退職時の1億円に対する考察

◎今日のテーマ:退職時の1億円

1億円が拡大縮小の分水嶺?

インターネット上に、弁護士、医師、飛行機パイロットの収入と、引退時の金融資産についてのグラフがありました。それによると、弁護士と医師の金融資産は1億円に達しておらず、引退後は少しずつ資産が減っていくのですが、パイロットの資産は1億円あるので、逆に増えていくというグラフでした。これはどういう意味でしょうか。

資産の半分を株式投資に向ける前提?

グラフは、一定の前提に基づいた資産によって作られます。例えば、1億円のうち、半分の5千万円を世界の株式ETF(例えばVT)に投資すると、期待リターンを6%とすることができます。金融資産1億円に対するリターンは、その半分になりますから、3%ということになります。1億円に対しての3%は、300万円です。

余った分を再投資

国民年金、小規模企業共済等の公的年金受給額を300万円とすると、合計で600万円になります。夫婦二人で年間600万円の予算は、年間3~4回海外旅行に行ったとしても、100万円は余るのではないでしょうか。その100万円が毎年、再投資されれば、毎年少しずつ増えていくという計算結果になります。

株式の割合をもっと増やしては?

しかし、この前提は、私にとっては、理解できない面があります。結論を言うと、株式に投資する金額は、半分の5000万円ではなくて、例えば8000万円でもよいのではないかということです。

① 公的年金とのバランス

国民年金、小規模企業共済等の公的年金は、インフレによって変動しますが、基本的に債券と同じように、確定額に近い性質の年金です。その収入が、20年間で、20年✖300万円=6000万円確保できているのですから、それに加えて、更に5000万円を債券などで運用する必要はないと思います。

② インフレへの対応策

現在、日本政府と日本銀行は2%のインフレを実現しようと躍起になっています。私はいずれ2%、あるいはそれ以上のインフレになると思っています。その時、債券で運用する方法が良いのか、株式のETFやインデックスファンドで運用する方が良いのかは、慎重に考えるべき問題だと思います。日本は、最近の四半世紀でインフレが起きなかったため、どう対応すべきかを考える癖がついていないように思えます。私は、日本と外国の株式に連動するETFの方が資産運用対象として、より安全ではないかと思います。

③ 積立投信が株式インデックスファンドだった人が急に債権に移行できるか

ジェレミー・シーゲルのグラフや、ウォーレンバフェットの遺言を念頭に置くと、長期の資産運用としては、株式のETFやインデックスファンドがベストと言えます。その場合、長年、ETFやインデックスファンドで積み立ててきた人が、自分の資産を急に債権や銀行預金に移すことができるのでしょうか。そのまま株式のETFとインデックスファンドに置いておくのではないでしょうか。

私は9割以上がETF

私自身は、確定給付年金(DB)と財形年金以外は、ほとんどすべて、内外の株式のETFで運用しています。その割合は、金融資産全体の9割以上です。ウォーレンバフェットの遺言(相続財産の9割をS&P500のインデックスファンドで運用しなさい。)に近い形です。