2024年はNISAがブームでしたが、2025年はiDeCo、確定拠出年金の拠出限度額が大幅に増額しそうです。
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「資産運用立国」実現へさらに加速
iDeCo拠出限度額を大幅拡充 ここがポイント令和7年度税制改正大綱
成長と分配の好循環や、賃金と物価の好循環実現といった経済の変化を金融面から支える取り組みが「資産運用立国」の実現です。令和6年は新たな少額投資非課税制度(NISA)がスタート。令和7年度税制改正大綱では個人型確定拠出年金(iDeco)の拠出限度額の大幅拡充が盛り込まれました。
iDeCo拠出限度額拡充の全体(厚生労働省資料より)
iDecoとは公的年金(国民年金・厚生年金)とは別に給付を受けられる私的年金制度の一つです。公的年金と異なり加入は任意。働き方やライフコースが多様化する中で、税制が老後の生活や資産形成を左右しない仕組みとすることが、豊かな老後生活に向けた安定的な資産形成の助けとなります。
今回の制度改正では勤務先の企業が企業年金を設けているかどうか、企業年金の形態の違いに関わらず、継続的で平等に資産形成をできるよう環境整備を行います。所得から控除することができる掛金の税制優遇の枠を大幅に拡大し、老後の資産形成を後押しします。
具体的には1号被保険者(国民年金加入の自営業者等)の拠出限度額を国民年金基金との合計額6.8万円を7.5万円に引き上げます。第2号被保険者(厚生年金加入者)の拠出限度額も企業型確定拠出年金(DC)の有無に関わらずそれぞれ増額。賃金が上昇していることや老後の資金確保のニーズが高まっていることを受けた見直しを行います。
「貯蓄から投資へ」NISAは2千万口座上回る
資産運用立国」実現の取り組みは岸田文雄前総理の時から継続的に進められ、NISAの口座数は2千万を超える等、「貯蓄から投資へ」の流れが加速しています。昨年、石破新政権誕生後も、政府与党は「資産運用立国実現プラン」を着実に進め、国内外の投資家の期待が高まり、日経平均は今年1月7日に再び4万円台を上回る等、大きな成果が表れています。
石破茂総理は昨年11月に岸田前総理らから資産運用立国の加速に向けた提言を受け取り、iDeCo拡充等について認識を共有しました。政府与党は引き続き国民の資産形成を後押しする施策に取り組んでいきます。
2025年は「新iDeCoブーム」到来? 制度利用のメリットと今後の改正の見通しを解説
2025/01/09 gooニュース
2024年12月に公務員やDB(確定給付企業年金)等の企業年金制度のある企業の従業員のiDeCo(個人型確定拠出年金)の改正が行われ、掛金額の上限が月1.2万円から月2万円に引き上げられました。今回は、今後も拡充が予想されるiDeCoについて解説します。
「新iDeCo」ブーム到来なるか?
確定拠出年金の加入者は、企業型DC(企業型確定拠出年金)が830万人(2024年3月末時点、運営管理機関連絡協議会)、iDeCoが344万人(2024年9月末時点、国民年金基金連合会)となっています。確定拠出年金の加入者(掛金を拠出している人)に運用指図者(新たな掛金を拠出せず、保有資産の運用をしている人)を加えた推移が下記グラフとなり、2024年3月末時点、単純合計で1,288万人に達しています。(重複加入を含む)
しかし、NISAが2,427万口座(2024年6月末時点、金融庁)であることを考えると、確定拠出年金の普及率は低く、とりわけiDeCoの普及には、まだまだ「伸びしろ」があると言えるのではないでしょうか。
【確定拠出年金の加入者数】
わが国の確定拠出年金制度は2001年にスタートしています。
確定拠出年金法の第1条には「公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与する」とあり、賦課方式の公的年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金)では老後の生活費として足りない部分を積立方式の私的年金(DC等)で準備をして欲しいというメッセージなのです。
確定拠出年金の開始時から企業型と個人型がありましたが、個人型は加入できる対象範囲が狭かったということもあり、あまり注目されていませんでした。しかし、2016年にiDeCo(イデコ)というニックネームを付け、2017年に対象を拡大した頃から、2014年にスタートしたNISAとともに、個人の非課税投資が可能な制度として広まっていくことになりました。
確定拠出年金の制度はこれまでも改正が重ねられていて、2024年12月には下表のように他制度加入者や公務員のiDeCoの拠出限度額が月額2万円に引き上げられました。2025年に更なる拠出限度額の引き上げや加入者期間の延長が行われる可能性もあり、2025年は「新iDeCo」ブームが到来するかもしれないと筆者は考えています。
【iDeCoの拠出限度額 】(2024年12月〜)
※1:国民年金基金の掛金、付加保険料との合算。
※2:「月額 5.5万円 ー 企業型DCの掛金額、他制度掛金相当額、共済掛金相当額」との少ない方の額。
※3:マッチング拠出を行っていないこと、各月拠出であること。
iDeCoで老後資金の準備をする
筆者は、仕事柄、知人から資産運用について質問を受けることが多いのですが、国民年金第1号被保険者(自営業者等)か、第2号被保険者(会社員、公務員等)が会社型DCでマッチング拠出をしていなければ、先ずはiDeCoを利用し、その次にNISAを活用することをお勧めしています。
50歳を過ぎた方についてもiDeCoをお勧めしている理由は、やはり税制のメリットが大きいことです。一般的に50歳代になると給与所得も多くなるため所得税率も高く、そのため所得税軽減額が大きくなります。また、企業型DCに50歳以前から加入していれば、60歳までiDeCoに10年以上加入しなくても60歳以降に受け取りが可能になることから、資金が長期的に引き出せないというデメリットをあまり気にしなくても済みます。
さらに、企業型DCは60歳で終了する企業が多いので、その場合はiDeCoの拠出限度額が60歳から月2.3万円に上がるので、第2号被保険者であれば、掛金額を増額して65歳まで積立投資を継続することもできます。
現行制度では65歳を迎えると新たな掛金を拠出することはできませんが、75歳までは運用を続けることができます。75歳までには一時金か年金受取かを指定することになりますが、仮に20年間の年金受取を指定すれば、最長で94歳まで運用を続けながら、年金を受け取ることができるようになります。
アセットマネジメントOneでは、社員向け研修として「社会保険の基礎知識」と題するプログラムがあり、筆者も公的年金やDCについて講師を行っていますが、受講後にiDeCoに加入する社員が増えているのは、「老後準備では、先ずiDeCoから」というメッセージが少しずつ浸透してきている結果ではないかと考えています。
これまで、確定拠出年金の投資信託等に投資している比率が低いことが問題となってきました。つまり、企業型DCに加入していても投資信託を選択していないとか、そもそも自分が企業型DCに加入していることすら認識が無いというケースもあるようです。一方で、iDeCoについても所得控除のメリットが強調され、拠出はしているけど定期預金等にして、運用を行っていないというケースもあります。
ただ、NISA口座が増加してきた2020年あたりからは、確定拠出年金の投資信託等の比率も上昇を始めており、2024年3月末には企業型DCで67%、iDeCoは73%が投資に振り向けられるようになりました。
この投資信託等の比率は若年層ほど高い傾向があり、20歳代では企業型DCで72%、iDeCoは87%が投資に振り向けられています。
【確定拠出年金の投信信託等比率】
確定拠出年金の制度改正のポイント
令和7年度の税制改正においては、会社員の確定拠出年金については下記の拡充策が示されています。これらが今年の通常国会で可決すれば、1年くらい後には施行されるのではないかと思われます。
①iDeCoの掛金限度額の引上げ
現在、企業年金に加入している会社員の場合、月55,000円から事業主の拠出額を差し引いた額か、月20,000円のどちらか低い方がiDeCoの拠出限度額と定められています。改正案では、この月55,000円が月62,000円に引き上げられた上で、月20,000円の上限を撤廃するとされています。
よって、企業年金に加入している会社員であれば、企業年金とiDeCoの掛金を合計して月62,000円まで、企業年金に加入していない会社員であれば、iDeCoを月62,000円まで拠出できるようになります。
②企業型DCのマッチング拠出限度額の引上げ
確定拠出年金のマッチング拠出とは、企業型DCにおいて加入者(会社員)が掛金を拠出できる制度です。現在、企業型DCのマッチング拠出の限度額は、事業主掛金額か55,000円の2分の1以下のどちらか低い方までとされています。改正案では、この月55,000円が月62,000円に引き上げられた上で、事業主掛金額と2分の1以下という上限が撤廃されますので、例えば事業主掛金額が10,000円だとすると、加入者は52,000円までマッチング拠出できるようになります。
③iDeCoの加入年齢の引上げ
現在、iDeCoは国民年金の加入者でないと拠出することができない仕組みになっており、自営業者などの第1号被保険者や専業主婦(夫)などの第3号被保険者は60歳になるまで、厚生年金保険に加入している会社員や公務員、60歳以上65歳未満の任意加入被保険者であれば65歳になるまで拠出できることになっています。改正案では、誰でも70歳になるまでiDeCoの掛金を拠出できるようになりますので、60歳代後半で働いている方も、掛金を拠出して年金額を増やすことができるようになります。