アフォーダブル住宅とは、主に低所得者や中所得者層の人々が手ごろな価格で居住できるように設計された住宅のことです。このコンセプトは、収入が限られた人々が住居を持ち、生活を安定させ、地域社会に参加できるようにするために重要です。そして、この取り組みは単に住宅を安価に提供するだけでなく、家賃補助や公営住宅の提供、さらには低金利の住宅ローンプログラムの導入など、多角的なアプローチが必要です。

海外での取り組み事例

アフォーダブル・ハウジングという概念は、欧米諸国、特に大都市を抱えるアメリカやヨーロッパの国々では広く普及しています。例えばアメリカの20/80プログラムでは、ニューヨークに新たに建設される集合住宅の戸数の20%を一定期間低所得者層に提供し、その物件は低利融資・税制優遇を受けられます。またニューヨークでは、市政府がセクション8という低・中所得者用の最低60%以上の家賃を補助するプログラムを実施しています。同様にロンドンでは、不動産開発に際して一定割合のアフォーダブル住宅を提供するよう目標とする政策が取られています。こうした取り組みは、都市部で暮らす人々の住宅問題を解消し、持続可能な都市生活を実現するための重要な手段とされています。

東京都の取り組み

では、日本、特に東京都はどのようにしてこの課題に取り組んでいるのでしょうか?近年、東京都心部のマンション価格が急騰し、一般的な中間層にとって手の届く価格の物件が減少しているという深刻な状況が続いています。子育て世代が広くて手ごろな価格の物件を求めて東京都から離れてしまうのは、就業率や出生率の悪化を招き、税政上もよろしくありません。東京都の公的住宅のストックは約55万戸ですが、抽選の倍率は約30倍、場所によっては200~300倍を超えることもあり、足りているとはいえない状況です。
こうした背景から、東京都は2025年度を目標にアフォーダブル住宅の普及を目指したファンドの創設に動き出しました。このファンドは、主に中間層が無理なく支払える家賃や購入価格で住宅を提供するための資金を提供するものであり、都はこれを2025年度当初予算案に関連経費として盛り込む方向で調整しています。

具体的な施策と展望

具体的な施策としては、都心部における土地利用の効率化、公有地を活用した住宅開発への奨励、さらには公益法人との連携による住宅の供給促進などが考えられています。また、国の住宅政策とも連携し、住宅ローンの金利引き下げや家賃補助の拡大に取り組む予定です。
このように、東京都のアフォーダブル住宅推進政策は、多様な収入層が共存する持続可能な都市生活を実現するための重要な試みといえるでしょう。住まいは人生の基盤となるものであり、誰もが安心して住む場所を持てることは社会全体の活性化にもつながります。

サブプライムローンとはどう違うのか

低所得者層への住宅政策といえば、2007年のサブプライムローン問題を記憶している方も多いことでしょう。サブプライムローンは、信用力が低い借り手でも購入する物件を担保にローンが組めます。海外からの移民など、安定した収入を持たない層も家を買えるので、ある意味アフォーダブル・ハウジングの役割を担っている側面もありました。不動産価格は上昇し続けるのだから、値上がり益分のローンを新たに組めば収入が低くても大丈夫だとの甘い見通しのもとに、身の丈に合わない高額な物件を購入していたケースも多いです。しかし2007年に住宅バブルがはじけ、返済できなくなった200万人以上の借り手が家を差し押さえられ、ホームレスになる人も出る事態になりました。
日本のローンは借り手の返済能力や信用性を重視した審査をするため、諸国と比べて審査が厳しいとは言われていますが、サブプライムローン問題のような事態を引き起こしにくい制度設定になっています。サブプライムローン問題は、不動産業界や銀行が短期的な利益を追及しすぎたことが原因です。それに対してアフォーダブル・ハウジングは、SDGsゴール11:住み続けられるまちづくりという長期的な目標を掲げています。

今後の課題と期待

今後、東京都がこの分野においてどのような進展を見せるのか、私たちにどのような影響を及ぼすのか、注目していく必要があります。これにより、東京都のみならず、日本全体の住宅政策に変革がもたらされることが期待されています。