血糖値、コレステロールを考える

健康診断の基準値を鵜吞みにしない

健康診断を血圧、血糖値、コレステロールで基準値から外れる人は多いと思います。しかし、健康診断の基準値は、いろいろな思惑があって設定されているようです。具体的には以下のことなどが考えられます。

  • 国民の健康を考える
  • 薬をたくさん売る
  • 国から予算を獲得する
  • 検査機器をたくさん売る
  • 検査技師の雇用を維持する
  • 学会の存在感をあげる
  • 中年が生活習慣病にかからないように警告的な観点から厳しめの数字にしている(このため、70歳以上の老年の場合には、もう少し緩い基準でも良い)

例えば、血糖値のHa1cに関していうと、5.5を超えると基準から外れますが、医師に聞いたところ、6.5以下なら大丈夫だそうです。さらにアメリカの学会発表によると、70歳以上なら7.5以下でも良いそうです。

また、私の場合はコレステロールのLDLが高くて、HDLが低い傾向にあり、医師から「主治医に相談してください」と言われました。これについては、今回インターネットで調べたところ、一般社団法人 日本動脈硬化学会 動脈硬化性疾患発症予測ツール(一般向け)という便利な計算式を見つけました。これに血圧、LDL、HDL等の数値を入れたところ、10年以内の動脈硬化性疾患(心筋梗塞などの冠動脈疾患と動脈硬化性の脳梗塞)発症確率は6%でした。これは、同年齢、同性で最もリスクが低い人と比べて1.3倍発症確率が高くなっています。この程度であれば、私は医師に相談する必要はないと思います。また、食事、運動などはかなり実施していますので、基本的には現在の生活を続けますが、趣味の登山にも役立つスクワット、階段昇降は、それぞれ毎日数百回程度行おうと思います。


文化放送「鎌田實×村上信夫 日曜はがんばらない」

2023年09月03日

Ha1cという糖尿病の指標があって、普通は7.0以下くらいにするのを目標にしますが、70歳を過ぎたら7.5以下でも良いと、アメリカの学会では言っています。少し高くても十分大丈夫だと言われています。月2回くらいは好きなものを食べて、他の日には、カロリーを計算した食事で頑張ってもらうのが良い。


PRESIDENT Online 2023/02/09 鎌田 實

「正常値」に縛られなくていい

高血圧の診断基準は、最大血圧が140mmHg以上か、最小血圧が90mmHg以上になる場合で、正常血圧は120/80です。

ぼくは、多くの高血圧患者さんに「130/80」を目標に生活指導をしています。まずは生活習慣の改善が大事です。すぐに薬を出すことはしませんが、必要なときには出しています。

70歳以上の人には、血圧の治療目標設定を150/90に上げています高齢になると軽い動脈硬化を起こしている人が多くなります。その状態で、無理やり多量の薬で血圧を下げると、脳や心臓へ血液を流す力が弱くなってしまい、かえってよくありません。


太ってないのにコレステロール高値?私の食生活何が悪いんでしょうか?

東京ベイ・浦安市川医療センター 2017年8月21日

治療の具体例

それでは、いくつか具体的な患者さんを想定して、治療例を見てみましょう。

◎ 一人目は、65歳の男性のAさんです。

  • Aさんは自営の仕事をしていて、これまで特に病院にもかからず、健康診断も受診していませんでした。
  • 少し肥満気味です。
  • お酒は時々友人と飲みに行く程度ですが、たばこを1日1箱吸っています。
  • 周囲で大きな病気にかかる人も増えてきたため、これまで受診してこなかった市の健康診断を受診してみることにしました。

そこで以下の結果が出ました。

血圧:162/86mmHg、総コレステロール:254mg/dL、HDLコレステロール:36mg/dL、中性脂肪:165mg/dL、血糖値も高く、糖尿病にもなっているようです。

LDLコレステロールは、総コレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪の値から計算することができますが、そうするとAさんのLDLコレステロールは185mg/dLとなります。
悪玉コレステロールが高く、善玉コレステロールが低い状態ですね。

この結果をもとに、Aさんがこのままだと将来心筋梗塞になる確率はどの程度か、計算をしてみます。

計算方法はいくつかありますが、そのうちの一つとして、日本動脈硬化縦断研究(Japan Arteriosclerosis Longitudinal Study:JALS)のデータをもとにしたものがあります。

一般社団法人 日本動脈硬化学会 動脈硬化性疾患発症予測ツール(一般向け)

これによると、Aさんが今後5年間で心筋梗塞を起こす確率は5.0%となります。
この数字を高いと考えるか、低いと考えるかは人それぞれだとは思いますが、一般的に、この程度の数字であれば脂質異常症の治療薬であるスタチンを飲んだ方が良いと言われています。
また、Aさんの場合は同時に高血圧、糖尿病の治療や、禁煙などの生活習慣改善も必要になってきます。

◎ 続いて、一般企業に勤める会社員である、56歳男性のBさんをみてみましょう。

  • Bさんは毎年健康診断を受診していますが、ここ数年は「少しコレステロールが高め」と言われるそうです。
  • お酒は会社の飲み会に参加する程度、たばこはこれまで一度も吸っていません。
    健康診断の結果は以下です。
  • 血圧:132/72mmHg、総コレステロール:224mg/dL、HDLコレステロール:56mg/dL、中性脂肪:130mg/dL、血糖値は問題ありません。
  • LDLコレステロールは計算上142mg/dLとなります。
  • つまり悪玉コレステロールは少し高めです。

Aさんの時と同じ方法を使って計算をしてみると、Bさんが今後5年間で心筋梗塞を起こす確率は0.19%となります。
Aさんと比べると随分低い数字ですね。
この場合、LDLコレステロールの値は多少高めですが、Bさんがスタチンを飲む必要性はこの時点では高くありません。
食事や運動習慣に気をつけながら、また次の年以降も健康診断を受診して薬を飲むかどうか考えて行くのが妥当と考えられます。

以上のように、同じ「コレステロールが高め」でも、他の生活習慣病があるかどうかなどによって、将来心筋梗塞、脳梗塞になるリスクは変わってきます。
5にも示したように、そのリスクが大きい患者のみ、脂質異常症の治療薬を飲むというのが原則です。