分散投資の組み合わせ

日経CNBCで、積立・分散投資の効用とその実践シミュレーションを解説していたので、見てみましょう。

長期投資にとって非常に重要なことは、リスクを分散して下げることです。

リスク、リターン、リスク分散の効果とは?


横軸に、リスクを取り、右に行くほど高くなりますが、それは、日本語のリスク、つまり、危険だということではなく、変動性が高いということを意味します。逆にリスクが低いというのは、危険でないということではなく、あまり株式の価格が動かないということを意味します。縦軸がリターンであり、ふつうは年率で示します。

  • Aファンド:日本株
  • Bファンド:アメリカ株

例えば、日本株のファンドをAファンドとすると、リスクは低いけれど、リターンも低いという図です。Bファンドはアメリカ株に全部投資したファンドであり、リスクは高いけれどリターンも高い場合です。これはハイリスク・ハイリターンになります。この二つのファンド間にリスク分散効果が働く場合、Aのファンドの比率を下げてBの比率を上げていくと、リスクとリターンの関係は、左の方に突出するカーブが描ける、ということが学問的にも実証的にもわかっています。

最小リスク・ポートフォリオ、最適ポートフォリオ

最もリスクの低いポートフォリオを選ぶなら、一番左側の最小リスク・ポートフォリオを選ぶのが良いことになります。リスクに対するリターンの比率が最も高いのを選ぶなら最適ポートフォリオの接点になります。長期で株式を保有していると、必ずリーマンショックのように、株価がどすーんと下落していくことがあるので、その時のためにリスクを落とすことも大事ですから、この考え方は一つの基本です。

長期なら90%をS&P500

一方で、長期で保有する方針であれば、リーマンショックの時にも動じることなく、そのまま持ち続ければよいので、100%アメリカ株にすれば、ハイリターンが狙え、しかも長期保有ならリスクはだんだんと小さくなりますから、最適ポートフォリオや最小リスク・ポートフォリオを選ぶ必要はなく、100%アメリカ株にすればよいという考えも成り立ちます。現に、ウォーレン・バフェットは、自分の相続財産の90%をVOO(アメリカバンガード社のS&P500のETF)で運用し、残り10%を米国短期国債で保有することを推奨しています。

長期ならリスク減少

このグラフは1年間の動きを表示しているので、10年、20年の動きを表示するとリスクは小さくなります。通常米国株を10年保有すると、株価は2倍になることが期待できますので、変動率は変わらなくても、危険ゾーンから脱出して、安全地帯に逃げ込むことができる可能性が高くなります。

日米が6:4、世界株100%

日本株価指数(具体的にはTOPIX)100%連動した投資信託を買った場合、過去20年間で、リスクは低めですが、リターンは6%台でした。日本人が円資金でアメリカのS&P500に連動する投資信託を買った場合、リスクは少し高いがリターンも高く14%となります。

最近はアメリカ株に連動した投資信託を買う人は、若い世代を中心に増えています。もう一つ増えているのは世界株(アメリカ株、先進国株、日本株、中国株、途上国(株)に投資する、新興国株)方法です。

2010年代はアメリカ株が成長

アメリカ株と日本株を半々で持っているのが、リスクは低くてリターンが日米の中間になります。つまりリスク分散が効いています。世界株に投資すると、リターンは日米の中間ですがリスクが高いという結果でした。アメリカ株がかなり入っているのですが、途上国の割合が高く、途上国の中でも中国が多いのです。BRICSブームと言われた2000年代の中盤くらいまでは。中国や途上国の株価は非常に良かったのですが、そのあとのパフォーマンスが非常に悪く、リスクが高い割にはリターンが低く、報われていません。このファンドは悪くないのですが、リスクリターンの関係でいえば、日米半々で持っている方が賢いことになります。

8%利回りの積立で20年間投資すると軽く3倍

S&P500 アメリカの株価指数に連動する投資信託で、仮にそれが昔からあったと仮定して、日本人が1950年から毎月1万円ずつ投資したするシミュレーションを見ます。20年たった1970年にどれくらいのリターンが出たかというと、最初は10%を超えて、20年後には悪くなり、その後は良くなります。リーマンショックの時に悪くなりますが、また良くなっています。リターンの中央値が8.6%です。年率8.6%というのはイメージしにくいかもしれませんが、年率7%で10年間据え置くと、期初投資の場合は2倍になります。20年だと4倍になります。積み立ての場合には初期投資と違いますが、8%利回りの積立で20年間投資すると軽く3倍になります。

相場が悪い時には引き出さない

引退するときにたまたま、低価格だったら、例えばリーマンショックのような時期にぶつかってしまったら、3年、5年辛抱すれば平均的リターンである7、8%に戻ってきます。心配する必要はありません。

アメリカ株とユーロの株価指数ではリスク分散効果がない

日米の組み合わせのような効果がどの組み合わせでも出るわけではありません。例えば、アメリカ株とユーロの株価指数でやるとリスク分散効果は出ません。アメリカ株に100%投資するとローリスクハイリターン、ヨーロッパ株に100%投資するとハイリスクローリターンになる。それならば、アメリカ株を100%買うのが良いわけです。アメリカ株とヨーロッパ株の間にはリスク分散効果がありません。