お金、資産形成を学校で教える時代 1

シニア層老後の蓄えはアメリカの3分の1

シニア層の老後の蓄えは、20年前に日米は2千万円ずつで並んでいましたが、現在、日本は変わらずに2千万円で、アメリカは3倍の6千万円になりました。日本人は銀行預金をし、アメリカ人は株式で運用しました。私は子供たちに外国株式インデックスファンドのつみたてNISAを強く勧めました。

確定拠出年金は20年で3倍

私の確定拠出年金は20年前は6百万円で現在は3倍強の約2千万円に増えましたが、多くの社員は変わりません。私は外国株式パッシブ(インデックス)ファンドで運用し、多くの社員は銀行預金に置いておいたからです。私は、子供たちにも、企業型・個人型の確定拠出年金は外国株式パッシブファンドを選ぶことを強く勧めました。

リボ払いは高利の借金

40年前、銀行の行員はリボ払いを積極的に営業していました。リボ払いの金利は15%ですから、極めて高利です。銀行員は自分の子供にはリボ払いをするなと言っているでしょう。

ほとんどの親はアドバイスできない

私は勤めていた会社で、確定拠出年金、確定給付年金、従業員持ち株会、団体生命保険等の仕事をしてきたので、連れ合い、子供、親戚に適切なアドバイス(おそらく)をすることができます。しかし一般の親御さんたちはそうすることができません。その証拠に、自分自身が元本確保型の銀行預金や保険の確定拠出年金に入っているのです。

さらに広がる日米貧富の差

お金や資産形成に関する知識を持った人と持っていない人の資産格差はこれからも広がるでしょう。日米のシニア層の資産格差もさらに広がるでしょう。

日米の状況について取り上げます。

まず、NHKで金融教育の問題を取り上げていますので、その内容を確認しましょう。


“資産形成” 授業で学ぶ時代

2022年度、高校の学習指導要領が10年ぶりに大きく変わり、「資産形成」を含む金融全般について、一歩踏み込んだ教育を行うことになります。授業で金融をどう学んでいくことになるのでしょうか?

資産形成どうやるの? 家庭科や公民で金融教育

まず資産形成とは何でしょうか。個人が株式や債券などにお金を投資し、そうした金融商品が値上がりすれば値上がり益が得られます。さらに配当や利子などのリターンを得ることで資産を増やすことができます。

もっとも、投資したお金が増えてもうかる可能性がある一方、損する可能性もあります。

22年度からの新しい学習指導要領に基づいた高校生向けの教科書を見ると、ある家庭科の教科書には、自分の資産を増やすためにどういう手段があるかや、「ローリスク・ハイリターンの金融商品はなく、確実なもうけ話もありえない」など、リスクもあることが書かれています。

ほかにも公民科の授業では、仮想通貨やフィンテックなど最新の金融事情や、具体的な投資の計画の立て方など、これまでは教えてこなかった一歩踏み込んだ金融教育を行うことになります。

いまの時代、リーマンショックや新型コロナの世界的流行など、世界的な経済ショックで株や債券の価格が大きく値下がりするリスクについても知っておくことが大事な世の中になってきています。

なぜいま金融教育なのか。文部科学省教育課程課の野口宏志さんは「消費生活の変化など社会の急激な変化に、適切に対応していくことが今後ますます求められる。若者に求められる判断とかリスク管理も、ますます大事になってくる」と話しています。

「投資ゲーム」で企業の社会的役割も学ぶ

では実際の授業はどのように行われるのでしょうか。東京・新宿区にある都立新宿山吹高校では、先進的な取り組みが行われています。取材した日、授業で行われていたのは「投資ゲーム」です。生徒たちは1億円の資金を持った投資家となり、投資先の会社のカードを選びます。

カードには「高い利益を上げる一方、CO2の排出量が多い車をつくる会社」や「利益はそこそこで、ペットボトルのリサイクルに力を入れる会社」などがあります。

生徒たちにどんな企業を選びたいか聞いたところ、「社会に貢献する企業に投資したい」とか「安定して商品の売り上げがある(企業)」と話していました。

単に投資先を選ぶだけでなく、投資先が環境の保全にどう貢献しているかなど、企業の社会的な役割についても学ぶ機会となっているようです。

授業を行った滝田大樹教諭は「投資における利益の追求だけでなく、社会にどう貢献できるかも踏まえて教育ができればと思い、授業を設計した」と話しました。

また生徒の一人は「環境とか社会について考えるいいきっかけになった」と話していました。

歓迎する経済界

金融教育の充実については、経済界からも歓迎する声が上がっています。

野村ホールディングス サスティナビリティ推進室の園部晶子室長は「社会課題の解決のためには多額の資金が必要となる。資金が投資にも流れ込むことで、企業の成長や経済の活性化につながると考えている」と話しました。

資産形成というと、個人にとっては自分のお金をどう増やすかということになりますが、授業ではそれにとどまらず、自分たちが投資したお金が巡り巡って社会をよくするためにどう使われているかという、金融が本来持っている役割について身近なところから学ぶ場になっていくよう期待したいと思います。

【2021年10月15日放送】


知識が増えても貧乏になってはいけない

教科書、教材、実際の授業の内容がどのようなものになるのかわかりませんが、冒頭で取り上げた、日米シニア層の老後蓄え格差発生問題の原因を解き明かす内容にしてほしいものです。そうでなければ、お金の流れに関する問題は解けるようになっても、日米格差問題は深刻化する一方になるでしょう。

<明日に続く>