アメリカの市場介入は失敗だった

米国債買い戻し拡大について、議論があるようです。


米国債買い戻し拡大は「誤り」、信認損なう=ドラッケンミラー氏

ロイター 
著名投資家のスタンレー・ドラッケンミラー氏は、米財務省による​国債買い戻し拡大は米国債市場の信‌認を損ない、債務改革の好機を逃すものだとの見方を示した。
ベセント財務長官とかつてソロス・フ​ァンド・マネジメントで同僚だった​ドラッケンミラー氏は、24日付ウォールストリ⁠ート・ジャーナル紙(WSJ)に寄稿した論説で、​先週発表された買い戻し拡大を市場が「価​格操作」「誤り」と受け止めているのは「正しい」と述べた。
財務省の発表前、米30年債利回りは約20年ぶり​の高水準を付けていた。発表を受けて利​回りは一時的に低下したが、その後上昇に転じた。
ドラッケ‌ンミ⁠ラー氏は、長期国債の利回りは世界で最も重要な価格であり、介入すれば、その効果を維持するためさらに大規模な買い戻しを余​儀なくされる​リスクが⁠あると指摘。これまで築いてきた信頼性を損なう形となり、市​場の信認を傷つける恐れもあると述​べた。

「⁠国債買い戻し拡大は中間選挙戦の終盤に重なる」と指摘。「政治日程に沿っているように見⁠える​債務管理は、米国債市場の​信認という2世紀かけて積み上げてきた資産を損なうものだ。​一度失えば簡単には取り戻せない」と語った。


ドラッケンミラー氏、米財務長官批判のWSJ寄稿で「AI活用」:DIAMOND online

スコット・ベッセント米財務長官が、友人であり師と仰ぐ伝説的なヘッジファンド投資家スタンリー・ドラッケンミラー氏から公然と批判を受けたことで、ウォール街は24日、衝撃に包まれた。ドラッケンミラー氏はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)への寄稿記事で、ベッセント氏による米国債市場への介入を厳しく批判し、利回りを押し下げるための買い戻し増額は間違いだと指摘した。WSJの寄稿ページは、編集部門とは独立して運営されている。ドラッケンミラー氏は、介入を正当化するような市場の機能不全は起きておらず、高インフレと膨張する連邦債務などが利回りを押し上げている要因だと述べた。投資家の関心は、ドラッケンミラー氏がかつての教え子に浴びせた痛烈な批判への驚きから、同氏が寄稿文の執筆に人工知能(AI)を使ったのではないかという疑惑へとすぐさま移った。ソーシャルメディア上では、寄稿文をAI検出プログラムにかけた結果、AIを使用したものだとの見方が一部で広がった。


ベッセント長官の米長期債買い戻し計画、かつてのメンターが論難:Yahoo!JAPANニュース

2026/8/25 のブルームバーグ :著名投資家スタンレー・ドラッケンミラー氏は、ベッセント米財務長官が数十億ドルを投じて米長期債を買い戻す計画を巡り、誤りだと指摘した。ドラッケンミラー氏はヘッジファンドのトレーダーだったベッセント氏をキャリア初期に指導したかつてのメンターだ。

ドラッケンミラー氏は米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)への寄稿で、「政府がファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)に逆らって価格を支えようとしても、必ず失敗する」と指摘した。

ドラッケンミラー氏は「私は50年間、単純な前提に基づいて取引してきた。市場はどの委員会も持たない情報を集約し、価格を通じてその情報を意思決定者に伝える」とコメントした。

その上で「米長期債利回りは世界で最も重要な価格だ。そして、米国に残された唯一の財政規律を促す存在でもある」と論じた

強い調子で書かれたこの寄稿は、ベッセント氏が利回りに影響を及ぼそうとする姿勢に対する反発の大きさを浮き彫りにしている。

長期債買い戻しは元ヘッジファンド運用者のベッセント氏が市場に介入する動きの一例でもある。同氏は最近、米当局による約28年ぶりの円買い協調介入を指揮した。米財務省は通貨トレーダーに影響を与えるため、市場参加者に相場水準を確認する「レートチェック」も実施した。

米財務省が短期国債の発行を増やすことで長期金利を直接押し下げようとする試みは、米連邦準備制度が市場の混乱時に用いた「ツイストオペ」を想起させる。しかし、通常は財政安定の番人と見なされる米財務省が、こうした債券市場の管理に乗り出すことは、その役割を逸脱しているとして債券投資家は警戒感を抱いている。

ドラッケンミラー氏は、米財務省が債券市場に影響を与えようとすること自体が誤りであるだけでなく、現在の状況を踏まえれば合理性もないと主張。米10年債利回りは経済の名目成長率とほぼ同水準にあり、金融環境は引き締め的ではなく緩和的だと指摘した。

同氏は「一部が主張するように、債券市場が自警団のように振る舞っていたわけではない」とし、「むしろ、ずっと言いなりになっていた市場が、ようやく声を上げ始めたところだった。それなのに、財務省はその声さえ封じようとした」と指摘した。

ドラッケンミラー氏の論説を受け、債券利回りを押し下げようとするベッセント氏の姿勢を巡る疑問はさらに強まっている。この措置は経済的な合理性に乏しく、効果も一時的なものにとどまる上、借り入れコスト上昇の背景にある財政支出への懸念に対処していないと批判の声が上がっている。

TDセキュリティーズのマクロストラテジスト、プラシャント・ニューナハ氏は「ベッセント氏はメンターの言葉に耳を傾けるべきだ」とし、「ドラッケンミラー氏は核心を突いている。簡単な解決策はないと言っているのだ」と話した。

ドラッケンミラー氏は以前、ベッセント氏の政界転身を評価し、かつての同僚が政治の世界を巧みに立ち回っていることに感心したと述べていた。ベッセント氏は自身のヘッジファンドを運用していた当時、ドラッケンミラー氏と毎日話をしていた。両氏はジョージ・ソロス氏の下で金融市場での経験を積んだ。ソロス氏自身も金融市場に大きな影響力を持ち、時には政府や中央銀行と対立した経緯がある。


市場介入はなぜ失敗したのか ベッセント氏を叱った「恩師」

2026年8月27日  日経

著名投資家のスタンレー・ドラッケンミラー氏が米紙ウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿で旧知のベッセント米財務長官を痛烈に批判したことが、ウォール街で話題になっている。米財務省は国債買い入れ消却(バイバック)の上限を倍増させたが、効果はわずか1日で霧散した。ドラッケンミラー氏は「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に反した価格維持策は必ず敗北する」と戒めた。

ドラッケンミラー氏は、ベッセント氏がヘッジファンドでトレーダーとしてキャリアを積んでいた頃の指導役(メンター)だった。今でもベッセント氏の師であり、良き友人であると見られているため、歯に衣(きぬ)着せぬ批判は「サプライズ」として市場参加者に受け止められた。

人工知能(AI)を利用して書き上げたというドラッケンミラー氏の寄稿の論旨は明快だ。米国の長期金利は世界で最も重要な指標で「米国に残された唯一の財政規律」にほかならない。債券市場が金利上昇という形でようやく声を上げ始めたというのに、政府が介入して封じようとすることは問題が大きいというわけだ。

米国の政府債務は40兆ドル(約6400兆円)を突破した。長期金利の上昇による利払い費の増加という目に見える形で影響が出なければ、政治は財政の問題を直視しようとはしない。市場に介入してわずかに金利を引き下げられたとしても、問題先送りによる代償ははるかに大きくなるというのが、ドラッケンミラー氏の主張だ。

政府や中央銀行による市場への介入が必要な場合もある。市場への資金供給量を調整したり、流動性の乏しくなった既発債を引き取ったりするための国債買い入れであれば、批判はしにくい。ドラッケンミラー氏がかみついたのも、米財務省の打ち出した措置が「流動性管理ではなく価格管理」と映ったためだ。

さらに、ドラッケンミラー氏の言葉を裏返せば、ファンダメンタルズに反しない介入であれば必ずしも否定されるべきではないともいえる。市場が決める価格は最終的には妥当な水準に落ち着くとしても、一時的に行き過ぎることは起こりうる。「落ちるナイフ」をつかむ役目は通常、政府や中央銀行が担うことになる。

ファンダメンタルズに沿っているとみられる価格変動を止めるのは至難の業だ。

日銀はデフレ期に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を導入し、長期金利をゼロ近辺に抑え込むことに成功した。ところが、経済が活性化し物価が上がり始めると金利を抑制しきれなくなった。

現在の米国や日本のように財政悪化とインフレを放置すれば、市場は当然高い金利を要求する。ドラッケンミラー氏の言葉を借りれば「30年債が5.5%で取引されるなら、それは危機ではなく請求書」ということになる。

そうした状況で政府や中央銀行に求められるのは、価格を操作することではなく、ファンダメンタルズを改善させることだろう。27日から世界の中銀関係者が集まるジャクソンホール会議が始まる。28日に予定される米連邦準備理事会(FRB)のウォーシュ議長の講演で注目されるのは、そのための一歩を当局が踏み出せるかどうかだ。