人だと考えているので、解決したいと思う問題を考える時には、受け入れたい問題について考えます。」とデ・レオンは言います。「というのは、自分の居る職場がどうであろうと、もし自分のために働こうと決めたとしても、問題に直面します。そこで、人生において最悪のことが発生した時に、何を選べるかを決定するためのメニューを見て、試してみます。」

「私がファイナンシャル・プランナーとして働いていた時、会議室に座っていて、秘密主義になってきていると強く感じたことを思い出します。」とレオンは言います。「私が聞いたいたこと、得たひそかな知識は、通常裕福な祖父から裕福な孫に引き渡される情報です。私の中では、この情報を解き放ちたいと感じています。」

「自分のために作られたのではない世界に住んでいるのですから、別の会話をし、新たな見方を共有する機会はたくさんあります」とレオンは続けます。「私は男社会に住んでいる女です。背の高い世界の中の背の低い人間です。まっすぐな世界の中の奇妙な人間です。白い世界の中の茶色の人間です。」

個人のお金の産業の問題の一つは「すべての人があるレベルの収入を持っているとか、機能する考えを持っていないと思い込んでいることです」と彼女は言います。「昔ながらのお金のエキスパートは、お金に関する制度上の不平等や感情的・認知的偏りのような、現実の給与に影響を与える要素以外には目を向けません。それは大きな誤りだと思います。多くの人達が、個人的なトラウマや、世代間にわたるトラウマ、社会的トラウマのある所で、行動しています。率直に言って、自分たちの苦痛を認識しないことは、この産業の大きな誤りだと思います。」「人々はお金との関係に影響を与える力を持っているということを認識してほしいと願っています。人々は変われます。変化させる潜在能力は、自分たちが考えるよりかなり大きいのです。」