2022年の投信に思う 上

QUICK資産運用研究所が2022年の「投信10大ニュース」を発表しているので、それを振り返ります。

  1. NISAを恒久化・無期限化へ 資産所得倍増プラン
  2. 金融庁が「プログレスレポート」「モニタリング結果」「金融行政方針」を公表
  3. 投信の積立投資が拡大 楽天証券は月間1000億円突破
  4. ラップ口座が9月末に過去最高の13.9兆円 プラットフォーマーの競争が激化
  5. ロシアがウクライナ侵攻 関連投信が急落、売買停止や繰上償還も
  6. FRBが利上げ「アーク」「レバナス」など海外グロース株式型が大幅下落
  7. インデックス型ファンドの残高が拡大 海外株式型が「4強」
  8. ESG関連投信「見せかけ」監視強化で新規設定が急減
  9. 歴史的な円安 為替ヘッジの有無で明暗分かれる
  10. 三菱UFJ国際投信が投信残高首位に 野村アセットを上回る

各項目について私の考えを述べます。

1.NISAを恒久化・無期限化へ 資産所得倍増プラン

NISAの拡充は個人投資家にとっては良いことですし、それを取り扱う証券、銀行などの金融機関にとっても「基本的に」は歓迎すべきことです。ここで、金融機関に関して、「基本的に」という修飾語を付けたのには、理由があります。金融機関にとって一番大事なのは自社の利益であって、個人投資家の利益ではありません。金融機関は、信託報酬と売買手数料の高い金融商品をたくさん売って利益を稼ぎたいのです。その観点からすると、高コストのアクティブファンドを売りたいのですが、低コストインデックスファンドの商品はあまりありがたくないのです。かつて、ある証券会社の社員が私に「アクティブファンドだけは買ってはいけない、あれは証券会社だけが儲けて、個人投資家は高いコストを払った上にリスクにさらされるから」と、こっそり教えてくれました。

2014年に始まったNISAは、証券会社のやりたい放題だったという反省から、2018に始まったつみたてNISAは、販売する商品を厳しく制限しました。その効果もあって、最近では低コストインデックスファンドが急成長しています。

2024年からの拡充NISAは、気を付けないという落とし穴はたくさんありますし、金融機関はあらゆる手を尽くして儲けようとしますから、個人投資家は低コストインデックスファンドに絞って投資をすることが賢明です。

2.金融庁が「プログレスレポート」「モニタリング結果」「金融行政方針」を公表

金融庁は、8月31日に「2022事務年度金融行政方針」を公表しました。仕組み債がはらむリスクや販売手数料の高さを指摘し、実態把握のためモニタリングを行うと表明したので、慌てた証券会社などの金融機関は相次いで仕組み債の販売体制見直しに動きました。

仕組み債はデリバティブの一種であるオプション取引を用いた金融商品で、中には10%と高い利回りをうたう一方、株価や為替などに連動して償還条件が変動し、下落時には大きな損失を被ります。元々プロ向け商品だったのですが、近年は個人投資家にも積極的に販売され、仕組み債の販売手数料が収益柱となっている証券会社もあります。

  • 野村證券:10月に公募型の販売停止
  • 大和:9月に個人向けの販売停止
  • SMBC日興証券:8月に個人機関投資家を除く法人向けの販売を停止
  • みずほ証券:9月に公募型の販売をやめたのに加え、私募型は大半の個人を対象外

3.投信の積立投資が拡大 楽天証券は月間1000億円突破

個人が利用すべき制度は以下の通りです。

① 企業型確定拠出年金、個人型確定拠出年金(イデコ)

② つみたてNISA、一般NISA

③ 積立投資信託

①と②の制度だけでは、人生の3代支出である、住宅、教育、老後資金をカバーしきれません。このため、どうしても若いうちから③を行う必要があるのです。

楽天証券の由井秀和常務執行役員は、積み立て投資の現状について以下の通り話しています。

「投信の積立設定額は順調に伸びており、8月2日に月額1000億円に到達しました。サービス開始から500億円までは13年ほどかかりましたが、昨今の資産形成への興味・関心の高まりもあり、そこから約1年3カ月で500億円増になりました。8月初旬以降も設定額・設定者数は順調な増加傾向にあります」

4.ラップ口座が9月末に過去最高の13.9兆円 プラットフォーマーの競争が激化

ラップ口座は、極めてコストが高いので、個人投資家は使ってはいけない仕組みです。

DIAMOND online でも、【買ってはいけない投資商品】として、真っ先に銀行・証券「ラップ口座」を挙げています。

かかるコストは、固定報酬や投資一任料/投資顧問料などの直接的費用と、信託報酬などの間接的費用です。両方合わせれば2~3%程度のコストとなることを覚悟すべきです。

証券・銀行以外にも、テレビコマーシャルが流れているウェルスナビ(全自動の資産運用サービス)も同じようなもので、ロボアドバイザーを利用した商品です。しかし、手数料は1%ですし、ここに信託報酬が上乗せされるのですから、たまったものではありません。

私は子供たちに、低コストの外国株インデックスファンドしか推奨しておらず、具体的には以下の3銘柄ですが、コストは年率0.1%程度です。

  • <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド
  • SBI・V・S&P500インデックス・ファンド
  • 三菱UFJ国際-eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)

<明日に続く>